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断続的に様々な世界選手権に参戦してきたプジョーのワークスチーム『プジョースポール』。2011年のル・マン24時間を最後に、ワークス活動を休止していた眠れる獅子が遂に、来季目覚めます。

Photo by cmonville
2022年ル・マン24時間にプジョーが復帰
Proud to announce our participation in the world’s premier endurance racing championship WEC from 2022 with a Hybrid Power Hypercar. Stay tuned, more to come at the beginning of 2020! @peugeotsport pic.twitter.com/u3KqDkKA0G
— Peugeot (@Peugeot) November 13, 2019
2019年11月13日、突如Twitterで発表されたプジョーのル・マン24時間および世界耐久選手権(WEC)への復帰。
かつては耐久の雄として名を馳せ、ル・マン24時間の開催地でもある地元フランス企業として、高い人気を誇るプジョーのWECへの復帰は、大きなニュースとして世界中を駆け巡りました。
ワークスチームの参入を目的に生まれたハイパーカー規定が、まさに成功したと言えるでしょう。
今回は、そんなハイパーカー規定についてのおさらいと、プジョーのル・マン24時間への挑戦の歴史を振り返っていきましょう。
ハイパーカー規定とは

出典https://www.astonmartin.com/ja/models/aston-martin-valkyrie#section_Design
2018年シーズンから、ル・マン24時間を含むWECの最上位クラスにおけるワークス参戦チームはトヨタだけの状況。
それを危惧したFIAと主催団体ACOは、自動車メーカーにとってより魅力的で参入しやすい規定を企画します。
そうして生まれたのが、2020年から導入されるハイパーカー規定です。
完全なレース専用車である現行のLMP1規定に対し、ハイパーカー規定では100台の市販車を有する車両。
さらに、ハイブリッドシステムが必須となっており、メーカーとしても参戦する理由が作りやすいカテゴリーとなっています。
以前のGT1規定にも市販車ベースという条件はついていましたが、ベース車が1台でもあればいいというルールだったために開発が過激化していき、消滅の道を辿ります。
しかし、ハイパーカー100台という設定は、レーシングカーのベース車としては多めと言えるので、GT1の二の舞にはならないでしょう。
現状では、トヨタのGRスーパースポーツコンセプトとアストンマーチンのヴァルキリーが既にコンセプトモデルを発表しています。
フランスの獅子プジョー、ル・マン24時間挑戦への歴史
長年ラリーを主戦場として戦ってきたプジョーが、ル・マンに参戦したのは1991年から93年と、2007年から11年の2回。
実は参戦期間はそんなに長くはないのですが、どちらもしっかりとライバルを打倒して優勝を記録していることから、強い印象が残っています。
記録にも記憶にも残る、そんなプジョーのル・マン車両をご紹介しましょう。
プジョー905

Photo by David Merrett
1990年にデビューしたプジョー905の最初期型は、NAのV10、3.5リッターエンジンを搭載したグループCカーです。
設計したのは、後にトヨタのTS020も手掛けることになるアンドレ・デ・コルタンツ。
空気抵抗を軽減するために、リアカウルにはタイヤを覆うスパッツが用意され、ストレートでの最高速を重視していることが見て取れます。
意気揚々とデビューさせたものの、ライバルであるジャガーが、カウルを被ったF1と言われたXJR-14を投入したことで一気に劣勢に。
そこで、プジョーは1991年のル・マンを前に、早速改良型を投入したのです。
プジョー905エボリューション1

Photo by Takuya Ikeda
半年も経たずにアップデートを余儀なくされた905は、初期型とは見た目も中身も大幅に変更されることになりました。
市販車に似せたフロントカウルは、ライバルたちと同じようなオーソドックスな形状に変更され、特徴的なリアスパッツも廃止。
カウル変更に合わせてフロントサスペンションは新規設計され、エンジンにも改良が加えられました。
しかし、準備期間をしっかりと確保できなかったこともあり、1991年のル・マンではマシントラブルによるリタイア。
それでも惨敗から1年間、きっちりと改良を果たしたことで、1992年のル・マンでは見事優勝を果たしました。
そして、翌年1993年にも優勝。しかも1-2-3フィニッシュのおまけ付きで、見事2連覇を達成します。
しかし、残念ながらこの年限りでグループCカテゴリーが消滅するのに合わせ、プジョーはル・マンから撤退。
905で熟成させたエンジンを引っさげて、F1へと戦いの舞台を移すこととなりました。
プジョー908 HDi FAP

Photo by cmonville
F1、WRCと活動の舞台を移していったプジョーですが、2005年いっぱいでWRCでのワークス活動を休止します。
そこで新たな舞台として白羽の矢が立ったのが、アウディ一強状態になっていたル・マン24時間でした。
905で参戦していた当時とは異なり、欧州ではディーゼルエンジンが猛威を奮っている状況。
そんな市販車の流れに合わせて、908のエンジンにも5.5リッターV12ディーゼルエンジンを採用します。
車体にはエンジンパワーが優遇されるクローズドコクピットや、フロア下に空気を流すためのハイノーズを採用するなど、勝つための準備は万全。
2007年のル・マンでデビューした908ですが、ポールポジションを獲得して速さを見せるものの、ル・マンを知り尽くしたアウディにレース内容では完敗。
翌2008年には予選1-2-3を確保し、優勝を狙うものの、トラブルやアクシデントが続き、堅実に走るアウディ勢にまたしても屈することとなります。
しかし三年目の正直となる2009年、アウディとの死闘を制し、遂に1993年以来の優勝を達成。
久しくドイツメーカーに奪われ続けていたル・マンでの優勝を、地元プジョーが奪い取ったことで現地のファンは大いに盛り上がりました。
その後、2010年、11年はまたしてもアウディの後塵を拝し、そのままル・マンから撤退することとなります。
まとめ

Photo by David Merrett
過去にル・マン24時間に参戦した際には、必ず優勝を達成しているプジョー。
ル・マンの地元企業なだけに、優勝することが義務付けられていると言っても過言ではないでしょう。
とはいえ、現チャンピオンであるトヨタ、来年から参戦を開始するアストンマーチンもそうやすやすと倒せる相手ではありません。
2022年のル・マン24時間では、トヨタ、アストンマーチンとの激しい戦いを見せてくれることでしょう。
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