故障や老朽化などで、いずれクルマはその役目を果たし、廃車への運命を辿ります。しかし、クルマは廃車された後、スクラップされるだけでなく輸出やリサイクルなど新たなところで活用されるのです!

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廃車後のクルマはどこへ?廃車済車両のさまざまな活用法

廃車になったクルマの行く末は様々。
スクラップになるかリサイクルされるか、なかには新たなオーナーの元で現役を続投する個体もあることでしょう。

自動車を購入する際にリサイクル料金が発生するため、廃車となったクルマはすべてリサイクルされるものと思われがちですが、実は廃車の手続きが一時抹消か永久抹消なのかで、クルマの行く末は変わってきます。

廃車といってもさまざま

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普通車の廃車手続きには、『一時抹消』と『永久抹消』があります。

日本に存在する公道走行可車両のほとんどは陸運局により管理されているため、廃車手続きをしなければ、毎年自動車税が発生します。

そのため、長期間クルマを使用しないがいずれは乗るという場合は、一時抹消の手続きをすれば、税金を支払うことなく保管が可能です。

永久抹消は、このクルマをこれから先は絶対使わないものとして廃車する場合に手続きするもので、永久抹消するクルマは事前に解体する必要があります。

なぜなら、処分するはずのクルマを永久抹消しても残っていれば、登録のないクルマを陸運局が管理できなくなるからです。

また、解体されたクルマはどうなるかというと、いくつもの部品がリビルトパーツとして販売されたり、資源としてリサイクルされます。

なお、軽自動車の場合は、一時抹消のことを『自動車検査証返納届』、永久抹消のことを『解体返納』と呼びます。

海外へ輸入!第二の国で大活躍する日本車たち

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日本で廃車されたクルマの行き先のひとつとして、海外への輸出があります。

クルマの寿命は、新車購入から10年または10万kmとよく言われますが、海外では年式の古いものや10万km以上走行したクルマでも、乗り続けるユーザーが非常に多く、第二の人生を送っている中古車がたくさん存在しています。

日本車が高品質なことや、日本国内の車検などで整備が十分行き届いていることなどから、日本の中古車は高年式の過走行車でも、海外では人気が高いのです。

また、海外へ輸出される国産中古車は、普通車だけだと思われがちですが、日本独自の規格である、軽自動車も海外へ輸出されています。

とはいえ普通車よりも輸出できる国は限られますが、それでも東南アジアやアフリカの発展途上国では、軽自動車も人気。

これら海外への輸出を目的としたクルマは、廃車買取業者が一時抹消登録ではなく、『輸出抹消仮登録』の手続きをおこなってから行わなければなりません。

年式が古い車や多走行車、事故車、故障車など、日本ではこれ以上使えないと判断されるクルマを専門の廃車買取業者に引き取って貰えば、無料で引き取ってもらえたり、もしくは買取りで引き取ってくれる場合もあります。

そのため、廃車にするクルマを業者に買い取ってもらいたい場合は、廃車手続きを行う前に問い合わせてみましょう。

廃車手続きを一貫して業者が無料で代行してくれることもあります。

解体されて様々な形にリサイクル

年間に日本国内で廃車されるクルマは、2016年で約465万台。

そのうち100万台ほどが海外へ輸出され、300台ほどが解体されています。

ちなみに廃車で解体されるクルマは、使用済み自動車という意味で、『ELV(End of Life Vehicle)』と呼ばれます。

まだまだ使える部品が多数!解体後は中古部品として再利用

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ELVからは、使える部品を中古パーツとして販売するために取り外されます。

そして、1台のクルマから約270点のパーツが再利用され、リサイクル部品販売店からリビルトパーツとし販売されるのです。

さらに、クルマに残ったガソリンやエンジンオイルやミッションオイル、デフオイルなどの廃油も専用業者に渡り、可燃性燃料として再利用されます。

エアコンやエアバッグなどを取り外す

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リサイクルできるパーツが取り除かれたELVは、再資源化基準に従って、バッテリー、タイヤ、エンジンの冷却水、室内照明の蛍光灯などを回収され、再利用・再資源化もしくは産業廃棄物として適正に処分されます。

エアバッグには、インフレータ(ガス発生器)が搭載されていて危険なため、引取基準に沿ったマニュアルに沿って取外しと指定引取場所への持ち込みが必要です。

また、エアコンも地球環境に悪影響を与えるフロンガスが充填されているため、専用機材でフロンを完全に抜いてから、エアコンを取り外します。

スクラップ&シュレッダーして再資源化

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解体業者によって解体されたELVは、プレス・せん断処理業者へ渡り、プレス機により圧縮されてコンパクトになります。

次にプレスされたものを業者がシュレッダーにより破砕し、鉄と非鉄金属、そしてASR(Automobile Shredder Residue|自動車シュレッダーダスト)へと選別。

鉄や鉄以外の金属の原料になったり、ASRはASR資源化工場でさら細かく破砕されて、金属及び燃料化されていくのです。

購入時に払ったリサイクル料金はどこで使われる?

出典:http://www.mlit.go.jp/jidosha/sesaku/environment/recycle/recycle/index02.html

廃車により解体されたクルマはさまざまな業者を渡り歩き、ほとんどが資源として再利用されます。

ちなみに、クルマを購入した際のリサイクル料金は、ASR、エアバッグ類、エアコンのフロン類の3リサイクルに必要な費用として運用されます。

リサイクル料金は原則新車購入時に支払い、引き換えにリサイクル券が発行される流れです。

このリサイクル券は、廃車引取業者へクルマを引渡す際に一緒に渡すもので、中古車買取店や廃車買取業者へ売却する際も、リサイクル券を一緒に渡さなければなりません。

また廃車予定のクルマが廃車買取業者により海外へ輸出された場合は、所定の手続きを行うことでリサイクル料金が返還されることもあります。

まとめ

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廃車されたクルマは、外国で新たなユーザーの手にわたったり、解体されるクルマはほとんどがリサイクルされます。

そんな自動車のリサイクルは、2005年1月に施行された『使用済自動車の再資源化等に関する法律』(通称:自動車リサイクル法)により本格始動し、今では再資源化率99%を達成。

日本のクルマのリサイクル技術は、世界でもトップクラスとなり、日本のELVリサイクル工場のモデルは、中国をはじめとする発展途上国へ広まりつつあります。

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