カワサキ伝説のバイクとされるGPZ900R Ninja。生産終了になってから15年が経過しましたが、今なお色あせることないスタイルとGPZ900R特有のエンジンサウンドは、現在も多くのファンを魅了してやみません。また、カワサキで初めて『Ninja(ニンジャ)』の名を与えられたGPZ900Rは、現在でもカスタムベース車両として中古車市場では大人気となっています。

 

カワサキGPZ900R Ninja

出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Kawasaki_GPZ900R

 

Z1に続く世界最速の座に目指したカワサキGPZ900R Ninja

 

カワサキのバイクで初めて『Nnja(ニンジャ)』のサブネームが採用されたGPZ900Rは、Z1に続くカワサキのフラグシップモデルを登場させるべく、社運をかけて開発されたカワサキの力作です。

二輪車初となるサイドカムチェーンや16インチタイヤなど、これまでになかった技術を多用し、カワサキはGPZ900Rを世界最速のバイクにしようと奮闘しました。

そして、最高速度が約250km/h、0から100km/hまで到達するのに12.4秒という記録を打ち立てます。

『Z1』が世に出てから11年目ぶりに、世界最高レベルの性能を発揮するスポーツバイクを再び生み出し、ニンジャの名を世界中に知らしめました。

 

カワサキGPZ900R Ninjaとは

 


GPZ900R Ninjaは1983年にパリモーターショーで発表され、1984~2003年まで販売されました。

大幅な変更のフルモデルチェンジはされなかったものの(!)、毎年一部改良またはマイナーチェンジがなされている為、1984年モデルのA1型から2003年最終モデルのA16型まで生産時期によって型式名が異なります。

そんなGPZシリーズでは900以外にもGPZ1100やGPZ750などいくつか派生モデルが販売されましたが、その中で最も人気のあったモデルはGPZ900Rでした。

ちなみに、デビュー時の車体ロゴは『GPz900R』でしたが、1986年モデルから”z”が大文字になり『GPZ900R』になっています。

19年間一度もデザイン変更されることのなかったGPZ900Rの累計出荷台数は明らかにされてませんが、2002年までに8万台以上は販売したとされています。

 

カワサキGPZ900R Ninjaの開発エピソード

 

 

カワサキは1972年に発売したZ1が大ヒットするも、Z1の生産が終了してから登場させたZ1000MKⅡは1978~1980年のわずか2年しか生産されませんでした。

そんなカワサキはZシリーズに続く新たなモデルシリーズを生み出すため、Z1000MKⅡをベースに排気量アップとアッパーカウルを装着したGPz1100を発表。

GPz1100と並行してZ1と同じ900ccクラスで、ハイパワーかつコンパクトなスポーツバイクの開発に着手し、1984年にGPZ900Rを登場させたのでした。

 

並列4気筒エンジンの性能を飛躍的に向上させたサイドカムチェーン&2次バランサー

 

GPZ900Rが開発される際に、空冷6気筒エンジンや、変形クランクとバランサーを搭載した空冷4気筒エンジンモデルなどが試作されましたが、最終的に行き着いたのは水冷4気筒DOHCエンジンでした。

Z1で問題視されていたエンジンの振動を軽減させるため、エンジンの2倍の速度で回転する180度2軸2次バランサーをエンジンに搭載し、全く新しい技術として通常のエンジンシリンダーの2番から3番目の間にあるカムチェーンを、エンジンのサイドに搭載した『サイドカムチェーンレイアウト』を採用。

これによりGPZ900Rのエンジンは、それまでのオーソドックスなインライン4エンジンを飛躍的に性能アップさせることに成功したのです。

また、フレームはスチールパイプのダイヤモンド型メインフレームと軽量化を図るためのアルミ製サブフレーム、キャスト構造のステップ周りという3ピール構造。

当時、すでにオールアルミ製フレームを使用することも可能だったようですが、エンジンとフレーム剛性の相性を考えた上でメインフレームをスチール製にしたようです。

 

カワサキ初フルカウル付きスーパースポーツ

 

歴代のカワサキ車で、初めてフルカウルを装着したモデルはGPZ900Rでした。

それまでの空冷エンジン時代にもハーフカウルを装着したモデルはありましたが、高速クルーズ使用が多い欧州市場において安定性と快適性を高めるために、空力性能が高いアッパーカウルとアンダーカウルが一体化したフルカウルの装着が試みられたのです。

そして多くの風洞実験を繰り返しながら今のスタイルとデザインにたどり着き、フルカウル装着による空力の向上で、200km/h付近でも安定した巡航を可能にしました。

 

軽いハンドリングをもたらした16インチタイヤ、しかしコーナーでの安定性に欠ける面も

 

カワサキ車で初めてフロント16インチタイヤを採用したのもGPZ900Rでした。

軽量化を図ったモデルといっても装備重量は257kgになるため、ハンドリングに軽さとクイックさをもたらせるよう、通常よりも径の小さい16インチタイヤを採用。

それまで16インチタイヤは生産されていなかったため、カワサキはGPZ900R用タイヤを作るためにダンロップと共同開発したそうです。

しかし、ハンドリングの軽快性は実現できても、16インチタイヤではコーナー時に車体をバンクさせると安定感に欠けるため、1990年のマイナーチェンジでフロント・リアともに17インチ化されました。

 

映画トップガンに登場で大ヒット!

GPZ900Rといえば、映画『トップガン』を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

1986年に上映されたトップガンは全米興行成績1位(70.9億円)、日本で洋画配給収入1位(39.5億円)を記録した言わずと知れた大ヒット映画です。

トム・クルーズ氏演じる主人公ピート・ミッチェルが乗るGPZ900R-A2型は、アンダーカウルを取り外し、アッパーカウルが黒く塗られ、タンクとシートカウルに多くのステッカーが貼られていました。

これには映画を低予算で撮影しないといけなかったものの、カワサキからの提供を得られず、使用するバイクの車種や製造メーカーが特定されないようにしなければならなかったので、使用するGPZ900Rにカスタムを施し、ロゴ部分にステッカーを貼り付けたという裏事情があったそう。

しかし劇中ではトム・クルーズ氏がノーヘルでG-1ジャケットに501ジーンズ、ティアドロップのサングラスをかけてGPZ900Rに乗る姿がとてもクールで、多くの若者が憧れて『トムクルーズが乗っているバイクはなんなんだ!』と問い合わせが殺到したそうです。

これがトップガンの大ヒットと共にGPZ900Rの人気にも火がついた要因で、もしGPZ900Rが採用されなければ、19年間も生産されるロングセラーにならなかったかもしれません。

 

カワサキGPZ900R Ninja(北米仕様)のスペック&性能

 

カワサキGPZ900R Ninja

出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Kawasaki_GPZ900R

 

カワサキGPZ900R Ninja(北米仕様)のスペック

 

1984年モデル カワサキGPZ900R(A1型)
型式 ZX900-A1
全長×全幅×全高(mm) 2,200×750×1,215
軸間(mm) 1,425
シート高(mm) 780
車両乾燥重量(kg) 228
エンジン種類 水冷4ストローク並列4気筒DOHC16バルブ
排気量(cc) 908
内径×行程(mm) 72.5×55.0
圧縮比 11.0
最高出力(kW[PS]/rpm) 85[115]/9,500
最大トルク(N・m[kgf-m]/rpm) 85.3[8.7]/8,500
トランスミッション 常時6段リターン
タンク容量(L) 22
タイヤサイズ 120/80 V16
130/80 V18

 

カワサキGPZ900R Ninja(北米仕様)の性能

 

最高速度(km/h) 247.8
0-100km/h加速(s) 10.9
燃費値(mpg) 40.8[リッターあたり17.3km]

 

まとめ

 

最後に、なぜNinjaという名を採用したかというと、カワサキのアメリカ現地法人に日本式のネームを付けてほしいと要望があり、1982年頃はアメリカのTVドラマ『SHOGUN(将軍)』(監督:ジェリミー・ロンドン、主演:リチャード・チェンバーレン)が大ヒットしていたことや、『Samurai(侍)』、『Karare(空手)』といった日本発祥の文化が知られるようになっていたことをきっかけに、アメリカ市場向けの仕様に”Ninja”を使用したそうです。

しかし、忍者に対する日本人の”忍び”というイメージとGPZ900Rが合わないと、カワサキ本社内のほとんどが大反対。

それでもアメリカ人の思い描くニンジャは日本人と違い、スーパーマンのような正義の味方のイメージだったため、欧米でNinjaのネーミングが受け入れられる結果に。

そんなGPZ900Rが残した功績は非常に高く、Z1に続く欧米での大ヒットと、カワサキ車両にNinjaというネーミングが認知されるようになり、『Ninja=カワサキ』というブランドイメージを浸透させることにもなりました。

このように、GPZ900Rがあったからこそ、今のカワサキがあるといっても過言ではないのです。

 

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