通常、自動車のドアとは引っ張って手前に開けるヒンジドアか、横にスライドさせるスライドドアのいずれか。しかし車種によっては乗降性の確保、あるいは単にデザインとして上に開くタイプのドアを持つ車も存在します。国産車ではあまり見かけませんが、数少ないケースを集めてみました。

 

残念ながら試作1台のみで市販に至らなかったロータリースーパーカー・マツダ RX-500もバタフライドア / 出典:https://www.allcarindex.com/auto-car-model/Japan-Mazda-RX-500/

トヨタ空前絶後のイメージアピールカー、バタフライドアのセラ

 

トヨタ セラ  / Photo by Akinori YAMADA

 

まずは『あのトヨタが唯一、玉砕覚悟で発売した斜め上的発想の実験作』との呼び声も高い、トヨタ セラ(1990年3月発売)をご紹介。

“斜め上的発想”というのは、ガラスエリアが広いために外からの視線と紫外線がやたらと気になるキャビンもそうですが、何といっても斜め上へ向かって開くバタフライドアにつきます。

1.5リッターの3ドアハッチバッククーペな事からサイノス(1991年初代発売)の先行発売派生車のように思われる事もありますが、実際は3代目P70系以降FF化されたスターレット用プラットフォームをベースに、実用性より企業イメージのアピールをメインに販売された車。

カテゴリー的にはセクレタリーカー(通勤用パーソナルクーペ)でスポーツカー的な性能は持ち合わせておらず、あくまで日常へ非日常を持ち込んだ類でした。

 

世界唯一の軽スーパーカー、ガルウイングドアのオートザム AZ-1 / スズキ キャラ

 

オートザム AZ-1 / Photo by peterolthof

 

2台目は国産唯一の純正バタフライドアなセラと対をなす、国産唯一の純正ガルウイングドアを持つ(マツダ)オートザム AZ-1と、OEM版のスズキ キャラです。

非常に分厚いサイドシルを持つバスタブ状プラットフォームに、これまた極端にルーフが低いボディを被せたため、乗降性を確保しようとすればルーフから大きく開くガルウイングドアやバタフライドアが必須で、前上方に開くカウンタックのようなシザーズドアではこうはいきません。

それゆえ素晴らしく低いボディを乗降性を確保したまま実現するという、スーパーカーと同様のメリットを軽自動車で実現しています。

その一方でエンジン配置の関係(ミッドシップというもののほぼリアエンジンでかなりのテールヘビー)による不安定さや、案外高い重心による転倒しやすいデメリットは軽自動車のサイズ上どうしても強く現れてしまいました。

しかも転倒してルーフを下に停止した場合、キャビンの小さいガルウイングドア車ゆえ車内からの自力脱出は困難を極め、高性能な反面、任意保険の保険料率が非常に高い車としても有名です。

 

石原軍団の劇中車その1、三菱 スタリオン・ガルウイング

三菱 スタリオン・ガルウイング / 出典:https://staryjaponiec.blogspot.com/2011/05/22-mitsubishi-gullwing-starion-eclipse.html

 

1980年代の三菱のフラッグシップクーペだったスタリオンに、石原軍団の刑事ドラマ『ゴリラ』劇中車として登場したのがスタリオン ガルウイングでした。

ブリスターフェンダーを持つ2600GSR-VRをベースとしており、後に5台限定で抽選販売されています。

 

石原軍団の劇中車その2、三菱 エクリプス・ガルウイング

三菱 エクリプス・ガルウイング / 出典:http://dmctalk.org/showthread.php?8683-Gullwing-conversion-Mitsubishi-Eclipse

 

スタリオン同様、『ゴリラ』劇中車として登場し、石原プロ用劇中車に2台、一般として10台が販売されたと言われているのがエクリプス ガルウイングです。

当時のカタログによれば、初代エクリプスの2WD(FF)『GS』グレードの5MT/4AT車および4WDターボ『GSR-4』グレードの5MT車が存在したようですが、どれがどのくらい製造されたかは定かではありません。

なお、いずれもガルウイングは電動開閉式でバッテリー上がり時の開閉が心配になりますが、少なくともスタリオンの方は手動でも開閉できたようです。

 

実装実験で乗った人、使い勝手はどうでした?日産 ニューモビリティコンセプト

 

日産 ニューモビリティコンセプト / 出典:https://www.nissan-global.com/JP/ZEROEMISSION/APPROACH/NEWMOBILITYCONCEPT/

 

日本では『超小型モビリティ』の実証実験用に特例で軽自動車登録された車両が走っているくらいですが、海外ではEVクワドリシクル(日本の軽自動車に相当)の『ルノー トゥィジー』として既に市販実績もあるのが、日産ニューモビリティコンセプト。

ランボルギーニ カウンタックなどと同じく前上方に開く『シザードア』を採用した、唯一の国産量販車です。

狭い場所へ駐車しても乗降性を確保するためにシザードアを採用したのはなかなか良いアイデアで、これがどれだけ幅の狭い車でもヒンジドアでは駐車スペースがそれなりに広くなければ乗り降りし辛く、スライドドアでは重くなってしまいます。

超小型モビリティはトヨタのi-ROADやコムス、ホンダのMC-βともども国土交通省の提唱する『超小型車』規格策定のため実証実験が繰り返されており、駐車場問題(車が何であれ4輪車の月極駐車場代は変わらない)から現状での規格策定や普及は難しいものの、いずれカーシェア用専用車として日本でも実用化されるかもしれません。

 

まとめ

今回は量販車2台、劇中車の限定市販車2台、日本国内では新たな交通インフラの提案として実証実験中なものの、海外では既に量販実績のある1台を紹介しました。

ほかにもレーシングカーの日産 R380や1台のみロードカーが作られたR390GT1、少数試作で市販されなかったジオット キャピスタや童夢 零、コンセプトカー止まりだったマツダ RX-500など、市販されなかったものも含めれば数多く存在します。

そこまで紹介し出すとキリがないので今回は仮にも市販されて公道を走っているもので止めていますが、量販された3台はバタフライドア(セラ)、ガルウイングドア(AZ-1 / キャラ)、シザードア(日産ニューモビリティコンセプト / ルノー トゥイジー)全て別方式なのが面白いところです。

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