1984年から1996年まで開催され、高い人気を誇ったツーリングカーレースであるドイツツーリングカー選手権(DTM)。1993年の規定変更により大幅な改造が許されるようになるまでは、グループA規定に沿った市販車ベースの改造だけで行われていました。規定をクリアするためには、500台の市販車を作ることが必須。そのレギュレーションをクリアするためだけに生産されたメルセデスは、迫力満点の特別なツーリングカーとなっています。
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全ては勝つために。ライバルとの熾烈な争い
ドイツツーリングカー選手権(DTM)は、ドイツ最高峰のツーリングカーレースとして行われていましたが、参戦車両、チームはドイツ以外の多国籍で争われていました。
1984年の初戦ではBMW635CSiが優勝したものの、翌年の1985年はスウェーデンのボルボ240ターボが、次の1986年はイギリス、ローバーのVitteseが優勝するなど、正に群雄割拠。
1986年から参戦を開始したメルセデスは、1987年に参戦と同時に優勝を飾ったBMW M3の活躍に苦戦を強いられます。
そこで1989年、空力を見直してグループA規定に則った最初のホモロゲーションモデルであるエボリューションを投入するも、今度はアウディ クワトロの出現により思うような戦績を残すことが出来ません。
1年後の1990年、更なる戦闘力アップを図って投入されたエボリューションIIが狙うのは、優勝の二文字だけでした。
空力効率を意識したド迫力のエクステリア
この年代のメルセデスらしい直線基調のボディシルエットと角型のグリル&ヘッドライトはそのままですが、何よりもインパクトが大きいのが巨大なリアウイングで、重量増を防ぐためにアルミ合金製となっており、ダウンフォースを稼ぎます。
他にも、ボディから大きく張り出したオーバーフェンダーや、フロントバンパーに追加されたリップスポイラー等、迫力満点のエクステリアデザインは今見ても強烈な存在感を放ちます。
レーシングチューンが施された特別なエンジン
2.5リッター直列4気筒16バルブエンジンは、専用にチューンが行われた特別仕様となっています。
カムシャフトやバルブ、ピストンといった部品は専用品となっており、クランクシャフトに至るまでもカウンターウェイト削減の為の軽量化が施されるなど、全体的に高回転化を狙った設計となっています。
実際のレース車両は375馬力以上を発揮したとされており、ベースエンジンとしての実力は折り紙付きでした。
メルセデスらしい質感高さが光るインテリア
インテリアは、レース参戦のための車とは思えないほどの快適装備が備えられており、質感の高さに加えてパワーウィンドウやエアコン、エアバッグ等の安全装置に至るまで、日常の4人乗りセダンとしての使用に耐えうる仕様となっています。
決してホモロゲーション車両だからといって、内装の質感に手を抜かないところがメルセデスたる所以です。
悲願の優勝&連覇達成
このエボリューションIIの導入により、メルセデスは1991年·1992年と連続でマニュファクチャーズタイトルを獲得します。
当時のDTMは元F1ドライバーらが参戦する程のハイレベルなレースとなっていて、観客数も多い注目度の高いレースの一つでした。
2連覇によるメルセデスのモータースポーツシーンにおけるイメージアップは相当なものだったと思われ、事実、今でもこのエボリューションIIはコアなメルセデスファンからの人気は抜群です。
まとめ
総生産台数総500台のうち、日本に輸入されたのは50台。
当時の新車価格はおよそ1000万程度で、現在中古車として売りに出ているものは、タマ数が極端に少ない事もあり、ASK価格及び2000万円以上もざらなほど高騰しています。
同モデルはDTMというレースがなければ存在しなかったクルマであり、80~90年代の空気を色濃く映した、4ドアメルセデスの中では最も異色を放つ魅力的な1台と言えるでしょう。
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