今やダイハツ ミライースのOEMとしてプレオプラスにその名を残すのみですが、かつてスバル プレオといえばヴィヴィオ後継としてスバル軽乗用車販売の主力モデルでした。本来は、複数車種を作り分ける余裕の無いスバルでR2の登場とともに消えゆくはずでしたが、結局無くせぬ売れ筋の軽トールワゴンということで、ステラ発売後まで販売が継続されています。
軽トールワゴンと軽セダンの中間的モデルだった初代プレオ
1998年10月、軽自動車が新規格に移行するにあたって軽自動車メーカー各社は一斉に既存モデルのモデルチェンジに走りますが、特に軽乗用車において各社の対応は分かれました。
なぜなら、1993年に登場した軽自動車界の革命児、スズキ ワゴンRのような軽トールワゴンが今後の販売の主力になる一方、かつてブームになった軽ボンネットバンや昔ながらのベーシックな軽セダンにも根強い需要があったからです。
もちろんどちらも生産する余力のあるメーカーは並行生産しつつ、さらに派生車を繰り出す勢いであり、それがスズキ、ダイハツ、三菱の3社。
旧規格末期に初代ライフで軽トールワゴンに参入、トゥデイよりよほど売れるので早々に見切りをつけて軽トールワゴンに絞ったホンダ。
さらに、この機会にボディの独自生産も取りやめスズキからのOEM販売一本に切り替えたマツダのようなケースもありました。
ここで、マツダほど急激な変化は必要無かったもののホンダほどは割り切らず、さりとて上位メーカーのようにヴィヴィオ後継の軽セダン / ボンネットバンと新型の軽トールワゴンを並行生産する余力も無かったのがスバルです。
その結果、基本的にはヴィヴィオ後継ながら、ルーフを高くして軽トールワゴン的なヘッドスペースを作ったのが初代プレオでした。
基本的には旧規格軽自動車の傑作モデルであり、剛性などに余裕のある贅沢な設計だったヴィヴィオのプラットフォームを流用して、軽トールワゴン化したのが初代プレオです。
そして、上級グレードではハイオク仕様のDOHCスーパーチャージャー版もあったEN07系エンジンや、4輪ストラット式独立懸架サスペンションといった部分も基本的にはそのままですが、SOHCスーパーチャージャーの過給圧を抑えたマイルドチャージ版を追加。
ミッションは電磁パウダー式オートクラッチ機構で耐久性やフィーリングに難のあったECVTから、トルクコンバーターと組み合わせてスムーズかつ欠点をクリアしたi-CVTに変更され、上級グレードには7速マニュアルモードを設定。
軽トールワゴンとしては着座位置が低く、それゆえあまりルーフ高を稼がなくてもヘッドスペースは確保できましたが、ドライバー視点の低さで軽トールワゴンと実感しにくいあたりは初代ダイハツ ムーヴや三菱 ミニカ・トッポが歩んできた少し古いコンセプト。
どうせならば後の三菱 eKワゴンのように車高を1,550mm以内におさえた軽セミトールワゴン仕様とすれば、機械式タワーパーキングが使えるというメリットが出せたのですが実際は1,575mmあり、その仕様が追加されたのはだいぶ後(2002年1月)でした。
このように、コンセプトやパッケージングに若干難があったとはいえ、走りの方は並の軽トールワゴンより上質な面もあり、同クラス車の中では唯一、オフロード競技の全日本ダートトライアル選手権への出場記録を持っています。
豊富なバリエーションは初代プレオの魅力
先代にあたるヴィヴィオに存在した『ヴィヴィオ・ビストロ』、『ヴィヴィオ・ビストロシフォン』といったレトロ調モデルが人気を博し、一時のレトロ軽自動車ブームを作っただけに、後継の初代プレオにもさまざまなバリエーションが存在しました。
例えば初期モデルは、基本ボディにオプションのアクセサリーパーツを装着して個性を出せるようになっており、『エアロ』『フィールド』『カジュアル』『エレガント』と4つのバージョンを設定。
いずれもちょっと雰囲気が変わる程度でしたが、目立つのは『カジュアル』で、現代的に言うと最低地上高は変えず内外装アクセサリーのみで雰囲気を変えたクロスオーバー風といったスタイルです。
ちなみに、当時既に2018年9月現在も人気の高いクロスオーバーSUVは登場していましたが、『SUV』という言葉はまだ浸透しておらず、クロスカントリー4WD車も含めた『RV(レクリエーショナル・ビークル)』と呼ばれており、カタログでもRV感覚を狙ったバージョンと説明されています。
また、同じ丸目4灯ヘッドライトの新規格軽自動車でも、メルセデス ベンツEクラス風のダイハツ オプティ(2代目)とは異なり、同時期に発売されたイギリスの高級サルーン、ジャガーSタイプの軽トールワゴン版にも見えるのが1999年6月発売のプレオ ネスタで、ヨーロッパ調プレオということで、いわばヴィヴィオ ビストロの後継車です。
さらに、1997年の東京モーターショーで発表後、惜しまれつつ市販されなかったスバル360リメイク的な軽ハイブリッドカー『エルテン』を、プレオベースで仕立て直した『エルテンカスタム』というコンセプトカーを1999年の東京モーターショーで発表。
それがさらに市販車向けにカスタマイズを受け、2001年12月に発売されたのがプレオ ニコットでした。
主なスペックと中古車相場
スバル RA2 プレオRS 1999年式
全長×全幅×全高(mm):3,395×1,475×1,575
ホイールベース(mm):2,310
車両重量(kg):910
エンジン仕様・型式:EN07 水冷直列4気筒DOHC16バルブ ICスーパーチャージャー
総排気量(cc):658
最高出力:47kw(64ps)/6,000rpm
最大トルク:99N・m(10.1kgm)/3,200rpm
トランスミッション:CVT
駆動方式:4WD
中古車相場:0.1万~79.8万円(ネスタ、ニコット、商用モデル含む)
まとめ
さまざまなデザインやエンジンなど豊富なバリエーションを持つ初代プレオですが、後継のR2は軽セダン、R1は軽スペシャリティクーペだったこともあり、スバル唯一の軽トールワゴンとしての需要は衰えず、10年以上生産されるロングライフモデルとなります。
また、乗用版はステラの登場で2007年に生産を終了しましたが、商用登録(4ナンバー)のバンモデルはスバル最後の2BOX商用車として2010年4月まで販売されました。
しかしその頃、既にスバルは軽自動車の独自生産から撤退を表明しており、同じトヨタ系のダイハツから軽自動車の供給を受けることとなり、ベーシックな軽セダンおよび軽ボンネットバンが復活。
2代目『プレオ』と名付けられます。
その2代目プレオもOEM元のダイハツ ミラが生産終了したのに伴い2018年3月で販売終了。
現在はエコカーの派生車ミライースのOEM供給を受けた『プレオプラス』(現行は2代目)にその名を残すのみとなりました。
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