トヨタ最後の小型テンロクFRスポーツとなったAE85 / 86 カローラレビン / スプリンタートレノの時代、トヨタは大衆車のFF化を進めており、AE85 / 86も次期型のE90系カローラ派生型としてはFF化が避けられませんでした。しかし、そんなFF化は新たな後輪駆動車の可能性を生み出します。それを具現化した初のミッドシップ車が、初代AW10 / 11型MR2でした。
掲載日:2018年12月16日
初代トヨタ MR2とは?
トヨタの大衆車は下はスターレットから上はカムリまで1980年代初頭まではFR車がほとんどでしたが、初代コルサ / ターセル(1978年)でFF車を、初代ビスタ(1982年)で現在では一般的なジアコーサ式横置きエンジンFF車の技術を確立させました。
そこで、それ以降デビューするカムリ / ビスタクラス以下の大衆車は全てFFレイアウトを採用する流れとなり、主力大衆車のカローラ系も5代目E80系(1983年)からFF化される事に。
スポーツモデルのAE85 / 86カローラレビン / スプリンタートレノだけは先代E70系からのキャリーオーバーでFR車として残りましたがあくまで過渡期の存在であり、カローラFX(1984年)やセダンのGTでFFスポーツの道も開けていたのです。
その一方で、横置きエンジンFF車はそのパワートレーン一式をフロントからリアに移せば、比較的容易にミッドシップスポーツを実現可能で、現にフィアット 128のパワートレーンを使ったフィアット X1/9(1972年)が登場しています。
従って、X1/9のトヨタ版的なモデルとして、1984年に初代MR2が発売されたのは自然な流れだったのかもしれません。
位置づけはあくまでスポーツカーではなく『スポーティ・パーソナルカー』であり、誰でも気軽にミッドシップ車でのドライブを楽しんでもらおうというコンセプトで開発されたMR2ですが、もちろん日本初の量販ミッドシップスポーツとして走り好きの心を鷲掴みにしたのです。
スポーツ性と実用性を両立したミッドシップスポーツの魅力
初代MR2はE80系カローラのパワートレーンをフロントから後席とリアタイヤの間、ボディ中央に近いミッドシップに移したもので、型式は1.6Lスポーツエンジン4A-GELU搭載型がAE11、1.5L実用エンジン3A-LU搭載型がAW10となります。
1986年のマイナーチェンジで4A-GELUにスーパーチャージャーを装着、低回転からのレスポンスを改善した4A-GZELU搭載型も加わりますが、型式はAW11で変わりません。
また、前後方向の短い横置きエンジンゆえ、スパッと切り落とした短いリアオーバーハングでも独立トランクを持てるだけのスペースがあり、2名乗車のミッドシップスポーツでも趣味性に加え最低限の実用性を持ち、スポーツ走行以外の日常使用にも耐え得る実用性を兼ね備えていました。
もちろん、リトラクタブル式ヘッドライトを持つ、いかにも空気抵抗の少なそうなウェッジシェイプ(くさび型)ボディに、重量物を車体重心近くに集めて良好な旋回性能を誇るミッドシップ車特有の走行性能など、スポーツカーとしても人気を得ます。
そして、マイナーチェンジで追加された開放的なTバールーフ仕様も含め、AE85 / 86を最後に失われたFRスポーツの穴を埋めて余りある魅力がありました。
モータースポーツでは主にジムカーナで活躍、幻のラリーマシン222Dも
発売とともに早速モータースポーツに持ち込まれた初代MR2ですが、活躍したのはもちろんスポーツエンジン4A-GELU、そしてそのスーパーチャージャー仕様4A-GZLUを搭載したAW11です。
AE86がラリーやレースなど幅広いステージで活躍したのに対し、AW11が主に活躍したのはその旋回性能をフルに活かせるジムカーナで、特にパイロンを中心にサイドブレーキなどでスムーズなスピンターンを決める『サイドターン』で威力を発揮しました。
なぜならボディ中心に重量物を集めたAW11はまさにコマのように回り、機械式LSDを装着して立ち上がり加速にも問題が無くなれば、サイドターンセクションやタイトコーナーの多いテクニカルコースほどライバルに差をつけられたのです。
その他、WRC(世界ラリー選手権)でも1980年代前半に危険なほどパワフルで速かったグループBマシン時代、その後継として計画されたより過激なグループS時代の主力マシンとしてAW11をベースとしたミッドシップ4WDラリーマシン、トヨタ 222Dが開発されます。
しかし事故の多発で安全性に深刻な疑問を持たれたグループBが、後継のグループSを含めて廃止されたことにより、222Dも日の目を見ずに終わってしまい、より強力な3S-GTEを搭載した過激なマシンが、実戦投入されずに終わったのは残念でした。
主要スペックと中古車相場
トヨタ AW11 MR2 1600G-Limited 1984年式
全長×全幅×全高(mm):3,925×1,665×1,250
ホイールベース(mm):2,320
車両重量(kg):950
エンジン仕様・型式:4A-GELU 水冷直列4気筒DOHC16バルブ
総排気量(cc):1,587
最高出力:130ps/6,600rpm(グロス値)
最大トルク:15.2kgm/5,200rpm(同上)
トランスミッション:5MT
駆動方式:MR
中古車相場:55万~168万円(各型含む)
まとめ
「FF車のパワーユニットを後ろに載せれば、容易にミッドシップスポーツを作れる。」という手法はフィアット X1/9をはじめとしたいくつかのメーカーが手をつけますが、その大前提としてはもちろん、優秀で生産台数の多いFF量販車の存在が必要不可欠でした。
その点で言えば、当時世界でも屈指のセールスを記録していたカローラ擁するトヨタは、うまくそれを利用して初代MR2を作ったと言えます。
そして、2代目でモアパワーを求めて大排気量・大型化しますが、初代MR2のサイズとパワーの良好なバランス、日本車(というよりトヨタ車)離れした直線的なウェッジシェイプ・デザインを好むユーザーが今でも少なくありません。
すでに生産終了(1989年)から30年近くが経過し、パーツ供給などにも難があり誰にでも維持できる車ではなくなっていますが、中古車市場では現在でも高い人気を誇っています!
あわせて読みたい
[amazonjs asin=”B07BRVM54Z” locale=”JP” title=”OttO 1/18 トヨタ MR2 ブラック 完成品”]
Motorzではメールマガジンを配信しています。
編集部の裏話が聞けたり、最新の自動車パーツ情報が入手できるかも!?
配信を希望する方は、Motorz記事「メールマガジン「MotorzNews」はじめました。」をお読みください!