ホンダのVTECやトヨタのVVTといった可変バルブタイミングは、現在ほとんどの車に採用され、エンジンの高出力化と低燃費に貢献しています。今では定番となった可変バルブタイミングですが、具体的にどんなものなのでしょうか。詳しく解説していきます。
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多くのメーカーで搭載される可変バルブタイミング
今や、可変バルブタイミング機構は、大半のクルマに搭載されているエンジンに採用されているといっても過言ではありません。
可変バルブタイミング機構といえば、ホンダの『VTEC』やトヨタの『VVT』などのイメージが強いのですが、日産の『NVCS』、マツダの『S-VT』、海外メーカーではアウディの『AVS』、BMWの『VANOS』、ポルシェの『バリオカム』など、これらはすべて可変バルブタイミング機構の呼び名であり、各メーカーによって呼び方が異なります。
このように、可変バルブタイミングは世界中のメーカーで開発され、また国産メーカーのクルマでは、ほぼすべてのモデルが可変バルブタイミングを搭載しているのです。
バルブタイミングとは
可変バルブタイミングの説明をする前に、バルブタイミングについて説明しましょう。
バルブタイミングとは、エンジン燃焼室内の吸気バルブと排気バルブの開閉するタイミングのことを指します。
吸気から排気まで、吸排気バルブの開閉タイミング
現代の自動車に搭載されるエンジンの多くは、ひとつの燃焼室に吸気バルブが2個、排気バルブが2個が搭載されており、4ストロークエンジンの吸気→圧縮→爆発→排気の過程で規則的にバルブが開閉します。
吸気:吸気バルブ『開』、排気バルブ『閉』
↓
圧縮:吸気バルブ『閉』、排気バルブ『閉』
↓
爆発:吸気バルブ『閉』、排気バルブ『閉』
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排気:吸気バルブ『閉』、排気バルブ『開』
また、吸排気バルブの開閉は、カムシャフトと呼ばれる部品にあるカムによって行われます。
カム/カムシャフト/カムプロフィールとは
三角形の角が丸みを帯びたおにぎりのような形をした部品をカムと呼び、いくつものカムを連結させた棒状のパーツがカムシャフトと呼ばれるものです。
また、カムには突起した山の部分が形成されており、山の形状のことをカムプロフィールと呼びます。
カムシャフトはエンジンクランクシャフトの回転と連動して回転し、吸気・圧縮・爆破・排気の4工程でカムシャフトは1回転。
カムの山の部分がバルブに接したときにバルブが押され、吸気口または排気口の開閉を順序よく行うのです。
低回転時と高回転時で理想のバルブタイミングが異なる
エンジンが低回転域のとき、吸気バルブが開いている時間が短くなり、空気の流れが遅くなることで圧縮過程で空気が押し戻されます。
また、エンジンが高回転域の時には吸気バルブの開いている時間が長くなり、シリンダーへ空気が早く流れ込みます。
このように、低回転域と高回転域で空気が流れる早さがそれぞれ異なり、その分シリンダー内に入る空気の量が変化するため、その最適な開閉タイミングが異なるのです。
理想のバルブ開閉タイミングは、低回転域のような低負荷時は遅めに開いて早く閉じ、高回転域のような高負荷時は早めに開いて遅めに閉じるタイミングなのですが、この理想を実現するために生み出されたのが可変バルブタイミングです。
可変バルブタイミングとは
旧式のバルブタイミングが固定されたエンジンでは、運転状況に応じたバルブ開閉タイミングを調整することができず、常に何かしらの性能を犠牲にせざるを得ませんでした。
しかし、エンジンの吸排気のために開閉するバルブタイミングを運転状況に応じて最適化された可変バルブタイミングは、出力・排気ガス・燃費の性能を向上させる機構となっています。
ホンダVTECの特徴
ホンダVTECでは、カムシャフトに低回転用と高回転用のふたつのカムの両方を備え、任意の回転数を境に油圧ピンで使用するカムを切り替えます。
そうする事で、カムが低回転と高回転でそれぞれに最適なカムプロフィールになるため、低回転での燃費の良さと高回転域でハイパワーにすることを可能にしました。
そんなVTECは1989年にデビューした2代目DA型インテグラから採用され、2000年にはエンジンの回転や負荷に応じて、カム位相を連続的にコントロールする連続可変バルブタイミングコントロール機構(VTC)を加えたi-VTECが誕生しています。
トヨタVVTの特徴
トヨタの可変バルブタイミング機構『VVT(Variable Valve Timing)』は、1991年のカローラシリーズのスポーツグレードに搭載された4A-GE型エンジンに搭載され、1995年には機械式から電子制御式油圧装置を搭載した『VVT-i(Variable Valve Timing-Intelligent)』が登場。
10代目クラウンに搭載された2JZ-GE型エンジンに採用されました。
そんなVVT-iはVTECのようにカムのリフト量を増やしませんが、油圧でプーリーを進めたり、遅れさせたりとバルブタイミングを連続的に変更し、回転数に応じてバルブタイミングを変えていくシステムとなっています。
また、VVTとVVT-iでは吸気バルブ側のみのバルブタイミング制御でしたが、1998年に登場したトヨタ アルテッツァに搭載された3S-GE型エンジンでは『DUAL VVT-i』が採用され、これは吸気側のみだけでなく排気バルブ側も制御を行い、吸排気効率を向上させています。
さらに、現行モデルでは『VVT-iE(Variable Valve Timing-intelligent system by Electric motor)』と呼ばれる可変バルブタイミングになっており、それまで油圧で制御していたものを電動モーターで制御する仕組みとなりました。
まとめ
今回、ホンダ VTECとトヨタ VVTについて解説しましたが、他メーカーの可変バルブタイミングシステムも概要はほぼ同じで、あとは細かな仕様が異なるのみ。
可変バルブタイミングはパワー、燃費、環境面などを総合的に向上させ、ドライバビリティを引き上げたテクノロジーです。
これは、コンピュータによる緻密な制御が発達したために生まれた技術であり、これからも可変バルブタイミングの制御技術はさらに高性能化していくことでしょう。
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