高校生以下の子どもたちを対象としたモータースポーツイベント『トヨタカローラ栃木Presents 140AT』。カートやポケバイなど子どもたちが参加できるモータースポーツは数多くありますが、今回ご紹介する140ATでは、子どもたちが一般道を走る普通の乗用車を運転します。それは一体どんなイベントなのでしょうか。

 

©️Motorz

 

140ATとは

 

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栃木県那須塩原市にあるドライビングパレット那須(以下:DP那須)で開催されている、高校生以下を対象としたモータースポーツイベント、トヨタカローラ栃木Presents 140AT。

140ATの名前の由来は、『身長140cm』と『アカデミートライアル』。身長140cm以上というのは教習所の入所制限で、高校生以下で身長140cm以上あれば男女問わず参加することができます。

2015年から始まり、今年で4年目を迎えた140ATは、年間5回開催されており、毎回、全国から多くの小学生や中高生が集まり、クルマの運転を楽しんでいます。

 

©️140AT

 

140ATで使用するアクアには写真のように助手席側からブレーキ操作が行えるよう、ペダルに固定されたステッキ(通称:魔法の杖)が装備されており、同乗するインストラクターの判断でブレーキペダルを操作することが可能。ABSを作動させられるほどの力を加えられることと、頑丈かつしっかりとした作りなので、万が一の際にも安心です。

「子どもがクルマを運転して大丈夫なの?」と思われる方もいるかもしれませんが、主催者であるDP那須が安全かつ安心して子ども達が乗用車を運転できるような、クルマ作りと環境作りを行なっているので、これまでの過去4年間で事故は無し。

イベントの内容は、広場にパイロンを立てて設営されたコースでのタイムを争う……という一般的なモータースポーツさながらのタイムアタックではあるのですが、競うのは速さではなく、各々が申告したタイムにいかに近づけられるか?を争うというものです。

つまり「誰よりも速かった」ではなく「いかに時間通り安全に走れるか」を目指す、自分との戦いなのです!

このような独自のルールや、自動車の教習所同様に隣にインストラクターが同乗することからも安全に配慮されつつ、クルマを触ったことのない10代の若者でも楽しめる内容になっているので、親御さんも安心!

実際に免許を取得して公道を走る時にも、かなり役立つイベントとなっているのです。

 

当日の流れと様子

 

©️Motorz

 

2018年の第4回目の開催となった9月23日も、多くの参加者が集まり賑わいを見せました。

意外にも小学生の参加者が11名と最も多く、最年少はナント小学2年生(8歳!!)。

中学生が7名、高校生が6名の全24名(男子21名、女子3名)が参加し、街中でよく見かけるトヨタのハイブリッドカー アクアを運転します。

 

午前中は運転教習

加速と減速の教習風景 / ©️Motorz

 

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午前中は運転教習をメインとしており、直進加速とフルブレーキの練習、8の字でハンドルを切る練習、スラロームでハンドルと車幅感覚を養う練習をローテーションで行い、クルマの運転に慣れるところから始まります。

何度も参加しているベテランの参加者は、最初から比較的スムーズなドライビングができており、とても子どもが運転しているとは思えないほど上手なドライバーも!!

また、初めての参加者もインストラクターが丁寧に教えてくれるので、最初はおっかなびっくりでも徐々に上手くなっていくのが見て取れました。

 

午後からはお待ちかねのタイムトライアル

慣熟歩行(コースウォーク)の様子 / ©️Motorz

 

タイムトライアルの前には、慣熟歩行(歩いてコースの下見)が行われ、どういうルートを通るのか、どうすれば安全に走れるのかを確認します。

コース設定としてはDP那須のジムカーナ場をパイロンで区切り、スラロームを主体とした低速コースの中に前向き駐車コーナーを設定。

そこからバックで出ていくような、言わばオートテスト的な要素が盛り込まれています。

また、熟練の参加者を対象としたエキスパートクラスも用意されており、前向き駐車がバック駐車に変更されていたりと、少し難しめのコースも設定されています。

 

タイムトライアルの様子 / ©️Motorz

 

まずは高校生グループからスタート。中学生グループ、小学生グループと続き、スタート時に自分のタイムを申告して、2回の走行でどれだけ申告したタイムに近づけることができるかを目指します。

走行するにあたり、安全に配慮してインストラクターが同乗。

水先案内人のようにドライバーを安全にゴールへ導きます。

心配そうに親御さんが見守る中、走り終わった子どもたちのイキイキとした笑顔がとても印象的で、誰に話を聞いても「運転が楽しい!」との感想を話してくれました。

 

参加者インタビュー

高校生:シンタロウ君(高校2年生)

 

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今回で10回目くらいの参加ですが、ちょっと申告タイムより早くゴールしてしまいました。運転が楽しいのでかなりのリピーターです。

次回はもっと時間を合わせられるように走行したいですね!

 

中学生:ユウジ君(中学2年生)

 

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今回で3回目の参加です。新幹線で京都から来ました。インターネットで調べて140ATがあるのを知り、参加したいと両親に伝え、伯母さんに連れて来てもらいました。
クルマの運転は楽しいし、もっと上手くなりたい。
前回はあまり時間通りに走れなかったので、今回は時間通りに走れてよかったです。ただシフトチェンジでバックギヤに入れるところをニュートラルに入れてしまったので、次回はそういったミスを修正してもっと上手く走れるようになりたいです。

 

小学生:タイチ君(小学2年生)

 

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今回で2回目の参加です。クルマの運転は思ってたよりも簡単。あまり時間通りには走れなかったけど、慣れて来て前より速く走れるようになりました。
次回はインストラクターさんの助手席体験(タイムが正確だとインストラクターの助手席同乗走行ができる)をしたいので、もっと正確なタイムで走りたいです。

 

関係者インタビュー

トヨタカローラ栃木 喜谷社長・関口専務

 

©️Motorz

 

2017年からトヨタカローラ栃木の冠で、140ATを開催しています。

普段はカローラ栃木のスタッフが多くいるのですが、今回はツインリンクもてぎでの86/BRZレース参戦とトヨタカローラ黒磯店のオープンイベントと重なり、少ない人数での開催となりました。

 

少子高齢化で若者の車離れと言われていますが、小さい頃は男の子も女の子もクルマ好きな子は多いんです。でもある日、ゲームやスマホなど他の趣味に行かれてしまう。そうなるときにクルマに興味を持ってもらえるよう大人である我々が努力をすれば、車離れにならないんじゃないかと考えています。

トヨタとしても原体験プログラム2012年よりを始めており、小学校に行って1回2時間の授業を1日に2セット、クルマに関する授業を担当させていただいたりしています。

 

そんな中、DP那須の坂本社長よりお声がけ頂き、小さいうちからクルマに興味を持ってもらえれば、将来のお客様として見込めるのではないか、というところから一緒に始めさせて頂きました。

トヨタカローラ栃木としてはアクアを提供させて頂き、近い将来購入するであろうクルマの一つとして、参加者の子ども達には知ってもらいたいと考えています。

トヨタカローラ栃木 公式Webページ:https://www.corolla-tochigi.co.jp/

 

全日本ジムカーナ選手権ドライバー 西野洋平選手

 

西野洋平選手 / ©️Motorz

 

自分がインストラクターとして参加するきっかけとなったのは、DP那須の坂本社長が子どもにも車を乗せてあげたいと言うところに賛同した事です。

 

中でも印象的だったのが「ゴルフクラブを子どもの頃に持てばプロゴルファーを目指し、ラケットを持てばプロテニスプレイヤーを目指すでしょ。でもクルマはなかなかそう言う機会がない。レーサーとかプロを目指すわけじゃないけど、子ども達にハンドルを握ってもらってクルマ好きを増やしたい。」という言葉で、それに共感してインストラクターをやっています。

 

わりと子どもの感性に任せて運転させていますよ。

良いところもあるし悪いところもありますが、かと言っていきなり始めたばかりの子ども達にハンドルの回し方をいちいち教えることはしていません。楽しむというところは自由にやらせています。

慣れて来たら、「一定の速度で切ってね。」「ちゃんと手を添えてハンドルを戻してね。」とか上手くなるためのアドバイスをしたり。

 

もちろん「クルマを運転する以上は、パイロンにぶつかったりするよ。」「クルマの運転は楽しいけど一歩間違えたら危ない機械なんだよ。」という安全に関する部分は必ず教えています。

 

DP那須 坂本社長

 

坂本社長 / ©️Motorz

 

元々のきっかけは免許を持たない息子に、DP那須でドライビングを教えたことがきっかけです。

多分クルマに乗りたい子はいっぱいいるが、日本の免許制度では18歳にならないと乗れない。でもDP那須にはクローズドの環境が揃っているので安全性は確保されている。なので最初は開催する上でのインストラクターを集めました。

子どもを一般のクルマに乗せるにあたり、色々と調べてみると身長が140cm以上必要ということが分かりました。教習所の入所制限が身長140cm以上だったのです。

 

そこから『140AT』は身長140cmのアカデミートライアルということで名付けました。

最初は自費でスバルR2を購入して行なっていましたが、ウチの子も含めて参加者5人でしたが、やってみたら大反響。

2017年からはトヨタカローラ栃木さんの協賛を得られるようになりました。

みんなで盛り上げてwin-winになれば良いと思うんですよ。何より参加している子ども達が喜んでるでしょ?できないことをやっているから。でもそれに対して誰も悪いっていう人がいない。

 

ただ事故だけには気をつけています。主催者側としてはもちろんですが子ども達にも「鬼ごっこしないでね。」「事故が起きたら二度とできないよ。」と交通安全啓蒙とマナーアップも兼ねて事故が無いよう配慮しています。

今後は参加していた子ども達が免許を取る年になっていきます。そうしたらOB・OGのインストラクターとしてまた次の世代を教えていって欲しいですね!

ドライビングパレット那須 公式Webページ:http://www.dp-nasu.com/

 

まとめ

 

集合写真 / ©️Motorz

 

子どもたちが普通の乗用車を運転するモータースポーツ、140AT。

カートやポケバイと違い、運転するのが我々大人が公道で乗っているのと同じ乗用車。

大人でも運転が難しいと感じる人が多い中、免許を持たない小中学生や高校生が運転するという、前代未聞の試みです。

そして実際に取材してみて感じたのは、何より「クルマの運転が楽しい。」という原点を子どもたちが体験してくれているということ。

移動手段として認識されがちな昨今のクルマ事情ですが、クルマから降りて来て、お父さんやお母さんと話をする子どもたちの嬉しそうな笑顔がとても印象的でした。

次回は2018年最後の開催となる11月11日(日)です。

気になる方は是非、ご家族と相談して参加してみてはいかがでしょうか。

 

140AT 公式Webページ:http://www.dp-nasu.com/140AT/index.htm

 

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