イギリスを代表とするスポーツカーブランドのひとつ、ローバー。今や昔の面影はありませんが、ブランド自体は中国の上海汽車が所有し、MG車を中国で生産しながら再起を図っていると聞きます。そのMGがまだイギリスメーカーだった頃、やはり再起を図った期待の新モデルとして1995年に発売されたのがミッドシップ ライトウェイトオープンスポーツのMGFでした。

 

MGF / Photo by Ripton Scott

 

瀕死のローバー起死回生のMG復興策、新型スポーツ『MGF』

 

右/マツダ MX-5ミアータ(ユーノス ロードスター)が世界にライトウェイト・オープンスポーツ復活という旋風を巻き起こした。左/そんな中でMG Fは生まれた。 / Photo by peterolthof

 

かつて多くのスポーツカーを輩出し、日本を含む世界中に影響を与えたイギリスのスポーツカーブランド、『MG』。

元は同地の大衆車メーカー、モーリスの創業者ナッフィールド卿モーリス氏が個人的に所有していた企業の1つで、モーリス ガレージを略した『MG』をブランド名にしたと言われています。

同社は戦後もMGAやMGB、ミジェットといった近代的なライトウェイト オープンスポーツを販売してきましたが、傑作MGBの生産ラインを1980年に閉じて以降は1982年からコンパクトカーのメトロなどをMGブランドで販売します。

第2次世界大戦後に疲弊しきって英国病とまで言われたイギリス経済の混乱に巻き込まれ、ブランドを所有する会社も合従連合で二転三転。

ブランド所有企業がローバーとして落ち着き、提携相手のホンダによる買収間近と伝えられた頃にMGFの開発は始まりました。

しかし1994年にはローバーが突然BMWに買収され、その状態で1995年にMGFを発売するも、火の車と言ってよい経営状態のローバーにはBMWも打つ手は無く、ミニなど欲しいブランドを残して2000年には再びBMWの手を離れるなど大混乱のど真ん中にありました。

これは当時のイギリス製自動車に共通する事ですが、「よくぞそんな中で生産やサポートの続行を」と思わされる状況だったのです。

 

メーカーは大混乱でもライトウェイトスポーツ復古の波に乗る

 

イギリスのスポーツカーらしく、MG Fには何となくハッキリしない曇り空がよく似合う。/ Photo by Geert Orye

 

MGFのメーカーであるローバーの阿鼻叫喚ぶりをよそに、発売されたMGFは『久々に発売されたMGらしい車』として好評を得ました。

当時は1989年に発売されたマツダ ユーノス ロードスターによって『ライトウェイト・オープンスポーツカー復古の時代』を迎えており、ロードスターの成功を見た各社が似たようなスポーツカーを続々と開発していた頃です。

もちろんローバーでも本当はFRスポーツを作りたいところだったはずで、実際MG Bのリファイン版MG RV8を1993年に作ったものの本腰で新規開発となると手に余り、既存のFFコンパクトカーの設計を流用したミッドシップスポーツという大衆車メーカー的な結論に達しました。

しかし、それが結果的に『エンジンは平凡なものの軽量コンパクトで俊敏なミッドシップスポーツ』と極めて好意的な評価に繋がります。

単にパワー不足のミッドシップスポーツならこのような評価を得るはずも無く、ローバー100シリーズ譲りのハイドラガス サスペンションのセッティングなど、衰えたりとはいえさすが名門MG(のブランドを擁するローバー)と通を唸らせたようです。

しかも不足していたエンジンパワーも可変バルブ機構を組み込むなど改良され、初期には120馬力程度だったのがマイナーチェンジ後のMGF Mk.2では最大160馬力に達するなど、遅れて登場したロータス エリーゼのようなポジションを得る事も不可能ではありませんでした。

実際、BMW傘下からイギリス資本へと『帰還』したMGローバーはMGFをモデルチェンジしてMG TFと改名。

同社が結局経営破綻して中国資本となった後も、改良は続けられました。

 

MGFカップなどワンメイクレースも開催

 

スポーツカーらしく『MG F CUP』などワンメイクレースが日本でも開催されていた、MG F / Photo by Peter Bonnett

 

BMW傘下時代のローバーはイメージアップや拡販にも熱心だったようで、1997年頃からイギリス、日本、フランス、オーストラリアでMGFのワンメイクレース『MGF CUP』を開催します。

しかもローバージャパンは、専用のカップカーを仕立ててフェラーリチャレンジ(フェラーリF355などのワンメイクレース)の前座で開催するなど華やかだったそうです。

 

主なスペックと中古車相場

 

MGF / Photo by grassrootsgroundswell

 

MG MGF 1.8i 1995年式

全長×全幅×全高(mm):3,915×1,640×1,260

ホイールベース(mm):2,375

車両重量(kg):1,090

エンジン仕様・型式:18K 水冷直列4気筒DOHC16バルブ

総排気量(cc):1,795

最高出力:88kw(120ps)/5,500rpm

最大トルク:165N・m(16.8kgm)/3,000rpm

トランスミッション:5MT

駆動方式:MR

中古車相場:19.8万~105万円

 

まとめ

 

MGF / Photo by Chris Sampson

 

1995年にMGFが発売された当時、バブル景気の余波で輸入車への注目度は高まっており、かつてのMGの業績を後世に伝えるMGBやミジェットなどは『マニア向け輸入スポーツの登竜門』的な存在として、街を走っている姿も結構見られた時代でした。

当然、「あのMGが新型スポーツを発売!しかもミッドシップ!」と期待をこめて伝えられ、いよいよこれからはMGも元気になり、ブリティッシュスポーツ新時代が来ると信じた若き自動車ファンもいたはずです。

しかし現実はそう甘くは無く、当時のローバーグループは後に切り刻まれてアチコチの資本へと四散してしまうのですが、MGFはそうなる直前のローバーが見た最後の夢のひとつだったのかもしれません。

日本では2005年のMGローバー経営破綻と共にオートトレーディングルフトジャパンが輸入販売業務を終了して以来、正規インポーターが存在しないため馴染みが無くなってしまいましたが、上海汽車の『MG』は、今も新型車を販売し続けているようです。

 

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