F1世界選手権2018年シーズンが開幕するにあたり、今シーズンもいくつかのレギュレーションが変更となりました。毎年変わるレギュレーションに、見ているファンも困惑気味かもしれません。しかし!ルールをキチンと把握できれば、F1がさらに面白くなる事、間違いありません。
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2018年F1のレギュレーション変更は最小限
F1のレギュレーションは毎年変更されており、前年度チャンピオンや上位常連チームに不利になるよう修正される傾向があるといわれています。
そんなレギュレーション変更ですが、今季は大幅な変更はなく、上位チームが不利になるような変更内容はこれといってありません。
目に見える変更点としては、ドライバーの頭部を守るためのHalo(ハロ)の追加やシャークフィンとTウィングの使用禁止、パワーユニットのエンジンやERS、ターボチャージャーなどの年間使用制限の厳格化などで、F1マシンの速さを大きく左右するレギュレーション変更ではないと考えられます。
パワーユニットのコンポーネント年間使用制限
シーズンを通して、パワーユニットの各コンポーネントの使用できる回数は、年々少なくなっています。
F1マシンは、2014年シーズンに内燃機関(ICE)を1.6リッターV型6気筒エンジンに変更され、ターボチャージャー(TC)、運動エネルギー回生システム(MGU-H)、熱エネルギー回生システム(MGU-K)、コントロール・エレクトロニクス(CE)、エネルギーストア(ES)の6コンポーネントが駆動源となりました。
これにより、エンジンといわず『パワーユニット』と呼ばれるようになり、エンジン部分はかなり複雑な構造になっています。
そして今季は、ICE、TC、MGU-Hが年間3基、ES、CE、MGU-Kが年間2基と使用できる個数を制限。
性能を最大限まで引き出すと故障のリスクが高くなるため、各コンポーネントの故障が起こらない信頼性が重要視されるようになりました。
これによりパワーユニットを改良するなどアップデートできる回数にも制限があるため、安易にシーズン途中で新しいパワーユニットを搭載しずらくなります。
もし、故障などでパワーユニットの制限基数を超えてしまうと、決勝レースでは最後尾グリッドからのスタートというペナルティーが課せられる事に!
また、一度のレースで複数のマシンにペナルティが科せられた場合は、ペナルティが適用された順に並べられます。
トリックサスペンションの使用禁止
#F1: Red Bull copies #Ferrari suspension trick. Plus more information on Vettel’s chassis change. #USGP, #AMuS: https://t.co/xzf9943JLP pic.twitter.com/gjF1ypPymY
— Andreas Haupt (@andihaupt1) 2017年10月21日
導入直後から議論となっていた『トリックサスペンション』が、今シーズンから使用禁止になります。
トリックサスペンションとは、FRIC(Front & Rear InterConnected)と同じような効果を狙ったものですが、FRICはすでに2014年に使用禁止になりました。
ちなみにFRICとは、大まかにいうと前後のサスペンションを油圧で連動させたシステムで、搭載することで空力学的に車体を安定させることが大きな目的です。
この車体の安定とは、厳密にいうと『車体が路面に対して一定の車高を保つこと』、『車体が路面に対して水平であること』であり、加速・減速・コーナリング時に車体の前後左右の車高を変化せずに安定させる仕組みで、ダウンフォースに有利な働きをします。
そしてトリック・サスペンションは、FRICの使用禁止を潜り抜けるために構造を変更したものですが、サスペンションのストロークによって生じたエネルギーを蓄えておき、マシンの姿勢を制御するために蓄えたエネルギーを利用するシステムとなっています。
しかし、サスペンションとしての本来の役目とは異なっている事に対し、トリックサスペンションの搭載にはしばしば議論が起こっており、今シーズンから正式に使用禁止となりました。
シャークフィンとTウィングの禁止
昨年は、ほとんどのマシンに採用されていたシャークフィンとTウイングが、今季から禁止されます。
空気力学的に有利なパーツとされていましたが、F1ファンや関係者の多くから「見た目がダサい。」と言われており、2018年からシャークフィンとTウイングの使用を却下。
世界最高峰のフォーミュラーだけに外観のカッコよさにも重点を置いており、F1マシン本来のスタイルを取り戻すために的確な基準のもとでの変更内容といえるでしょう。
しかし、エンジンカバーからリアへの延長は幾らか可能で、エンジンカバー後部とリアウイングの間には100mm程の規制はありません。
ちなみに2018年2月の公式テストを見てみると、エンジンカバーにフィンと思われるエアロパーツが装着されていましたが、2017年のような巨大な板がつくことは無いと思われます。
タイヤコンパウンドに『ハイパーソフト』と『スーパーハード』が追加
タイヤコンパウンドは昨シーズンまで5種類でしたが、今季から『ハイパーソフト』、『スーパーハード』の2つが加わり、計7つのコンパウンドが用意されました。
ちなみに、コンパウンドの種類はタイヤフォールのカラーリングで判断できます。
橙色…スーパーハード
水色…ハード
白色…ミディアム
黄色…ソフト
赤色…スーパーソフト
紫色…ウルトラソフト
桃色…ハイパーソフト
新安全装置Haloの導入
路面上に落ちているマシンパーツやデブリ等がコクピット上部へ飛来したときに、ドライバーの頭部を守るためにコックピット保護デバイス『Halo(ハロ)』の導入が義務化されました。
2009年7月25日(土)に行われたF1第10戦ハンガリーGP予選のセカンド・ステージで、走行中に他のマシンから外れたパーツがフェラーリのフェリペ・マッサのヘルメットに激突。
マッサは衝撃と頭部損傷により意識を失い、そのままタイヤバリアへ衝突してしまったことがありました。
そのような事故もあったため、ヘルメットを着用しているといってもドライバーの頭部があらわになるフォーミュラーカーレースにおいて、ハロの装着は堅実な判断といえるでしょう。
しかし、ハロの装着が義務となれば、ハロにかかる空気抵抗や気流の流れにも影響がでるため、そのあたりを各チームがどう攻略してセッティングするのかも見物です。
また、ハロを装着することで15kg程度の重量増加が見込まれ、それにともなってマシンの最低重量は昨年より6kg増加した734kgとなります。
まとめ
2018年シーズンのレギュレーション変更は他にもいくつかありますが、これまで紹介したものが主要となる変更内容です。
レースを観戦していく中で出場するレーシングカーや選手に注目が集まりますが、レースを公平かつ観客を楽しませるために運営する側は厳格なレギュレーションを考案しています。
レギュレーション変更内容について毎年のように賛否両論沸きあがりますが、そのレギュレーションに合わせて年々アップデートされていくF1マシン。
さらにドライバー・メカニック・エンジニアの努力も、F1の魅力のひとつではないでしょうか。
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