シビックの欧州仕様と共通点を持つ準兄弟車的な車として、シビックとは別系列のディーラーで販売されていたホンダ ドマーニ。1997年にデビューした2代目はインテグラSJや5代目いすゞ ジェミニとともにEKシビックフェリオと純然たる兄弟車となりましたが、取り扱いディーラーの性格が異なることによるドマーニらしさや、海外版アキュラELという存在もあって、よく見ると意外に奥深い車かもしれません。

 

2代目ホンダ ドマーニ(海外版・初代アキュラEL。カッコイイ!)  / Photo by Grant C

 

どのメーカーでも苦労した多チャンネル体制の産物、2代目ドマーニ登場の背景

 

2代目ホンダ ドマーニ  / 出典:https://www.favcars.com/honda-domani-mb-1997-2000-photos-14755-800×600.htm

 

初代ドマーニは1980年代にホンダと提携関係にあった英ローバーのローバー200/400と準兄弟車、すなわちEFシビックを源流に持つファミリーのヨーロッパ風サルーン『コンチェルト』の後継として1992年に登場します。

それはEGシビックを源流にローバー車との共通点も持つ準兄弟車で、ホンダプリモ店のスポーティな『シビックフェリオ』、ホンダクリオ店のヨーロピアンテイストなファミリーセダン『ドマーニ』、さらにベルノ店の『インテグラセダン』と棲み分けていました。

こうした『ほぼ同クラスだけれども、販売チャンネルの違いでちょっと性格を変えた兄弟車や準兄弟車』というパターンは、かつてはどのメーカーの販売店でも当たり前の話で、既にトヨタですら多チャンネル体制を見直そうとしている現在とは、だいぶ状況が異なっていたのです。

しかしバブル崩壊後に「車が売れない、どうしよう。」という状況に陥ると、もはや各チャンネルごとに似たような車を販売するなど無駄そのもので、各社とも遅かれ早かれ売れ筋を残して車種統合、最後はディーラー統合となるのが世の流れ。

ただ、そこまでには少々時間がかかるも、不経済なため最小限の開発コストしかかけられず、ユーザーから見た場合に少々魅力が劣ると知りつつも、販売店のために似たような車を発売せざるを得ませんでした。

2代目ドマーニが発売された1997年1月はまさにそのど真ん中で、当時のホンダ1.5~1.6リッター級セダンは以下のようなラインナップとなっていました。

【ホンダプリモ店】

EK型シビックフェリオ(1995-2000):1.3~1.6リッター。

スポーツ仕様『Si』もあり。

 

【ホンダベルノ店】

EK型インテグラSJ(1996-2000):1.5リッター。

EKシビックにステーションワゴン『オルティア』のフロントを移植。

 

【ホンダクリオ店】

MB型ドマーニ(1997-2000):1.5~1.6リッター。

EKシビックの前後デザインおよびエンジン違い。

 

最後発の2代目ドマーニ、実はシビックフェリオ高級版『アキュラEL』の日本仕様

 

2代目ホンダ ドマーニ(海外版・初代アキュラEL  / Photo by Grant C

 

型式名を見ればわかるように、2代目ドマーニはインテグラSJとは異なり、EK型ではなく『MB』型で、初代ドマーニ『MA』型の後継であることを明らかにしていました。

実際、フロントのみならずリアもシビックとはデザインが異なり、内装も若干ながら異なったことや、エンジンの違いから単にシビックフェリオをフェイスリフトした廉価版というわけではありません。

これは海外展開していたホンダの高級車ブランド『アキュラ』のカナダ市場向けインテグラ後継車として、EKシビックの高級版アキュラEL(初代)が先行して登場し、日本では2代目ドマーニにデザインを流用した影響があります。

薄型ヘッドライトなどシビックフェリオよりスポーティーなデザインは少々手直しされ、2代目ドマーニとしてデビュー。

ELのフロントグリルなどは、いすゞにOEM供給していたジェミニ(5代目)には、ほぼそのまま流用されました。

その他の違いとしては、シビックフェリオの環境仕様グレードには1.5リッター3ステージVTEC+CVTが搭載されましたが、2代目ドマーニではやや古い1.6リッターVTEC-E+CVTという組み合わせ。

EKシビックフェリオに搭載されたLEV(低公害)仕様1.6リッターエンジンも、2代目ドマーニに一時期搭載されましたが、メカニズム的には常にドマーニの方が遅れてていて若干型落ちが採用されています。

つまり2代目ドマーニとは、スポーティなエンジンや先進の環境性能より、アキュラELの外装と木目調インテリアなどの内装で上質感を求めた、経済性の高いコンパクトセダンであることを重視していたのです。

 

主なスペックと中古車相場

 

2代目ホンダ ドマーニ  / © TOYOTA MOTOR CORPORATION.All Rights Reserved.

 

ホンダ MB4 ドマーニ 16X 1997年式

全長×全幅×全高(mm):4,480×1,695×1,390

ホイールベース(mm):2,620

車両重量(kg):1,100

エンジン仕様・型式:D16A 水冷直列4気筒SOHC16バルブ VTEC-E

総排気量(cc):1,590

最高出力:88kw(120ps)/6,500rpm

最大トルク:144N・m(14.7kgm)/5,000rpm

トランスミッション:CVT

駆動方式:FF

中古車相場:皆無

 

まとめ

 

2代目ホンダ ドマーニ  / 出典:https://www.favcars.com/photos-honda-domani-mb-1997-2000-14757-1024×768.htm

 

ホンダとしては全チャンネル販売車種統一以前は、ホンダクリオ店で販売する小型4ドアセダンとして2代目ドマーニは必要な車種と考えていたようですが、販売台数は低迷し存在感も希薄となっていたのは明らかでした。

その当時、ある自動車雑誌の企画で『販売台数の少ない車をいつまで作るのか』という趣旨の突撃電話取材が試みられています。

ホンダに電話をかけ「ドマーニなんて売れてないのにいつまで作るんですか?」と直球で質問したところ、電話口の向こうは大激怒。

最後は「バカヤロー!」で切れたのが印象的でしたが、いかなる車にもメーカーの現場には熱く込められた思いがあるものです。

確かにホンダの販売車種統一(2006年3月)を待たず、2000年にはシビックフェリオのモデルチェンジとともに販売を終了。

そのままモデルチェンジもせずに廃止されてしまいましたが。

2代目ドマーニは販売台数はともあれ、シビックフェリオよりも高級なアキュラELの日本版として、少なからぬ情熱をもって作られ、販売された車なのです。

今や中古車市場からもほぼ絶滅してしまいまいたが、現在でも2代目ドマーニに乗っている人は、「シビックフェリオ?いやいやコイツはアキュラELの日本版だよ?」と、誇りを持っている方がほとんどです。

 

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