年間18レースを争われる世界最高峰のバイクレース「モトGP」。レースウィークになると世界中のファンが熱狂する、日本でも人気の高いモータースポーツです。最先端のテクノロジーを搭載し最高のポテンシャルを与えられ最速である事を求められるバイクたち。今回は2017年に投入された各メーカーのモトGPマシンを紹介します。

 

出典:https://race.yamaha-motor.co.jp/motogp/2017/rd07/

 

勝敗はサーキットでつける

 

Photo by imp98

 

「バイクの速さとは?」ライダーが集まるとこんな話題になることも珍しくありません。

最高速〇km、ゼロヨン〇秒、コーナーリングスピードが〇〇〇、あるコミックでは「バイクの速さ(スピード)とは感じるものだ」というセリフも登場します。

どのバイクが速いのか?その答えは条件等で大きく勝敗が左右されるので比較のしようがありませんが、そんな疑問に勝敗を下すのがレースなのです。

同じ場所を、同じ時間に、同じルールで走る。至ってシンプルで誰もが納得できるフィールドではないでしょうか。

 

テクニックとテクノロジー そして信頼

 

出典:http://www.honda.co.jp/WGP/spcontents2017/spreport/vol167/

 

レースでは様々な要因が絡み合い勝敗を決する訳ですが、その中でもライダーの人並み外れたテクニックは観戦しているファンにとって最高の見所です。

モトGPクラスでは最高時速は350km/hを超え、ハイスピードで繰り広げられるギリギリのバトルは、瞬きをすることを忘れるくらいエキサイティングなシーンです。

なぜライダーは命を預けてそんなにアクセルを開けることができるのか?それはマシンを、そしてメカニックを信頼しているからではないでしょうか。

そしてその信頼とはメーカーが誇るテクノロジーに裏付けされているといっても過言ではありません。

 

レギュレーション

 

カテゴリー

 

Photo by box_repsol

 

レースにはレギュレーションやルールが存在し、モトGPはレギュレーションにより3つのカテゴリー、クラスに分けられています。

ヤングライダーの登竜門として位置付けられる排気量250ccのモト3クラス、全チームがホンダCBR600RRのエンジンを使用するモト2クラス、最高峰クラスと呼ばれる1000ccエンジンを搭載したモトGPクラス、そして更にクラス毎に細かいルールが存在します。

今回は、そんな3つのクラスの中でも最高峰のモトGPクラスに注目しました。

2017年のモトGPクラスへの参加チームは全12チーム、メーカー直属のワークスチームが6チーム、メーカーからマシンの供給を受けるサテライトチームが6チームでレースを戦います。

 

マシンスペック

 

Photo by k_t_tallica

 

モトGPに出場するバイクは市販車のように各メーカーが自由に開発、製造できる訳ではなく、レギュレーションによりスペックが定められています。

基本的なスペックとして、エンジンは総排気量1,000c以下で最大気筒数は4気筒、車両重量157㎏以上で積載燃料数は22L以下となっています。

またECU(バイクを制御するコンピューター)はイタリアのマニエッティ・マレリ製で、タイヤはフランスのミシュラン製で統一されているのです。

2017年シリーズのレギュレーションは2016年と比較して大きな変更はありませんが、タイヤの空気圧と温度を計測するタイヤセンサー(TAPS)の装着が義務付けられました。

また昨年までフロントカウリングに装着されていたウィングレットも禁止となりました。

 

2017年シーズンは禁止のウィングレットとは?

 

出典:http://www.ducati.co.jp/racing/media_gallery/round_14___aragon____2016/1511607/index.do#MGI1512075

 

ウィングレットとは羽の形状をした空力パーツで2015年にドゥカティが導入、ダウンフォースによりフロントの接地を増し、ウィリーを抑制する効果が得られます。

禁止の理由は安全性と言われており、ライダーの間でも「アクシデント時に危険ではないか」と指摘されていたのです。

2017年はレギュレーションにより「ボディへの突起物の装着禁止」が明記されましたが、各メーカーはレギュレーションの範囲内でウィングレット以上のダウンフォースを得るためにカウリングの開発研究に力を入れています。

これらの制限の下で各メーカーはトライ&エラーを重ね、最高出力240馬力以上、最高速度350kmを超えるハイパフォーマンスバイクをサーキットに送り出すのです。

 

メーカーのプライドを背負ったモトGPマシン

では各メーカーの2017モトGPマシンを紹介しましょう。

 

ヤマハ YZR-M1

 

出典:https://race.yamaha-motor.co.jp/motogp/

 

今年も気合の入っているヤマハ、初戦のカタールGPを優勝で飾り、第5戦フランスGPではグランプリ通算500勝目を達成しました。

2017年はワークスとサテライトの2チーム体制をとっており、ライダーは世界中でファンの多いレジェンドライダーV・ロッシ、また昨年スズキのマシンを表彰台に導いたM・ビニャーレス、更にサテライトでは昨年のモト2チャンピォン、J・ザルコという豪華な顔ぶれとなっています。

そんなYAMAHAのGPマシンである、YZR-M1は並列4気筒クロスプレーンクランクシャフトエンジンを搭載。

このエンジンは4つのピストンが微妙に間隔をあけて上下運動を行うことにより、エンジンの回転ムラを抑制。

その結果、スムーズなエンジンレスポンスを実現しているのです。

また「ハンドリングのヤマハ」と呼ばれるコーナリング性能はライバルメーカーから一目置かれています。

 

スズキ GSX-RR

 

出典:http://www1.suzuki.co.jp/motor/sports/race/motogp.php

 

2015年からモトGPに復活したスズキ。

2016年シリーズは2007年以来となる優勝、そして3位を3度も獲得してスズキファン、そしてモトGPファンを熱狂させ台風の目となり大暴れしました。

2017年もワークスチームのみでの参戦を継続し、ライダーはドゥカテイから移籍したA・イアンノーネ、とA・リンスとなっています。

扱いやすい並列4気筒エンジンと高いコーナリング性能がバランスよくセットアップされ、開発には日本のロードレース界ではレジェンドとなっている青木3兄弟の長兄、青木宣篤が携わっています。

今年も台風の目となってサーキットを沸かしてくれるでしょう。

 

ホンダ RC213V

 

出典:http://www.honda.co.jp/WGP/race2017/formation/rc213v/

 

2016年のシリーズチャンピオンであるホンダ。

2017年はワークスチームのレプソルホンダとサテライトチームが2チームの合計3チームで挑みます。

ワークスチームでは、若き天才M・マルケスとベテランD・ペドロサのペアを継続起用。

また、サテライトチームでは、昨シーズンのダッチTT(オランダGP)で初優勝を果たしたj・ミラー、そして走る闘魂C・クラッチローもライディングします。

ちなみに2016年シーズン第14戦アラゴンGPと第16戦オーストラリアGPでは、先日不慮の事故で亡くなったニッキ―へイデンがスポット参戦してRC213Vにライディングしました。

ホンダのV型4気筒エンジンは完成度が高いと言われており、ストレートで他メーカーのマシンを抜き去り、また引き離すシーンはモトGPファンではおなじみのシーンになっています。

 

ドゥカティ Desmosedici GP

 

出典:http://www.ducati.co.jp/racing/media_gallery/round_6___mugello____2017/1654991/index.do#MGI1656170

 

言わずと知れたイタリアのオートバイメーカー、ドゥカティ。

現在参戦している海外メーカーでは、最もモトGPの経験が豊富なチームです。

市販車においても高い人気を誇るドゥカティのV型デスモエンジンはレースでは4気筒で、そのビッグパワーはストレートで驚異の速さを見せてくれます。

ライバルが最高出力240馬力以上と公表しているのに対し、ドゥカティは唯一250馬力以上と謳っています。

サスペンションはオーリンズ、ブレーキにはブレンボ、そしてアクラポビッチのマフラーを装備したメイドインヨーロッパのオートバイで、ヨーロッパグラウンドに限らず世界中のドゥカティストから支持を得ています。

ライダーは「職人」と名高いAドビチオーゾと、ヤマハから移籍したJ・ロレンソで2017年を戦います。

 

アプリリア RS-GP

 

出典:http://aprilia-japan.com/news/2017/03/14/aprilia-relaunches-the-motogp-challenge/

 

数々のレース経験を持ち、かつて原田哲也や坂田和人の日本人ライダーも在籍したイタリアの名門チーム、アプリリア。

2004年に経営的な理由からモトGPを撤退し、その後ピアッジオグループの下で活動。

そして2015年から再びモトGPに復活して、今年は二年目の挑戦となっています。

エンジニアのロマーノ・アルベシアーノは、レース活動においてはSBK(スーパーバイク)を優先するスタンスを崩してはいませんが、時間をかけて100%のモトGPマシンを仕上げていくと話しています。

今年はスズキから移籍したA・エスパルガロとモト2からステップアップしたS・ロウズがライディングします。

 

KTM RC16

 

出典:https://press.ktm.com/News_Detail.aspx?id=50535&menueid=7311&tab=1&imageid=131964

 

モトクロスやラリーレイドで無敵の強さを誇り、また2016シリーズではモト3で優勝を飾るなど、着実にロードレースで力を付けているKTMが2017年、ついにモトGPに参戦です。

RC16の主な特徴は、モトGPマシンにおいて唯一鋼管トレリスフレームとWPのサスペンションを採用しているところです。

ライバルメーカーには、アルミフレームとオーリンズという選択が多い中、あえて独立独歩の姿勢を貫いています。

ライダーは昨年までヤマハで活躍したP・エスパルガロとB・スミスのペアで挑みます。

シーズン前のテストからセッティングをECUに合わすことに苦戦を強いられているようですが、そのポテンシャルはまさに未知数、今後の活躍が楽しみです。

 

まとめ

 

出典:https://race.yamaha-motor.co.jp/motogp/2017/rd03/

 

今シーズンも熱いバトルが繰り広げられているモトGP。

レースを戦うマシンは1レース毎に限られた時間でテストを行いセットアップされていきます。

マシンはシーズンごとではなく、レースごとに進化を遂げていると言っても過言ではありません。

今年もすでに7戦が終了しヤマハ、ホンダ、ドゥカティが優勝を獲得しています。

また、昨年以上にサテライトチームがトップ争いに加わっており、ファンを熱狂させているのです。

昨シーズン以上に先行きのわからない2017年シーズン。

是非、好きなライダーと好きなマシンに注目して楽しんで頂きたいと思います。。

 

あわせて読みたい

【計画は早めがお得!?】今年はMotoGP日本グランプリを見にツインリンクもてぎに行こう!

全日本王者の中須賀克行が挑んだMotoGP日本ラウンド「続けていくことが大事」

8耐参戦決定で大注目!元MotoGPチャンピオン”ニッキー・ヘイデン”を知っていますか?

[amazonjs asin=”B01N760DO0″ locale=”JP” title=”2016MotoGP™ MotoGP™クラス年間総集編 DVD”]

Motorzではメールマガジンを始めました!

編集部の裏話が聞けたり、月に一度は抽選でプレゼントがもらえるかも!?

気になった方は、Motorz記事「メールマガジン「MotorzNews」はじめました。」をお読みいただくか、以下のフォームからご登録をお願いします!