チェコの最大手自動車メーカー、シュコダ。日本には正規輸入されていないことから、車好きでも知っている人は少ないかもしれません。しかし、その過去を紐解くと、かなり長い歴史を持ち、モータースポーツ活動にも積極的な社風を知ることができます。

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戦争に翻弄され続けた90年

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シュコダの誕生は1895年、チェコがまだオーストリア ハンガリー帝国だった時代に、自転車メーカーとして誕生しました。

そして1901年には初の自動車を生産。

フォード T型よりも、早い登場でした。

また、戦前はチェコ最大の工業コングロマリットとして、シュコダ財閥が存在しており、その自動車部門が現在のシュコダ オートです。

シュコダは第一次および第二次世界大戦では、戦車などの兵器を製造していたことから特需で大きく成長しました。

その後、オーストリアハンガリー帝国の解体や大戦を経験しつつも自動車の製造は止めず、技術を絶やさずに維持していくことに成功します。

そして第二次世界大戦後は、東西ヨーロッパの分断の影響もあり、チェコスロバキア共和国の国営企業となりました。

60年代頃までは西側諸国に負けない技術力で市場に存在を示していたものの、東側全体の経済が停滞したこともあり、70年代以降は新開発が出来ない状況に陥ります。

しかし1989年、ベルリンの壁崩壊によって西側諸国との経済的つながりが復活し、1991年にフォルクスワーゲングループへと買収されることとなりました。

近代化、そして東欧の雄は飛躍する

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フォルクスワーゲングループの一員となったシュコダは、プラットフォームを提供してもらうことで一気に近代化を果たします。

特に、ゴルフベースのオクタヴィアやポロベースのファビアは大ヒットし、屋台骨モデルとして成長。

買収直後は一世代前のプラットフォームを提供されていたため、メカニズムの古さが見られていましたが、近年は最新のプラットフォームが共有されています。

そのため、オクタヴィアやファビアは、親会社であるフォルクスワーゲンのモデルと同列に比較されるまでに、成長しました。

特に人気のあるファビアは、ベースとなっているポロよりも車幅を広げ、アグレッシブなデザインと相まってスポーティーな印象を与えます。

日本でも並行輸入で何台か入ってきており、フォルクスワーゲンベースの信頼性と他にはないデザインで、コアな車好きからは注目の存在。

フォルクスワーゲングループのブランディング方針から、日本に正規輸入されることは今後もほぼ有り得ませんが、頑張れば入手出来ないことはありません。

ラリーへの挑戦と栄光

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第二次世界大戦以降、東側諸国のメーカーとしての大々的な活動は難しい中、シュコダはラリー参戦を開始します。

メーカーとしての規模や国の立ち位置の難しさもあり、一定以上の成果は残しつつも、大きな結果を残すことはできませんでした。

しかし、それでも参戦を止めることはなく、下位クラスでは優勝を獲得できるレベルまで成長していったのです。

WRCトップクラスへの挑戦と挫折

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転機となったのは、1998年から採用されたワールドラリーカー規定で、これによりベース車から大規模な改造が許されるようになったことで、最上級クラスに打って出ます。

ゴルフベースの大型セダンであるオクタヴィアをベースとして参戦を開始したシュコダですが、時は日本メーカー全盛期。

優勝どころか表彰台を争うことすら出来ず、入賞争いになんとか絡むのがやっとという状態です。

2003年後半には一回りサイズの小さいハッチバックのファビアをベース車に変更するも、目立った結果を残すことは出来ませんでした。

そしてシュコダは、2005年シーズンいっぱいでワークスとしての参戦を中止し、プライベートチームへの支援という形へと変わっていきます。

スーパー2000規定でのファビアの躍進、そして黄金時代へ

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ワークス活動を中止した後は、2007年から導入されるS2000規定に向けての開発作業を開始します。

WRC規定のひとつ下に位置づけられるこのクラスに向けて、各メーカーはこぞって新規開発車両を投入。

WRCにも負けず劣らずの、激しい競走が予想されました。

シュコダは規定3年目となった2009年からS2000規定がメインとなるインターコンチネンタルラリー(IRC)へと、ファビアS2000を投入。

フル参戦ではないながらもランキング2位を獲得すると、2010年にはユホ・ハンニネンがチャンピオンを獲得します。

その後、IRCの規模が縮小しヨーロッパコンチネンタルラリーと名前を変えた同カテゴリで、2014年までチャンピオンシップを制覇し続けました。

そして2015年には、WRC2へ新型マシンであるファビアR5をワークス体制で投入します。

ERCよりレベルの高いWRC2という舞台でも、その勢いは留まることを知らず、初年度からチームタイトルを獲得。

若手育成にも定評があり、IRC時代には現ヒュンダイのアンドレアス・ミケルセンのチャンピオン獲得に貢献しています。

更に、2018年にはエサペッカ・ラッピ、2020年にはカッレ・ロヴァンペラがシュコダでのタイトルを手土産にトヨタGazooラリーチームに加入し、ステップアップを果たしています。

まとめ

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フォルクスワーゲングループへと加入して以降、ヨーロッパでは売上台数7位にランクインする程に成長したシュコダ。

これはアウディやどの日本メーカーよりも上位という素晴らしい結果です。

日本では輸入されていない為に殆ど知られていませんが、実は市販車セールスでもモータスポーツでもトップクラスを争うメーカーなのです。

他人と被ることがなく、信頼性もフォルクスワーゲン印のシュコダを、思い切って購入してみるのも面白いかもしれません。

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