1980年代半ばに始まって急加熱。各メーカーから類似車種が多数登場したものの1990年代半ばにはパタりと止まり、以降2度と誰も顧みなくなった4ドアハードトップブーム。まさに幻のような大ブームでしたが、その終盤に現れて瞬間的な人気を誇り瞬く間に忘れ去られて中古車の流通すら無い典型例が、スプリンターマリノでした。

 

トヨタ スプリンターマリノ / 出典:https://www.favcars.com/toyota-sprinter-marino-ae100-1992-98-pictures-187644-800×600.htm

 

4ドアハードトップブーム最後のヒット作

 

トヨタ スプリンターマリノ / 出典:https://www.favcars.com/toyota-sprinter-marino-ae100-1992-98-photos-187647-800×600.htm

 

1992年5月にバブル景気がガラガラと崩壊していきながらも、「まだ何とかなるかもしれない。」と楽観的な雰囲気もあった時期に登場したのが、スプリンターマリノでした。

それまで人気を誇っていた居住性はやや犠牲にしつつも、ルーフが低く引き締まったキャビンで伸びやかなデザインを持つ4ドアハードトップをカローラ系にも適用した、カローラセレスとの同時デビューです。

そして平松愛理の『マイセレナーデ』をCMソングに起用したセレスのオシャレなCMに対し、出演・CMソングともに藤井フミヤを起用したマリノはクールでサワヤカなイメージと使い分けられ、マリノの方が当時はスポーティな印象でした。

 

トヨタ スプリンターマリノ /  出典:https://www.favcars.com/images-toyota-sprinter-marino-ae100-1992-98-187645-800×600.htm

 

エンジンはカローラ系らしくスポーツエンジンの20バルブ仕様である4A-G(タイプG)、同じ1.6リッター4A系でもハイメカツインカムの4A-FE(タイプX)、そして1.3リッターではなく1.5リッターハイメカツインカムの5A-FE(タイプF)が廉価版というラインナップ。

5A-FEですら105馬力と現在の基準で考えれば十分な動力性能を持ち、パワステも軽いマリノは女性でも軽快に走れるスポーティな4ドア車で、しかも当時人気の藤井フミヤをCMに起用した事により大人気となりました。

しかしデビューから3年もすると時代はSUVやステーションワゴン、ミニバン、トールワゴンといった『使い勝手やスペース効率に優れた車たち』の天下となり、4ドアハードトップなど誰も見向きもしなくなります。

そのため4ドアハードトップ車の中でもひときわ小さく居住性に劣るマリノも当然不人気車に転落。

中古車市場でも不人気なので、人気車種へ乗り換えに来たユーザーの下取り車がマリノやセレスだと処分に困ったディーラーが頭を抱えるという現象すら起きました。

その結果、2018年11月現在では大手中古車情報サイトにスプリンターマリノなど皆無、車種名一覧にすら掲載されないという、半ば忘れ去られた車となっています。

 

5人は少々キツイが、4人なら当時の水準では不満も無かった居住性

 

トヨタ スプリンターマリノ / 出典:https://www.favcars.com/images-toyota-sprinter-marino-ae100-1992-98-193775-800×600.htm

 

当時マリノもセレスも「とにかく狭かった」という形で紹介されがちでしたが、実は実家でスプリンターマリノ(タイプX)を所有しており、自身でステアリングを握ることも多かった筆者の感想は少々異なります。

確かに定員5名の車として考えれば後席中央の居心地はあまり良いとは言えず、後席足元のスペースも実用に支障の無い最小限。

天井が低いのでヘッドスペースも広いとは言えませんでしたが、当時の4ドア車は多少の差はあれそんなものでした。

確かにもっと後の時代の車や、当時でもスペース効率に優れた車ならもっと広々としていましたが、狭い車に慣れているとかえって落ち着かなかったものです。

 

トヨタ スプリンターマリノ/ 出典:https://www.favcars.com/images-toyota-sprinter-marino-ae100-1992-98-187648-800×600.htm

 

むしろ、スプリンタートレノ譲りの軽快なフットワークを4ドア車で実現していたという意味では、後席への乗降性を確保した上で走りも良いのでトレノよりはるかに実用性は高く、家庭の事情で2ドアクーペに乗れないユーザーにとっては理想のひとつでした。

もっとも、1990年代後半になるとスポーツカーそのものが不人気になっていたので、『使い勝手のいい4ドアスポーツカー』そのものの需要が消滅していたのが残念で、いわば登場時期が遅きに失した感があります。

唯一明らかに難があったのが目玉装備のひとつ、メーカーオプション『エクストラパッケージ』に設定されていた『マルチインフォメーションディスプレイ』で、小型液晶パネルを使ったOKモニター(警告灯)のテキスト版。

文字数はわずかとはいえ、何が起きたか教えてくれるという意味では便利な装備でしたが、バッテリー液不足の警告表示を出すためにはセンサーを差し込める専用バッテリーが必要で、汎用バッテリーに対応しない融通の利かなさだけには少し困りました。

カローラクラスの車でも「インフォメーションディスプレイのために専用バッテリーを買いなさい。」というあたりが、バブル時代を感じさせる名残だったのかもしれません。

 

JTCC初期にセレスともども参戦

 

1994年に松永 雅博が、1995年第1ラウンドのみ金石 勝智がドライブしたウェッズスポーツマリノ 出典:https://www.drive2.ru/l/5064662/

 

デビュー当初は特にモータースポーツで活躍する舞台も無かったマリノですが、グループAレースのJTC(全日本ツーリングカー選手権)が4ドア車で戦われる新たなツーリングカーレース『JTCC』(これも全日本ツーリングカー選手権)になると、セレスと共に参戦します。

それが1994年に松永 雅博がステアリングを握った『ウェッズスポーツマリノ』で、同年の成績は8月6日のTI第1ヒートと同20日の筑波第2ヒートで9位に入ったのが最高位。

上位入賞マシンがコロナやサニー、シビックフェリオ、BMW318iといった陣容でマリノでもチャンスのあった時期でしたが、翌1995年からコロナExivなど気合の入ったマシンが出てくると、太刀打ちは困難となります。

結局、松永は1994年限り、『ウェッズスポーツマリノ』自体もコロナExiv(ウェッズスポーツエクシヴ)が間に合わなかった金石 勝智が第1ランド3月11日の富士でドライブしたのみと、わずか1年少々でマリノのJTCC参戦は終わりました。

 

主なスペックと中古車相場

トヨタ スプリンターマリノ / 出典:https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/vehicle_lineage/car/id60009561/

 

トヨタ AE101 スプリンターマリノ Gタイプ 1992年式

全長×全幅×全高(mm):4,385×1,695×1,310

ホイールベース(mm):2,465

車両重量(kg):1,100

エンジン仕様・型式:4A-GE 水冷直列4気筒DOHC20バルブ

総排気量(cc):1,587

最高出力:118kw(160ps)/7,400rpm

最大トルク:162N・m(16.5kgm)/5,200rpm

トランスミッション:5MT

駆動方式:FF

中古車相場:皆無

 

まとめ

 

トヨタ スプリンターマリノ Photo by RL GNZLZ

 

実際にドライブすれば決して悪い車では無かったどころか、4ドアハードトップ全盛期に登場していれば名車とすら呼ばれていたかもしれないスプリンターマリノ。

しかし時代の流れはあまりにも残酷で、登場わずか数年で自動車に対する価値観が180度変わってしまい、すっかり不要なお荷物扱いとなってしまいます。

いくら居住性が低いといってもホンダ CR-Xのように後席に乗るのが苦行というわけでも無く、普通に乗れて乗降性も当時の基準ではそう悪くはありません。

しかし、「乗ってみればそう悪い車じゃないんだよ!」と言いたくとも、中古車市場での流通ほぼ皆無なため、証明しようの無いのが残念です。

 

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