過去20年で最大とも言われる2017年度のレギュレーション改定。レースをよりエキサイティングにすることに狙いを絞り、空力だけでなくタイヤ、パワーユニットなど様々な箇所が変更されました。それにより史上最速のF1マシンになると予想されているのです。ではどのように変わり、レースにどのような影響を与えるのか?分かりやすくご紹介していきたいと思います。

©︎Pirelli

 

昨年とは一味違う!?史上最速の2017年、F1マシン

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2014年にパワーユニットが導入されるなど、大きくマシン規定が変更されてから3年が経過しました。今季、F1では再びマシンの規定が大きく変わることが決まり、開幕前から大きな注目を集めているのです。

これまでF1では毎年のようにマシンに関する規定が変更されてきました。しかし、その多くは安全性に配慮するべくスピードの抑制というものが目立ちました。

ですが今回の変更はマシンのスピード増加を狙うという、昨今のF1では珍しい試みで、レースをより迫力のあるものにしようと言うエンターテイメント性に趣きを置いたものだったのです。

トロロッソのマシンデザインを担当するジェームス・キーは「過去20年で最も大きなルール変更だ。」と発言していることからも、開発者にとっても挑戦的な1年になると予想されています。

また、大きなマシンの変更はどのチームにとっても上位進出を狙うチャンスでもあり、昨年まで圧勝を収めてきた王者メルセデスを倒すために開発に取り組んでいるのです。

今季のF1は一体どのように変わるのでしょうか?それでは、もう少し詳しく見ていきましょう。

 

パワーユニットの開発制限が廃止に!シーズン中の勢力変化も起こるかも!?

©︎Mercedes AMG

2014年からF1に導入されたパワーユニットはエンジンに取って代わるマシンの心臓部として用いられてきましたが、これまで開発にはルール上の制限が設けられてきました。

そのため、導入初年度にパワーユニットの開発に成功したメルセデスが3年間に渡り圧勝を収め、大きな勢力図の変化は見ることが出来ませんでした。

2015年にはトークンという制度が設けられ、制限はあるものの開発が許可されたのですが、それでも大きく勢力図が変化することはなく、追いかける立場のチームにとってはもどかしい状況となりました。

しかし今季は、開発を規制するルールが撤廃され、存分に開発が行えるようになったのです。それに伴って、ルノーそしてホンダは昨年とは全く別物の新型パワーユニットを投入すると噂されています。

シーズン中にも開発が出来るようになったので、中盤で力を付けてくるチームが出てくるなど、シーズンの最後まで目が離せない展開となる可能性が高まったのです。

さらに、パワーユニットに関する大きな変更点は、これだけではありません。

昨年まで1台のマシンにつき、年間5基まで使用できたパワーユニットは、今季からは4基に減らされることが決定。パワーユニットの耐久性がより一層重要なものになるのです。

また、マシン全体のダウンフォース量の増加に伴って、アクセル全開で走れるコーナーが増えるということから、コースによっては昨年と比べて20%もアクセル全開率が増えると見られています。

これはパワーユニットにより一層大きな負荷がかかることを意味するので、走行距離と負荷が昨年以上に増加しレース中のトラブルが増え、レース展開に波乱を及ぼす可能性が高まるかもしれません。

 

タイヤの幅が20%も増加、不確定な要素が戦略に影響する!?

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2011年からF1にタイヤ供給を行っているピレリも、今季のレギュレーション変更で大きな変更が及ぶことが決まっています。

昨年はウルトラソフトという新たなコンパウンドが加わり、レースに持ち込まれるタイヤの種類が3種類に増えました。そのため、レース戦略に自由度が増し、色とりどりなレース戦略を採ることが出来るようになったのです。

それは今季も引き継がれますが、それに加えて今季はタイヤのサイズが昨年より大きなものに変更され、マシンの速さに大きな影響を与えると見られています。

フロントタイヤの横幅は245mmから350mmに、リアタイヤは325mmから405mmと昨年と比較して20%以上大きくなるのです。

そのため、タイヤと路面の接地面積が増えるとマシンのグリップ力が増し、ラップタイムは大幅に速くなると見られています。

この影響はグリップ力に留まらず、パワーユニットからの出力で大きなタイヤで路面を蹴ることが出来るので、マシンの加速性能も大幅に向上することになるのです。

また、こうしたタイヤのスペック変更はレースに大きな不確定要素をもたらす可能性も否定できません。

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ピレリは2011年からF1のタイヤ供給を行ってきましたが、供給当初はどのチームも急激な性能劣化などの特性に翻弄され、タイヤの性質を理解できずに戦略を機能させられない事も少なくありませんでした。

そういった傾向はスペックが変更される度に見られ、その度にチームはタイヤの使い方に頭を悩ませてきたのです。

現代のF1ではタイヤの特性を上手く理解して戦略を組み立てる必要があり、例え速いマシンを有していても、タイヤ戦略を誤ると勝利を逃すことになりかねません。

大きくタイヤサイズが変更される今季もその例外ではなく、そういった不確定要素がレースに波乱を生み出す可能性も十分にあると思われます。

 

F1マシンの外観が変わる!史上最速になるための変更点とは?

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今季のマシン規定で最も大きな変更点は、マシンの見た目が大きく変わる事です。

前後ウィングの幅が大きくなるだけではなく、変更点はマシンの床面にまで及んでいます。そのため、マシンが発生させるダウンフォース量が増加し、コーナーリング速度が大幅に上がると見込まれているのです。

その変更の度合いはマシンを見ると一目瞭然。さらに細かい内訳を見てみると、今回の規定変更がどれほど大がかりなものかお分かり頂けると思います。

今季変更された主なマシン変更点(左:2016年、右:2017年)

フロントウィング横幅 1650mm→1800mm

リアウィング横幅 750mm→900mm

リアウィング高さ 950mm→800mm

フロア横幅 1400mm→最大1600mmまで

マシン最大横幅(タイヤ含む) 1800mm→2000mm

ディフューザー横幅 1000mm→1050mm

ディフューザー高さ 125mm→175mm

マシン最低重量 702kg→722kg

今回変更された箇所は空力に大きく影響を与えるパーツばかりなのです。

前後ウィングの幅だけでなく、大きなダウンフォースを生み出すフロアやディフューザーにまでに変更が及んでおり、マシンの空力面はパフォーマンスに大きな影響を与えることになりそうです。

またタイヤが大きくなったことで、マシン全体の重量も20kg引き上げられることが決まっています。それにも関わらずラップタイムは速くなるという点からも、スピード増加を狙っていることを読み取る事ができます。

では、こうしたことがドライバーにどのような影響を与えるのでしょうか?

マシンが速くなると、ドライバーに求められることも必然的に増えていきます。コーナーリングの速度が増加すると、これまで以上に強烈なGフォースがかかるので、ドライバーの肉体的な負荷は昨年以上に大きなものになるのです。

さらに、マシンが大きく変わったことで昨年までのドライビングスタイルが通用しない可能性もあり、新しいマシンへのセッティング能力などを含めた適応力も重要となってきます。

そうした事からも、これまで見られなかったドライバーの新たな一面が見られるかもしれません。

 

まとめ

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毎年のようにレギュレーションが変更されてきたF1ですが、今年はレースがよりエキサイティングになるためのマシン規定が導入されました。

これまで安全性の観点からスピード削減を目指していましたが、スピードの増加はファンだけでなく多くのドライバーも歓迎しており、今季のレースに向けて期待を覗かせています。

また、これだけ多くのことが一挙に変更されたことから、レースは全く予想も付かない展開が見られるかもしれません。

この新たなレギュレーションのもとで新たなマシン、技術、そしてそれに適応させたドライバーの走りを目にする瞬間が今から待ちきれません。

2月下旬には多くのチームが新車発表を行う事が決まっているので、まずはさらに進化したF1マシンの登場に注目してみてはいかがでしょうか。

 

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