2016年10月23日、富山県のジムカーナ会場「イオックスアローザ」に集結したのはどれも2輪駆動ばかりの古いマシン。一見ノーマル風の改造車や、ナンバーを切って積載車で運ばれてきたオーバーフェンダーも猛々しいフルチューン車の小さな群れ。日本全国で永い眠りについている、多くの同胞の目を覚ますべく立ち上がった…その名も「箱D選手権」とは?!
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「運転する楽しさとカッコ良さの追求」それが箱D選手権
“アングルや飛距離を競いたいのならドリフトをすればいい、タイムを追い求めるのならタイムトライアル競技をすればイイ。箱D選手権が追求するのは運転する楽しさとカッコ良さです。”(引用:https://www.facebook.com/hakoDchampionship/)
これが全日本ジムカーナ・ナンバー無し改造車両のSCクラスにAE86カローラレビンで参戦中の山梨俊二選手が提唱した「箱D選手権」のコンセプトです。
「アクセルを踏んで曲がるコーナリング」を楽しむため、コース設定も極力サイドターン(サイドブレーキを使ったスピンタ-ン)を使わず、それでいてアクロバティックな走りをする昔のマシンが確かにカッコイイ!
基本的にはジムカーナながらも、改造規制の多いマシンでライン取りがとにかく重要な現代のジムカーナとは異なり、走る姿からはノビノビとした躍動感が感じられます。
これは単に「旧車のジムカーナ」というだけではありません。
それを実現するため考え抜かれた車両規則や、参戦マシンをご紹介しましょう。
車両規則はいたってシンプル!
箱D選手権の車両規則は、JAFスピード車両規定のSC車両、つまり全日本ジムカーナのナンバー無し競技車両クラスに近いものがありますが、イベントのコンセプトに合わせたオリジナルになっています。
車両規則
・1989年までに生産終了の車両
・1989年までに生産終了されたエンジン
・過給機(ターボやスーパーチャージャー)後付け禁止
・排気量変更はOK
・フロントエンジンからリアミッドシップなど、エンジン搭載位置の変更不可
・駆動方式は2輪駆動限定で、FFからFRなど駆動方式変更不可
・ロールケージと4点式以上のシートベルト装着が望ましい
・サイドビーム(ドア内部の補強材)など補強があれば軽量化のためのドアFRP化などは可能
・タイヤはスリック、Sタイヤ、ストリートラジアルから選択可能
・タイヤウォーマー使用可
・ナンバー無し車両や仮ナンバー車は積載車で搬入し、仮ナンバーによる自走来場不可
エンジンも重要なポイント
何といっても「1989年までに生産終了した車」ということで、どれだけ新しくとも27年前。
実際にエントリーした中ではトヨタAW11型MR2がもっとも新しいマシンだったことからも、旧車ジムカーナ的な印象は受けます。
ただし注意点として「エンジンも1989年までに生産終了していなければいけない」ということで、AW11でもスーパーチャージャーつきの4A-GZEは使用不可。
同様にホンダ CR-Xも1,600ccDOHCのZC/B16Aともに使用不可など、「1990年代以降を持ち込まない」という意味で徹底したレギュレーションなのですね。
そうなると参戦できる車が限られてしまいますが、代わりに「1989年までに生産終了していれば、何のエンジンを載せても良い」ということになっており、たとえばトヨタKP61型スターレットにマツダの12Aロータリーエンジンを搭載しても良いことになっています。
ただし、4A-Gでも1990年代に登場した5バルブエンジンへ載せ換えた車が参戦していたり、厳密には主催者に可否を問い合わせた方がいいのかもしれません。
また、ターボ車やスーパーチャージャー車はほとんど参戦できず、12Aロータリーターボを搭載したマツダSA22C型RX-7や、BMW2002ターボ、ポルシェ930ターボ、三菱A175ランサーターボなど非常に限られています。
タイヤウォーマーOKで抜群のグリップ!
JAF公認ジムカーナの改造車クラス、SC車両/D車両では2014年からタイヤウォーマー使用不可となっていますが、箱D選手権ではOKになっています。
スリックタイヤでもウォームアップで抜群のグリップを発揮させることで、後輪駆動車ではタイトコーナー立ち上がりでイン側フロントタイヤが浮くほどのトラクション!
これによりアンダーステアからオーバーステアに変わる瞬間の「リアステア効果」を出し、サイドターン無しでもクルクルと回るような走りができるというわけです。
長年改造車でジムカーナを戦ってきた山梨選手ならではのルールかもしれませんね。
まだ少ないながらも多彩な参加車両!
箱D選手権は2016年春に開催が決まり、10月に第1戦が行われたばかりとあって、参戦車両はまだ多くはありません。
呼びかけに応じるため、眠りから覚めなければならないマシンが、まだ日本中に数多く眠っていると思います。
それでも、第1回箱D選手権の多彩な顔ぶれから、2017年以降の参戦車両増加に期待してみましょう!
【S-EVO☆沖縄☆DLトレノ】
なんと沖縄から夫婦でダブルエントリー(1台を2人でシェアして参戦)のAE86改スプリンタートレノ。
5バルブ仕様で180馬力にチューンした4A-Gを搭載したほか、日産S15シルビア用の6速ミッションなど内外にかなり手が入っている本気仕様です!
【F ペイント・エナペYSSレビン】
一見するとノーマルのAE86カローラレビンGT-APEXですが、なんと中身は20年前に参戦していたジムカーナC車両(ナンバー無し改造車)を移植してある「羊の皮を被った狼仕様」。
改造車の多くがナンバー有無に関わらずオーバーフェンダーでワイド化されている中、ノーマルチックな見かけのナンバーつき車両でどこまで食い込めるかですね。
【乱人ディレクト中山暫定レビン☆】
AE86で3連発目ですが、これも5バルブ仕様4A-G、ただしキャブです!
昔、4A-GのFCRキャブチューンとか流行りましたよね。
【B110サニー】
1980年代のモータースポーツ雑誌を見ているとFR時代のサニーも常連で、名車B110からB210サニーエクセレント、B310サニーまで改造車が長らく現役だったものです。
このB110もその生き残りのようで、往年の全日本ドライバー2人がタッグを組んでのダブルエントリーだったとか。
現在もヒストリックカージムカーナなど現役で、ケータハム スーパーセブンも破って優勝したこともある実力派です。
【リコーセイフォルテックランサー】
こちらジムカーナ車ではなく現役ラリー車で、旧車ラリーイベントで目にする機会が多いマシンとのこと。
海外仕様の2,000ccターボにスタリオン用ミッションを組み合わせ、フル補強ボディに三菱ワークスカラーが映えますね!
【浅間レーシングKP61】
保守的なトヨタがFF車をなかなか作らなかった時代、コンパクトな入門FRマシンとして長らく高い人気を集めたのがKP61型スターレットです。
4A-Gへのスワップチューンも流行りましたが、このマシンは1,290ccの4Kエンジンを1,430ccまで拡大したほか、さまざまなスペシャルパーツが組み込まれたフルチューン4K搭載!
浅間ヒルクライムにも登場したので、見たことがある人も多いと思います。
まとめ
他にもAW11型MR2やKP61など何台か参戦したようで、ほとんどがダブルエントリーで楽しく走ったという「第1回箱D選手権」。
エントリーリストやリザルトの公式発表はありませんが、コンセプトの提唱者でありホストドライバーとして参戦した全日本ジムカーナドライバーの山梨選手はこう語っています。
「タイムはあくまで結果でしかない。それ以上に真剣に走った楽しさを感じてもらえたのがうれしいね」
ドライバーもメカニックも観客もオフィシャル(スタッフ)まで、見る人も走る人も全てが笑顔で楽しめる競技。
現在のように電子制御の無い時代に作られたマシンによる走り、あなたも見に行ってみませんか?
2017年も箱D選手権は開催されるほか、全日本ジムカーナの会場で走ることもあるようですよ!
箱D選手権
開催事務局:TK product
公式ホームページ:http://katotaku7.wixsite.com/hako-d
公式Facebookページ:https://www.facebook.com/hakoDchampionship/
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