サゲ系にもアゲ系にも。スプリングの交換だけでクルマの車高を手軽にカスタマイズできる“カスタムスプリング”。今回紹介するのは、このパーツのリーディングメーカー“タナベ”の製品開発の模様です。様々な車種用のスプリングを最短1日で開発するという、圧倒的なスピードと確かな品質。その秘密は、モータースポーツで構築された経験値と設計から製造まで一貫して自社で行う“高度な内製化”にあります。

Photo : Yukio YOSHIMI Text : Isao KATSUMORI

開発はノーマル車両の試乗からスタート!


今回、開発⼯程をレポートするカスタムスプリングは、乗り⼼地にこだわるローダウン派をターゲットとする、タナベのサステック『NF210』。
開発⾞両はダイハツの新型タント(LA650S)で、ダウン量はF:25㎜、R:30㎜の設計。
ちなみに、車高は純正車高バランスも考慮しつつこの車がもっともスタイリッシュに⾒えるダウン量で設定し、前下がりや後ろ下がりに見えないよう、絶妙なバランスに設計されています。
タナベのカスタムスプリング開発は、まずノーマル車両の試乗から始まります。

テストコースは、ユーザーの日常ユースを想定した市街地コース。

乗用車の場合、乗り込む⼈数は1名乗車からフル乗車まで、乗員それぞれが異⾳の有無、乗り⼼地の確認等を⾏います。

ドライバーは運転補助装置等センサー類の作動や、操作感なども念入りにチェック!


試乗の次は現車測定です。

灯火類の高さ、フェンダーアーチのトップとホイールセンターの距離、フェンダーの隙間の長さ、地上高など、ノーマル車両のデータを細かく収集。
※実際の開発時には車両にキズが付かないよう養生を施し、測定されます。



最低地上高は自社で開発した専用ツールで、迅速かつ確実に計測。


さらに、1G状態でのスプリング長やバンプタッチまでのストローク量なども計測されます。

なお、これらのデータ収集は4輪すべてで行います。
その理由は、例えば後輪同士であっても、数値が左右対象とは限らないため。

タナベのカスタムスプリングNF210は、そういったノーマル車両の微妙な設計まで正確にデータ化することで、高度な品質と純正同等の乗り心地を実現しているのです。

収集した純正スプリングのデータを元に設計

次に、純正スプリングのデータ採りを行います。

項目は線径や外径、巻き数、自由長などで、写真は自由長の計測シーン。

バネレートは、バネ荷重試験機にて1G状態を再現して求めます。
新型タントの純正Rスプリングは2㎏/㎜と判明しました。

なお、スプリングのレートは、前後はもちろん左右でも変わることがあるため、4本全てを計測するのがセオリー。
電動式のスライドドアが片側にしかない車種等では、バランスを取るために左右でスプリングの仕様がかえられていることもザラなのです。


収集したデータをもとに、新型タント用のNF210スプリングを設計します。

作業はPCで行い、専用の設計プログラムに必要データを入力すれば完了。

理想のダウン量が得られるカスタムスプリングの設計データ(バネレート、線径、巻き数、自由長など)が、PCによって直ちに計算されます。

サンプルを自社で製造できるのがタナベの強み


どんな車種用も最短で1日でこなす、タナベの超ハイスピードなカスタムスプリング開発。これを可能にしている最大の要因が、コイリングの内製化です。多くのカスタムスプリングメーカーが外注で製造しているのに対し、タナベはハイパワーなコイリングマシンを導入し、自社で製造しています。内製なので、サンプル品の製造はあっという間に。開発部から送られた設計を元に、製造部でその日のうちに巻き上げられます。

さらに、万が一支障が見つかってもすぐに作り直すことができるので、その分クオリティも高められるというわけです。


もちろん、内製はコスト面でも非常に有利。

タナベのスプリングが高品質にしてリーズナブルな価格を実現している最大の理由は、ここにあります。

仮付けを行い、実走テストにてチェックして完成!


出来上がったサンプル品を開発車両に装着します。写真:スプリングと純正ダンパーとのマッチング確認風景スプリングのアッパーシートとの馴染み具合やスプリングシートへの収まり具合を確認。純正スプリングとカスタムスプリングは線径や巻き数が異なるので、ズレやガタつき、純正スプリングと形状に違いがないかなど慎重にチェックします。目視チェックの項目を全てクリアしたら、引き続き試乗検証です。


試乗はノーマルスプリングの試乗と同じく、1名乗車からフル乗車まで。

コースも規定の市街地コースで、『乗り心地』『異音』『操作』『各種センサー作動』といったことを純正スプリングでの試乗と比較。

乗員各自が担当項目をシビアにチェックします。


試乗検証を通過したら、最後に走行後の状態を再度確認。

ダウン量や車高バランス、スプリングの遊びなど、不具合がないことを十分に検証し、問題がなければ、サンプル品の完成です。



内製により、スピーディーかつ高い品質で開発される、タナベのリーズナブルなカスタムスプリング。

開発工程の様子を動画でも配信中です。

迫力のコイリングシーンの映像も公開、ぜひチェックしてください!

メーカー情報

株式会社タナベ
住所:〒562-0031 大阪府箕面市小野原東1-4-15
TEL:072-728-6700(代表)タナベのローダウンスプリングの詳しい情報はコチラ

動画もチェック!

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