ホンダ シビックには2代目以降4ドアノッチバックセダンがラインナップされていますが、5代目から7代目までの一時期のみ『シビックフェリオ』を名乗っていました。そのうち歴代シビックセダンで初めてDOHC VTECエンジンを搭載し、JTCC(全日本ツーリングカー選手権)にも出場していたのが、5代目EG系の初代シビックフェリオです。
CONTENTS
5代目スポーツシビックの4ドアセダン版は『フェリオ」を名乗ったスポーツセダン
ホンダは主力車種『シビック』に2代目(スーパーシビック)から延長されたリアオーバーハングへ独立トランクを持つ4ドアノッチバックセダンをラインナップ、ハッチバックではなく独立トランク式だった2BOXノッチレス2/4ドアセダンを廃止しました。
以後、4代目(グランドシビック)まで3/5ドアハッチバック、4ドアノッチバックセダン、5ドアライトバン/ステーションワゴンというラインナップで代を重ねましたが、5代目『スポーツ』では世界戦略車として通用する新たなベーシックモデルを登場させるべく大転換を図ります。
5ドアバン/ステーションワゴンは4代目EF系『グランドシビック』をオルティア/初代パートナー(1996年発売)まで継続生産する一方、ハッチバック車は5ドアを廃止して3ドア車のみとなり、前後ドアを持つファミリーカー向けモデルは4ドアセダンに統一されました。
また、日本向け4ドアセダンはこのタイミングで初代『シビックフェリオ』(以下『フェリオ』)を名乗るようになり、スポーツ志向の強い3ドアハッチバック版シビックと一線を画した、ファミリーセダンとして熟成を図ったのです。
とはいえ基本デザイン、特にフロント部はハッチバック版と共通で、『スポーツシビック』の流れを汲むスポーツセダンなのは明らかでした。
最強のDOHC VTECを4ドアシビックで初搭載!
シビックの4ドアセダンとしては3代目(ワンダーシビック)および4代目で1.6リッターDOHC16バルブエンジン『ZC』を搭載した『Si』グレードも設定されていましたが、4代目ハッチバック版に搭載された画期的なDOHC VTEC『B16A』は搭載されませんでした。
そして初代フェリオには、5代目シビックへのモデルチェンジ時に160馬力から170馬力までパワーアップされたB16Aをシビック同様に搭載。
グレード名も同じ『SiR』で、ハイパフォーマンス版がシビックとフェリオ双方に設定されたのは3代目以来です。
いわばイメージリーダー的存在であり、ファミリーカーでスポーツ走行も楽しみたいユーザーにとってはカローラ/スプリンターGTなどのライバルに加えて、ホンダ車にも選択肢ができて、喜ばしい限り。
ただしファミリカーらしい要素として、スポーツモデルに徹してFF専用だった5代目シビックとは異なり、スタンバイ式の生活4WD(前期ヴィスカスカップリング式/後期デュアルポンプ式)もラインナップ。
1.6リッター車ですが、B16AではなくSOHCまたはDOHC版ZCが搭載されました。
その他エンジンラインナップは基本的に1.5リッターSOHC16バルブの『D15B』と、1.3リッターSOHC16バルブの『D13B』でしたが、D15Bは電子制御インジェクション+高出力型SOHC VTEC版、同省燃費型VTEC-E版、デュアルキャブレター版、シングルキャブレター版と多数存在しています。
グループAレース『JTC』の延長のつもりが…JTCCでは大苦戦!
5代目シビックはグループAレース時代の1993年まで開催されていた、全日本ツーリングカー選手権『JTC』のクラス3で無敵に近い強さを誇っていました。
しかし1994年からJTCは2リッター以下の自然吸気エンジンを搭載した4座以上の4ドア車で戦う新たな全日本ツーリングカー選手権『JTCC』へ移行。
ホンダはJTCの余勢を駆ってJTCCでも絶対の自信を持って、初代フェリオを投入します。
そして公開されたマシンはグループAレースの延長であくまで市販車ベースで作られ、後席スペースはおびただしい数のロールバーで埋め尽くされるなど『ホンダの本気』をうかがわせましたが、いざ走り出すと全くパッとしないどころではなく、大苦戦。
どうもロールバーで剛性を固め過ぎて全く曲がらず、バーの点数を減らしてようやく曲がるようになったなどJTCC向きのマシン作りへの未熟さが目立った上に、トレッド不足にフェンダー容量の限界で太いタイヤを履けないなど、ベース車としての問題点も発覚。
当初予想された「JTCであれだけ勝てたのだから楽勝だろう。」というムードはたちまちしぼみ、BMW318iとトヨタ コロナの優勝争いに加わるどころか時々光るものを見せた日産 サニーやトヨタ カローラなど同クラスのライバルほどの活躍すら見込めません。
結局ホンダはマシン作りから改めると同時にベース車であるフェリオを1995年限りで引っ込め、1996年からアコードをベースに本格レーシングカーを開発。
以後は打って変わって連戦連勝、あまりに強すぎてJTCC自体を衰退させたほどでした。
その後JGTC(現在のSUPER GT)へ転身したホンダの活躍は、初代フェリオで苦戦した反省から生まれたとも言えます。
主なスペックと中古車相場
ホンダ EG9 シビックフェリオ SiR 1995年式
全長×全幅×全高(mm):4,395×1,695×1,375
ホイールベース(mm):2,620
車両重量(kg):1,090
エンジン仕様・型式:B16A 水冷直列4気筒DOHC16バルブ VTEC
総排気量(cc):1,595
最高出力:125kw(170ps)/7,800rpm
最大トルク:157N・m(16.0kgm)/7,300rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:FF
中古車相場:29.9万~248万円
まとめ
初代フェリオは4ドアファミリーセダンとして、ファミリーユースをハッチバック版シビックから完全に受け継ぐ重要な役割を果たしましたが、まだまだコンパクト過ぎたので、次期型EK(ミラクルシビック)以降は大型化していきます。
ちなみにコンパクトでシビックと同じエンジンを積む初代シビックフェリオは、サンデーレーサー達によって走行会やジムカーナの4ドアセダンクラスなどでも活躍しましたが、後に4ドアNAエンジンではシビック最強となるFD2シビックタイプRの登場で、今はやや忘れられつつあるかもしれません。
[amazonjs asin=”B017VTMFHS” locale=”JP” title=”Hi Story 1/43 Honda CIVIC FEリオ Si・II (1996) フロストホワイト 完成品”]
Motorzではメールマガジンを配信しています。
編集部の裏話が聞けたり、最新の自動車パーツ情報が入手できるかも!?
配信を希望する方は、Motorz記事「メールマガジン「MotorzNews」はじめました。」をお読みください!