近年、高齢ドライバーの交通事故をニュースでよく見かけますが、日本は少子高齢化が進んでいるため、高齢ドライバーが増加した分、事故が増えるのは必然かもしれません。そんな中、クルマの運転免許証を自主返納をする方が増えてきました。自主返納は運転資格を失うことになりますが、行政は自主返納をした際の特典を用意して、高齢ドライバーの運転免許自主返納を促しています。
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高齢者は運転免許の自主返納をすべきなのか
普段、いくら安全運転を心がけていたとしても、絶対に事故をしないということは保証はありません。
特に高齢ドライバーになれば、ブレーキとアクセルの踏み間違いや反射神経の低下、また筋力の低下などにより可動域が狭まり、ハンドルをうまく操れないなど、いくら安全運転を心がけたとしても年齢には勝てません。
そんな高齢ドライバーの事故のリスクから「自動車運転免許を自主返納しましょう!」という風潮が広まっています。
75歳以上の高齢ドライバー数は10年前の約2倍
75才以上の運転免許保有者は平成28年で513万人となっており、平成18年の258万人から10年で約2倍に増えています。
そんな75歳以上のドライバーによる交通事故件数は、10年間ほぼ横ばいですが、死亡事故件数のうち高齢ドライバーが加害者を占める割合は増加しています。
また、交通事故による死亡者数は全体では年々減少していますが、交通事故での高齢ドライバーが死亡する割合は平成18年で全体の44.3%だったが平成28年には54.8%まで増えています。
このことからも、高齢ドライバーの増加に伴う交通死亡事故を減らすための抜本的な改善策として、自動車免許の自主返納制度が頻繁に叫ばれるようになったのです。
実は高齢ドライバーの事故は20代より少ない
高齢ドライバーの事故が増えているとはいえ、原付以上の運転者10万人あたりの年齢層別交通事故件数でみれば、70代・80歳以上のドライバーより20代・30代・40代のほうが圧倒的に多数です。
交通事故発生件数の増減に注目すれば、たしかに70代・80代以上は横ばいまたは若干増加傾向にはあり、10万人当たりの件数でみれば全体的に事故件数は減少。
これは、クルマの安全性能が向上していることや、ドライバーの安全運転意識が高まっていることが予想されます。
それでも、75歳以上・80歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故は、全年齢層の約2倍にもおよび、10万人当たりの高齢者による死亡事故件数が減ってはいるものの、死亡事故発生件数全体は微増しているので、高齢ドライバーが死亡事故を起こしやすいというのは紛れもない事実です。
運転免許の自主返納するには
運転免許の自主返納制度の歴史は以外に古く、1988年4月に導入されました。
運転免許を自主返納する際に最もネックとなるのはもちろん、クルマの運転ができなくなる事ですが、身分証明書が無くなってしまうことを不安に思い、返納に踏み切れない方も多いのではないでしょうか。
しかし、返納後に免許証に代わる身分証明書として、『運転経歴証明書』の発行が可能になりました。
そんな自主返納の手続きは、管轄地域の警察署または運転免許センターで行われ、運転免許証を持っていけば行えます。
さらに運転経歴証明書を申請する場合は、住民票又は氏名、住所、生年月日が確認できる身分証明書と、印鑑、申請用写真、交付手数料1,100円が必要で、申請用写真については現地で撮影してくれることもあるため、事前に確認が必要です。
受け付けは平日がほとんどですが、地域によっては土日も受付をおこなっているので、直接電話で問い合わせるか最寄りの警察署ホームページで確認することをおすすめします。
また、交付にかかる時間は原則当日交付してくれますが、混雑時は2~3時間かかることもあるようです。
運転免許の自主返納で嬉しい特典
免許を自主返納したことで受けられる特典は、いくつかあります。
各都道府県によって内容は異なりますが、東京都であれば有名ホテルのレストラン利用料10%割引や、指定のクルマ買取店でクルマを売却の際に、5,000~10,000円の現金もしくは商品券がプレゼントされるなどさまざま。
大阪府では、多くの企業や地域商店街と協力し、お店での割引や粗品進呈を受けられるサービスを充実させており、タクシー利用時は、運賃を10%割引する嬉しい特典まで用意されています。
これらが功を奏し、65歳以上の自主返納率は大阪府が47都道府県でトップ!
これらの特典を受けるには、運転経歴証明書が必要なため、運転免許自主返納の際は運転経歴証明書の申請も同時に行うことは必須といえます。
地方都市では自主返納が必ずしも良いとは限らない
高齢ドライバーによる死亡事故のリスクが高いことや、自主返納による特典を受けられるとはいえ、高齢ドライバー全員が自主返納に前向きとは限りません。
逆に自主返納により移動ツールがなくなってしまうため、地方都市などでは不安に感じる高齢ドライバーが多いでしょう。
その対策として、東京都では満70歳以上の方に『東京都シルバーパス』という福祉乗車証を用意しており、市町村民税非課税者の場合は1,000円、課税者であれば20,510円(1年間有効)で取得可能。
路線バス・都営地下鉄を自由に乗り降りすることができます。
また、大阪府大阪市では70歳以上の市内在住者に『敬老優待乗車証』を用意。
地下鉄と路線バスが乗車1回につき50円で利用できるようになっています。
このように都市部であれば公共交通機関と高齢者向けサービスが充実しているため、クルマの運転ができなくても不便ではありません。
しかし地方都市は、電車の運行数も少なく、路線バスの台数も限られています。
かといって常にタクシーを使うと金銭的に大きな負担となるため、地方の高齢ドライバーにとってクルマを運転できなくなることはかなりの痛手です。
自主返納により死亡事故を無くしていくためには、運転免許を自主返納した高齢ドライバーの移動をサポートする取り組みを、さらに強化していくことが重要となるのです。
まとめ
国会では、安倍晋三首相が定年を70歳まで引き上げる『高年齢者雇用安定促進法』を2020年の通常国会で提出する見通しを発表し、高齢者が安心して働ける環境づくりの推進に努めようとしています。
また、実際にタクシードライバーの平均年齢は57.6歳であり、60代の転職先としてタクシードライバーは注目されており、70歳以上の現役タクシードライバーが多く働いているのが現実。
たしかに、身体の衰えを考慮して運転免許を自主返納することは、事故を減らすための最良の選択ですが、日々クルマを運転してきた方にとって、免許を返すというのは、相当な勇気と決心が必要です。
定年後もクルマの運転を継続する方は、高齢ドライバー教習などに参加したり、家族間で話し合い、自分ひとりで『自分は安全』と過信しないことが重要です。
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