F1マシンには毎戦のように新しい技術が投入され、目まぐるしい速さで開発が進められています。近年はレギュレーションに合わせてマシンの形状が変わることが増え、10年でF1マシンの見た目は大きく変化していますが、その外観に大きな影響を与えるのが空力パーツです。では、今から10年前にF1で流行した空力パーツにはどんなものがあったのでしょうか!?
CONTENTS
10年前のF1で流行した技術とは?
エンジニアたちの開発によって多くの技術が生み出され、日々進化を続けているF1マシン。
近年ではレギュレーションの変化に合わせて、そのビジュアルにも大きな影響を受けています。
それはもちろんシーズンをまたぐごとの大きな変化が主ですが、シーズン中にもレースの度に新しいパーツが持ち込まれ、細微な部分に変化が起こっていることも少なくないのです。
また、レギュレーションの変更による変化だけではなく、シーズンごとにマシンデザインにも流行が!!
F1のようなトップレースでも秀でた技術を模倣することはパフォーマンスの向上に重要と考えられ、そういった考え方から先駆けて生み出された技術がレースに広まっていくことも珍しくありません。
特にパッと見て分かる空力パーツはその対象になりやすく、ファンにとってもその年のF1マシンの象徴として記憶されることも少なくないのです。
では、今から10年前に流行したF1の空力デバイスには、どのようなものがあったのでしょうか。
振り返っていきたいと思います。
二階建てのフロントウィング
まず最初にご紹介するのは、二階建ての構造で注目を浴びたブリッジウィングです。
ブリッジウィングとは名前の通り”橋”を意味するもので、左右の翼端板を繋いでいることからこのような呼び方になりました。
このブリッジウィングは2007年にマクラーレンが導入すると、これがレギュレーションに合法していると認められ、その翌2008年には多くのチームがマシンに搭載。
ブリッジウィングは見た目にも分かりやすいことから、この年代を象徴するデバイスの一つと言えるでしょう。
また、2008年中盤からはブリッジウィングのたわみを防ぐことが義務付けられ、フロントノーズの先端部分に支柱が取り付けられるようになりました。
ちなみにこのブリッジウィングの役割において意外に思われるのは、マシン後方部へと流れる気流を整えることが主な目的だったこと。
このデバイスはフロントのダウンフォース増加を狙っているように見えますが、リアウィングやディフューザーに向けてより多くの気流を流すという目論みがありました。
そのため、2005年から見られるようになったホーンウィングと同じ役割だったため、ブリッジウィングの登場と共にホーンウィングの搭載を見送るチームが増えることになったのです。
フロントノーズに取り付けられたウィング
フロントノーズには、少し変わった形状のウィングが取り付けられることもありました。
このウィングはディズニー映画『ダンボ』に登場する象の耳に因んでダンボウィングと呼ばれ、マクラーレンやホンダのマシンに搭載されて話題に!
ダンボの耳というよりは天使の羽や鳥の翼などに似ているという意見もあり、搭載する位置においても2006年に登場したタワーウィングと同様に大きなインパクトを与えています。
実はこのダンボウィングにはこの前年にF1で流行したカナード(フロントノーズ後方にある羽)と似た役割があり、マシン前方の気流をスムーズに後方に流すという狙いがありました。
このダンボウィングを搭載したチームがテストで大きな効果が期待できると実感し、この年タイトルを争っていたマクラーレンも遅れてこれを搭載。
そして、当時マクラーレンに所属していたルイス・ハミルトンが史上最年少でチャンピオンに輝いたことから、この奇抜なウィングもタイトルマシンの一部として彼の栄光を手助けすることになったのです。
2017年に復活を果たしたサメの背びれ
そして、今季から再び禁止となったシャークフィンも、2008年に流行したデバイスの1つです。
このシャークフィンは見た目の通りサメの背びれに似ていることからそう呼ばれるようになり、2008年のレッドブルRB4に初めて搭載されました。
シャークフィンを搭載する狙いとしては前方で発生した乱流を整える効果があり、レッドブルに続いて多くのマシンが模倣し2008年を象徴する空力デバイスになっています。
ちなみにシャークフィン単体での効果は疑問視されることもあったのですが、2010年にはFダクト、さらに復活を果たした2017年にはTウィングなど、他のデバイスと組み合わせて用いられることも多いのが特徴。
このように禁止されたデバイスが復活するケースはそれほど多くないなか、2017年度の技術レギュレーション改正によって復活したのですが、こちらも見た目が不評だったため今季からは禁止されることになりました。
しかし、F1で禁止された一方、2018年に新型マシンを導入したF2ではシャークフィンが採用されており、またスーパーフォーミュラでも見られるなど、現代のフォーミュラカーではメジャーな空力パーツとして知られています。
前後で構造が異なるF1マシンのリムシールド
最後にご紹介するのはホイールに取り付けられた空力パーツ、リムシールドです。
単純にホイールカバーと呼ばれることもあるこのパーツは、F1マシンの中で最も大きな空気抵抗を生むタイヤの気流を整えるために生み出されました。
これが初めて登場したのは2006年のフェラーリ248F1に搭載され、2008年にはマクラーレン、ルノー、レッドブル、トヨタ、ホンダなど多くのチームが導入する流行デバイスに!!
このリムシールドの役割はブレーキの冷却と主張されてきましたが、ホイールが巻き起こす乱気流を減少させる狙いがあったとみられており、またホイールと一緒に回転していたことから空力可動物としての疑いがかけられます。
最終的には主張が通ると各チームが揃ってリムシールドを搭載し、それに続いてフロントホイールのリムシールドも生み出されることになりました。
ここで興味深いのは、フロントとリアでリムシールドの構造が全く異なることです。
リアのリムシールドは回転するのに対してフロントはホイールと一緒には回転せず、下方部分に空洞が設けられるなど形状も異なるもの。
また、フロントのリムシールドは回転していないため空力可動物の対象にはならず、空洞を作ることによってブレーキの冷却を狙うなどリアと同様に一挙両得の効果が期待できるパーツでした。
これに合わせてタイヤ交換時に使用されるホイールガンも特殊なものが開発されるなど、そのままF1マシンのパーツとして定着すると、多くの空力添加物が禁止された2009年にも引き続き使用される事に。
しかし、2010年にリムシールドも禁止となり、2008年に見られた多くのデバイスたちは2年後にはほとんど姿を消しています。
まとめ
今から10年前である2008年は歴代のF1マシンの中でも、多くの空力パーツが注目を浴びたシーズンだったと言えるでしょう。
それ以降はレースでのオーバーテイク増加を狙い、規制によってそれらが取り払われることになりました。
近年のF1の場合はマシンの進化よりもマシン規定によってスピードが変化するケースが多く、どれほどF1マシンが進化したのかという点を一概に比較することは難しくなっているのが現状。
そのなかで外観で比較することはF1マシンの歴史を振り返る上で、現在との違いを発見できる興味深さがあると思います。
10年前にこれらのパーツがついていた箇所は、現在どのようになっているのかという発見を楽しみながらレースを楽しんでみるのも良いかもしれません。
あわせて読みたい
[amazonjs asin=”B01L5553PK” locale=”JP” title=”ダミーダクト/カーボンデザイン&アルミメッシュ/2個セット【オートランド/AUTOLAND】”]
Motorzではメールマガジンを始めました!
編集部の裏話が聞けたり、月に一度は抽選でプレゼントがもらえるかも!?
気になった方は、Motorz記事「メールマガジン「MotorzNews」はじめました。」をお読みいただくか、以下のフォームからご登録をお願いします!