驚きの、タービンエンジンを採用したレースカーがあったことを知っていますか?聞こえてくる音は、まさしく戦闘機!大迫力サウンドを響かせながら走った、その歴史をご紹介します。

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/STP-%E3%83%91%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%9C%E3%82%AB%E3%83%BC

タービンエンジンって?

Photo by Victor Camilo

そもそもタービンエンジンとは、どのような仕組みなのでしょうか?

タービンエンジンの前方から吸気された空気は、圧縮機で圧縮されます。

そして圧縮された空気は燃料と混ぜ合わされ、燃焼させることで非常に高い温度と圧力を持ったガスを発生。

そのガスによって、圧縮機と同軸上にあるタービンが回転し、エネルギーを発生します。

この回転エネルギーを動力源として引き出す方式と、飛行機などで使用されている後方より排気されるジェット噴流を使用し、動力を得る仕組みとなっているのです。

このタービンエンジンは、一般的な4サイクルレシプロエンジンが吸気→圧縮→爆発→排気の工程の往復運動を行うのに対し、回転運動の中で4つのサイクルを同時に行うことで、より高効率なエネルギーを引き出せる特徴を持っています。

メリットは高いエネルギーを得ることが出来るのに対して、デメリットは燃料消費量が多く燃費が悪いこと。さらには、エンジン本体が大型で重量が重いことです。

タービンエンジン 車への応用

この、高いエネルギーを引き出すことができるタービンエンジンを搭載すれば、より速い車が出来ると考え、レーシングカーに搭載する試みがありました。

その歴史を振り返ってみましょう。

STP ターボカー

出典:https://www.indianapolismotorspeedway.com/news-multimedia/news/2014/05/05/ims-museum-welcomes-back-turbine-power

1967年、高速度域のオーバルコースでレースが行われる、インディアナポリス500マイルレースに、タービンエンジンを搭載したレーシングカーが登場します。

タービンエンジンは、レシプロエンジンに比べるとレスポンスに劣るため、アクセルペダルのオンオフが少ないインディ500で採用されました。

ヘリコプター用のタービンエンジンを車体の左側に搭載し、その隣がコックピットといった特殊なレイアウトで、フルタイム4WDシステムを採用。最先端のレーシングカーとして、脚光を浴びることになります。

ドライビング操作も特殊で、アクセルペダルを踏まなくても動力が伝達されていたた、ブレーキペダルを離すだけで約50%の出力を発揮し、リアには可変ウィングが搭載されるなどエアーブレーキの役目も果たしました。

肝心のレースでは、力を温存しながら挑んだ予選で6位を獲得。決勝レースで本領を発揮すると、驚くべきスピードで他を圧倒します。

しかし、そのパワーにベアリングが耐えきれず故障し、途中リタイアとなりましたが、あまりにも速すぎるタービンエンジンに対し、翌シーズンより吸気量制限が掛けられるなど、その速さに誰もが驚きを隠せませんでした。

ロータス56

Photo by The Pug Father

ロータスは、前シーズンに活躍したSTP ターボカーに搭載されたタービンエンジンを改良し、インディ500に挑みました。

その速さは吸気量制限により前シーズンほどではなかったものの、最先端の4WDシステムと空力システムによってカバーされ、レシプロエンジンと遜色ない戦い展開します。

しかし、不運にもパーツの破損でリタイア。ここでインディ500では更にタービンエンジンに対しての吸気量制限を強め、更に4WD車を禁止する規約を作りました。

この吸気量制限の強化により、インディ500からタービンエンジン搭載車は消えてしまいます。

ロータス56B

まだ規制がかかっていないF1に、ロータスはインディ500と同規格のタービンエンジンを搭載したロータス56Bを投入します。

しかし、インディ500とは異なり、多くの高速・低速コーナーと起伏のあるサーキット場で速さを競うF1では、レスポンスに劣り、他の車両よりも重たい車体も相まって、勝負になりませんでした。

その結果、F1では1971年の1シーズンのみで姿を消し、最高成績はイタリアグランプリの8位。ポイントを取ることなく姿を消しました。

まとめ

レースの世界では、より速く走れるように様々な新しい試みが試されています。

そして、このタービンエンジンを搭載する考えは理にかなって、おりまさしく速く走るための選択でした。

レシプロエンジン搭載車のエキゾーストノートが響く中、ジェットエンジンのような轟音を響かせ走るタービンエンジン搭載車は、当時のレースファンを興奮の渦に巻き込みます。

しかし、その実力の高さにより、速すぎて空を飛んでしまい大きな事故を起こす前に規制され、レース界の伝説となったのです。

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