2016年のスーパーフォーミュラ第3戦決勝が終わった翌日。富士スピードウェイでメーカーテストが開催。全車が参加し、ヨコハマタイヤが第4戦もてぎ限定用として用意した新スペック「ソフトタイヤ」のテストが行われたのだ。今回は、ソフトタイヤ導入の経緯から、実際にテストを取材して感じたことをレポートしていきたいと思う。

Photo by Tomohiro Yoshita

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そもそも、ソフトタイヤ導入の経緯は?

Photo by Tomohiro Yoshita

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ヨコハマタイヤがオフィシャルサプライヤーとして新規参入が発表されたのは2015年10月下旬。

開発期間はわずか1年弱という短期間の中で国内トップフォーミュラ用のタイヤを用意したが、それでも開幕戦の鈴鹿ではトラブルもなく予選・決勝と全車の足元を支えた。

ちょうど全車がテストを開始した2015年11月あたりから、将来的にはF1のように複数コンパウントを導入していけるようにしたいという話はレースを統括する日本レースプロモーション(JRP)側から少しずつ聞こえ始めていた。

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そして、今年の第4戦もてぎで新たな試みとして2スペック目のタイヤを導入することが第2戦岡山で明かされた。

そこからさらに開発・テストを重ねて、第3戦の翌日に全チーム・ドライバーにテストをしてもらう機会を設けたのだ。

現在のスーパーフォーミュラは非常にレベルが高く、また各車の差も接近していることから、

異なるスペックのタイヤを使い分けなければいけないというフォーマットにすることで、ペースの違いや戦略の違いが生まれ、順位変動もあるレース展開が見込まれている。

 

現状わかっている第4戦もてぎでのタイヤルールとは?

左がソフト(新スペック)、右がミディアム(従来スペック)Photo by Tomohiro Yoshita

左がソフト(新スペック)、右がミディアム(従来スペック)Photo by Tomohiro Yoshita

まだ調整中のところもあるが、現状JRP側から発表されているルールは以下のとおり。

2種類のタイヤの呼称

開幕戦から導入されている従来スペック…「ミディアムタイヤ」

第4戦もてぎ限定導入される新スペック…「ソフトタイヤ」

外観から見分けがつくように、ソフトタイヤのサイドウォールには赤い帯状の印が入れられている。

使用可能セット数

続いて、レースウィークで使えるタイヤのセット数。その内訳はこちら。

新品のミディアム…2セット

新品のソフト…2セット

前回の持ち越し中古タイヤ…2セット

合計:6セット

なお決勝では両コンパウンドとも最低1回ずつは使用しなければならない。

 

気になるパフォーマンス差は?

JP・デ・オリベイラ(ミディアム装着時)Photo by Tomohiro Yoshita

JP・デ・オリベイラ(ミディアム装着時)/Photo by Tomohiro Yoshita

実際にテストを見ての感想は、ミディアムとソフトのラップタイム差は約1~1.5秒程度。ドライバーたちの話を聞いても「約1秒」という答えがほとんどだ。

このテストでトップタイムを記録したジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)は「ソフトタイヤはグリップ力が高いね。コーナーでもブレーキングでも良い性能を発揮してくれる。ただグリップ力が高いんだけど、それ以外の部分は(ミディアムと比べて)特に変わらないという印象かな。みんなが思っている以上に良いタイヤだよ」とコメント。

他のドライバーの印象を聞いても、グルップ力が上がってタイム向上につながっているのだが、それ以外のバランス面や耐久面についてはミディアムと比べて大差はない模様だ。

山本尚貴(ソフト装着時)Photo by Tomohiro Yoshita

山本尚貴(ソフト装着時)/Photo by Tomohiro Yoshita

そして気になるのはレース中のオーバーテイクの機会が増えるのかという点。

ツインリンクもてぎはコースレイアウトの特性上、追い抜きの機会がなかなか見られないことが多かったが、今回は2スペック制になるということで、レース展開も変わってくる可能性もある。

この辺についてランキング首位の山本尚貴(TEAM無限)は「通常のレースをみていても1秒違うだけで追い抜くのはなかなか難しいんですけど、タイヤのグリップレベルで1秒違うのは、今まで経験がないので、そう考えると追い抜きは多少なりとも今までよりかはしやすいかなと思います」とのこと。

実際にどうなるかは、今年は見どころの多いもてぎ戦になりそうだ。

 

予選のタイヤ選択も見どころ?

Photo by Tomohiro Yoshita

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セット数に関しては基本的に統一規則通りとなっているが、今回に関してはソフトとミディアムで2セットずつになるということ。

これだけを聞くと、特に違和感はないかもしれないが、チームとしてはかなり悩みどころなのだ。

基本的に新品タイヤの投入時期は予選。Q1、Q2、Q3とあるので、各ラウンドで1セットずつの計3セット。

残る1セットはフリー走行で予選シミュレーション用で使うか、予選Q1の1回目のアタックで使うか。という流れになっている。

もちろん、ソフトタイヤの方がラップタイムが早いため予選では絶対使いたいところ。しかし3ラウンドあるのにも関わらず2セットしかない。

つまり新品にこだわるのであれば、どっか1ラウンドはミディアムを使用しなければならないのだ。では、それをどこで使うのか?

各ドライバーの意見を聞くと「Q1からソフトタイヤで勝負しないとノックアウトされる」という意見が大半だった。

基本的にQ2への通過ラインは平均して0.7秒~1秒。ミディアムを履くだけで1秒遅くなることを考えると、Q1落ちのリスクが増えてしまうため、最初の2ラウンドはソフトタイヤという選択肢が有力のようだ。

しかし、最終Q3も軽視できない。予選ポールポジションにはボーナスで1ポイント追加されることになっているからだ。

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実は第3戦を終えてランキング上位は接戦となっており、全19人のうち上位12人が10ポイント以内にひしめいている状況。

なかには「もてぎが第2の開幕」と表現する声もあるほどの横一線となっているのが今年のチャンピオンシップの特徴なのだ。

そう考えると、ポールポジションボーナスの1ポイントも取りこぼすことができない。

また、タイヤのルールが変わるとはいえ、もてぎで順位を上げていくチャンスが限られているサーキットだ。

Q3の中でもできできる限り前方からスタートしたいというのが、各チーム・ドライバーの本音だろう。

となれば、やはりソフトタイヤを温存しておきたいところ。

Q1、Q2のどちらかをミディアムで突破することができれば可能な作戦だが、それを実現するのも現状の勢力図を考えると難しい状況。

果たして、どの戦略が一番適しているのか?これから約1ヶ月、各チームは頭を悩ませることだろう。

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ここまでは、導入の経緯や第4戦のルール、見どころに関して、すでに明らかになっている情報を中心にまとめてきたが、実際テストをしてみて「ぶっちゃけ、どうだったのか?次のページで紹介していこうと思う。