世界最速を目指して開発されたカワサキ500SS。その弟分として登場したカワサキ250SSと350SSは、空冷2ストローク3気筒エンジンを搭載し、兄貴分である500SS、750SSと同等なカッコよさとクラス最高峰の速さをもつバイクでした。そんな250SSと350SSのスペックや魅力をご紹介します。
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カワサキ250SS/350SSとは
250SSと350SSは、1970年前半にカワサキから登場した2ストロークエンジン搭載のスポーツバイクです。
まず、カワサキは最速バイクを目指し、1968年にマッハⅢ500SS(H1)を北米で発売。
排気量498ccの空冷2ストローク3気筒エンジンを搭載し、高回転域で一気に吹け上がるエンジン特性と他車よりも優れた加速性能・最高速で大ヒットとなりました。
そこから、250SSマッハⅠ(S1)、350SSマッハⅡ(S2)、750SSマッハⅣ(H2)と排気量の違うモデルを登場させ、すべてに空冷2ストローク3気筒エンジンを搭載した「マッハシリーズ」は1970年代を代表するカワサキスポーツバイクとなっていったのです。
カワサキ350SSマッハⅡ(S2)
1969年9月に発売された500SSから約1年半後、マッハシリーズ第二のモデルとして350SSが登場します。
350SSの先代モデルは、350cc空冷2ストローク2気筒エンジンを搭載したA7アベンチャーですが、そのA7アベンチャーよりエンジン気筒数を増やしてさらなる高出力を実現。
500SSに比べ、エンジンの排気量だけでなくフレームもコンパクトになり、車体全体がスケールダウンしたことで500SSよりもマイルドで乗りやすくはなったものの、最高出力45馬力を発揮し、350ccクラスでは最もハイパワーでした。
そして加速も、500SS譲りの高回転で暴力的な加速をするモンスターバイクに。
その後、1973年にマイナーチェンジが成され、フロントブレーキをドラムからディスクに変更。
1975年に販売終了となりますが、後継モデルとして排気量を400.3ccまでアップさせたKH400を登場させます。
しかしKH400は、350SSよりも排気量がアップするも、自主規制により最高出力は38馬力まで抑えられたため、ハイパワー感のある350SSの人気に達する事はありませんでした。
カワサキ250SSマッハⅠ(S1)
250SSは350SSが登場してから約1年後にマッハシリーズの末っ子として登場し、1967~1971年まで販売されていたカワサキA1 Samuraiの後継モデルとされています。
250ccという排気量であれば単気筒か2気筒のエンジンが定番ですが、250SSはマッハシリーズと共通の3気筒エンジンを採用していました。
1974年のマイナーチェンジでホイールベース長を短くし、自主規制により最高出力28馬力、最大トルク2.7キロまで抑えられる事に。
そして1976年に「250SSマッハⅠ」から「KH250」へ車名を変え、フロントブレーキをドラムからディスクに変更。
タイヤサイズの変更やイグニッションをコイル式からCDIに変更するなど、多々変更が加えられますが、車名変更となっても基本となる設計は変わらず、250SSとKH250はほぼ同車種とされ、1981年まで製造・販売されました。
じゃじゃ馬感は兄貴譲り!カワサキ250SS/350SSの魅力とは
マッハシリーズのイメージといえば「じゃじゃ馬」と語る方が多いと思います。
兄貴分となる500SS、750SSはアクセルを開けるとフロントリフトするほどの加速で、コーナー中はフロントトラクションがかかりにくいため安定せず、操作性はお世辞にも良いといえるものではありませんでした。
その為、一部のモーターサイクルジャーナリストからはあまりにも危険すぎると評価され、乗り手を選ぶバイクとして知られるようになります。
一方で、排気量ダウンした250SS/350SSは500SS/750SSほどのパワーはありませんが、クラス最高スペックを誇り、アクセルを開け高回転まで回すと矢のように加速し、乗り手をしびれさせる1台でした。
そして350SSは、45馬力を発揮。
これは、カワサキの最新400ccスポーツバイク・Ninja400の48馬力に匹敵するもので、2ストロークと4ストロークの違いがあるとしても、約45年前のバイクがこれほど高性能を誇った事には驚きです。
また、250SSはヤマハRD250とスズキGT250とほぼ同じ馬力とトルクでしたが、偉大なマッハシリーズの末っ子ということもあり、当時最も人気の高いニーハンモデルだったと言われています。
外観の特徴は、車体の右側に2本、左側に1本のチャンバーが配置される3気筒ならではの非対称なデザインが印象的でした。
そして、空冷エンジンは多くの空気をエンジンに当てるためにエンジンシリンダーの周囲にフィンが取り付けられますが、空冷2ストロークエンジンはエンジンヘッド上部にもフィンが付いており、マッハシリーズのエンジンの造形美に惚れたライダーは多かったことでしょう。
プロダクションレースで活躍!北米ではダートトラック車両として大人気!
カワサキ250SS/350SSは市販車ベースのプロダクションレースで使用され、3気筒というアドバンテージからマッハシリーズを選ぶ方が多かったようです。
北米でも750ccレーサーのカワサキH2Rがレースで大活躍していた時期で、400cc以下のプロダクションレースでは大人気でした。
また、ダートトラックに出場するマシンとして使われることもあり、2ストロークのサウンドを響かせながら、スライド走行でダートを駆け抜ける250SS/350SSは、かなり迫力がありました。
カワサキ250SS/350SSのスペック
250SS | KH250 | |
---|---|---|
全長×全幅(mm) | 2,020×820 | 2,020×820 |
軸間(mm) | 1,585 | 1,374 |
シート高(mm) | 770 | 770 |
車重(kg) | 149.5 | 157 |
エンジン種類 | 空冷2ストローク3気筒 | 空冷2ストローク3気筒 |
排気量(cc) | 249 | 249 |
ボア×ストローク(mm) | 45×52.3 | 43×52.3 |
圧縮比 | 7.3 | 7.3 |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 23.8[32]/8,500 | 21[28]/7,500 |
最大トルク(N・m[kg・m]/rpm) | 29.4[3.0]/7,000 | 26.5[2.7]/7,000 |
トランスミッション | 5速 | 5速 |
タイヤサイズ | フロント:3.00-18 リア:3.25-18 |
フロント:3.25-18 リア:3.50-18 |
タンク容量(L) | 14 | 14 |
車両価格(円) | 218,000 (1972年2月発売時価格) |
270,000 (1976年2月発売時価格) |
350SS | |
---|---|
全長×全幅(mm) | 2,020×1,095 |
軸間(mm) | 1330 |
シート高(mm) | 770 |
車重(kg) | 149.5 |
エンジン種類 | 空冷2ストローク3気筒 |
排気量(cc) | 346 |
ボア×ストローク(mm) | 53×52.3 |
圧縮比 | 7,3 |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 33[45]/8,000 |
最大トルク(N・m[kg・m]/rpm) | 41.6[4.25]/7,000 |
トランスミッション | 5速 |
タイヤサイズ | フロント:3.00-18 リア:3.50-18 |
タンク容量(L) | 14 |
車両価格(円) | 228,000 (1971年3月発売時価格) |
中古車は価格高騰!盗難の危険性大
先輩の友人のバイクが埼玉県ふじみ野市から盗難されました
KAWASAKI KH250
ナンバー:所沢 と 49-47
特徴:外見はノーマル
ウィンカーはヨーロピアン
プラグコードが黄色何か情報ありましたら、連絡して下さい pic.twitter.com/ye0JJk7BLq
— せいそう (@ms0713g) 2016年9月7日
カワサキ250SS/350SSは、現在中古車市場で非常に高い金額で取引されており、100万円程度で売られている車両も多く見られます。
さらに、かなりの人気車種なだけに盗難も多く、SNSで盗まれた車両の目撃や見つけた時の通報などを呼びかける投稿を見かける事もしばしば。
250SSと350SS、そのほかのマッハシリーズを手に入れた際は、できる限りのセキュリティーで保管するよう心がけてくださいね。
まとめ
カワサキは北米市場や日本市場でマッハシリーズの販売が大成功し、速いバイクを作り出すバイクメーカーとしてブランド力を向上させました。
そして、現在アンダー400ccで最前線に君臨するNinja250やNinja400などのスポーツバイクを作る精神は、250SSと350SSで培われたものといえるのではないでしょうか。
250SS/350SSが、現代のバイクに大きな影響を与えたことは言うまでもありません。
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