現在では2代続けてダイハツ ムーヴのOEM供給を受けて販売しているスバルの軽トールワゴン『ステラ』ですが、初代はスバル軽自動車ファンにとっては待ちに待ってようやく得られた『真のワゴンRフォロワー』でした。そしてようやく多くのユーザーの心をガッチリつかむ事に成功した初代ステラでしたが時既に遅く、スバルが最後に発売したオリジナル軽自動車として、惜しまれつつ2011年を最後に生産を終えています。
スバル軽自動車ファンが待ち望んだ軽トールワゴン、初代ステラ
2012年で独自の軽自動車生産を終了し、生産していた群馬製作所はスバル BRZ / トヨタ 86などの登録車生産工場にリニューアルして軽自動車生産史に幕を閉じたスバルですが、1958年に革命的なスバル360を発売するなど、本格軽自動車のパイオニア的存在でした。
その歴史はスバル自体が(自動車産業としては)トヨタのような大企業では無かった事から、常に生産設備など諸問題との戦いであり、その中でも時代ごとに評価される車づくりを続けてきたことが、根強いファンを生んできたとも言えます。
ただし、軽自動車に限らず時代の波による変革への対応で常に苦労するメーカーで、かつて2代目レックスでFF化に成功した事すら今思えば奇跡的。
1993年にスズキが初代ワゴンRの大ヒットで軽自動車に『軽トールワゴン』という革命を起こした時も、対応が後手に回ったのは致し方無いところです。
それでも1998年に軽自動車が新規格へ移行したタイミングでヴィヴィオをベースに初の軽トールワゴン『プレオ』(初代)を発売した時には最後発ながら高い評価を得ますが、軽自動車がより広いスペースか使い勝手を求めるようになると、次第に評価が厳しくなります。
そこで起死回生!逆張りでスタイル重視の軽セダンR2、軽スペシャリティR1を発売しますが、意欲とは裏腹に市場の反応は厳しく、ついに全てのプライドをかなぐり捨てて急遽開発。
2006年6月に発売された『完璧なスバル版ワゴンRフォロワー』が初代ステラでした。
しかしこれが大当たりで「スバルがワゴンRやムーヴみたいな車を出してくれればすぐ買うのに!」と考えていたユーザーのツボにハマり、最盛期(2007年3月)には8,789台を販売したのです。
スバル最後のオリジナル軽乗用車として貫かれたもの
初代ステラは全高1,645mmで、当時としても真っ当な軽トールワゴン。
先代にあたるプレオが軽トールワゴンとはいえヴィヴィオベースで座面が低く、アイポイントの高さ不足や背が高いユーザーの乗降性にやや難があると指摘されていた点も問題無くなっており、ライバルが新規格移行時に改善したポイントを遅ればせながら抑えています。
基本的には販売面で危機的状況にあったR2をベースに急きょ軽トールワゴンボディを載せた車なので、内装がR2流用で外装も新味にかけるといった面はありましたが、少なくとも『奇抜』ではなく誰にでも受け入れやすいデザインだったのも幸いでした。
もちろんリアサスペンションをスペース効率に優れるトーションビーム化する余裕など無く、荷室にはリアサスペンションのアッパー部張り出しがありましたが、リアシートはちゃんとスライドし、何よりファンは走りの良さの方を喜んだのです。
そう、スバル軽自動車ファンが求めていたのは『ワゴンRやムーヴの形をしつつスバル軽自動車の走りを持った車』だったわけで、実際メディアのサーキットテストや模擬レースではその走りの良さをいかん無く発揮。
そしてスバル軽自動車特有のスーパーチャージャー、NA(自然吸気)ともにDOHC16バルブ版のみ搭載されたEN07エンジンはロングストロークで低回転からトルクフル、かつ燃費も存外良好でした。
バリエーションはエンジンと駆動方式(FFと4WD)以外にデザインは通常版とヘッドライトやメッキグリル、フォグランプ内蔵バンパーなど主にフロンマスクが異なる『ステラカスタム』を設定したところもライバルに追随。
後にカスタムのフロントメッキグリルを大型化した『リベスタ』も設定されるなど、今度こそ時流に乗りました。
そして2009年6月にはEV版のプラグインステラ(プラグインハイブリッドでは無く、純粋な電気自動車)も発表されましたが、それに先立つ2008年4月、スバルは既に『軽自動車の自社生産から撤退』を発表していたのです。
そのため、ついにステラは『スバルが最後に開発・販売した軽自動車』となってしまいましたが、最後の最後に初代ステラでスマッシュヒットを放てたため、「まだやれるのではないか。」と、スバルは引退することを惜しまれつつ、2011年5月に軽自動車市場から去って行きました。
ちなみに、後継はダイハツからムーヴのOEM供給を受ける事となり、2018年9月現在も販売中です。
主なスペックと中古車相場
スバル RN2 ステラ カスタムRS 2006年式
全長×全幅×全高(mm):3,395×1,475×1,645
ホイールベース(mm):2,360
車両重量(kg):930
エンジン仕様・型式:EN07 水冷直列4気筒DOHC16バルブ ICスーパーチャージャー
総排気量(cc):658
最高出力:47kw(64ps)/6,000rpm
最大トルク:93N・m(9.5kgm)/4,000rpm
トランスミッション:CVT
駆動方式:4WD
中古車相場:0.8万~90万円
まとめ
もしスバルが初代ステラ以降も軽自動車を継続していたら?むしろ今からでもいいから復活してくれないか?という話題は、スバリストに留まらずスバル軽自動車ファンならば一度は議論に加わったことがあるかもしれません。
かくいう筆者も2代目レックス4WDこそハッチバック軽自動車で最高のコーナリングだったという思い出があり、特定メーカーファンとしての壁を超えた想いがスバルの軽自動車にはあります。
ただ、スバルという自動車メーカーはある意味日本でもっとも不器用な自動車メーカーであり、熱烈なファンを生む一方で常にそのあり方に苦しみ、生き残るために悩んできたメーカーでもあります。
そのスバルが「ウチの規模では軽自動車と登録車の両方を作り続けられないし、主要市場(北米)を考えれば、これ以上乏しい経営資源を軽自動車に回せない。」と判断したのであれば、その最後を惜しみつつ見送るしか道はありません。
せめて最後の最後に生まれたステラが、「いかにもスバルらしい軽自動車だった。」ことを慰めとして、初代ステラの紹介を終えたいと思います。
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