2016年シーズンからはじまったMFJカップJAPAN Prodaction250(JP250)クラス。4ストローク2気筒 250ccの排気量のオートバイをベースに開催されているこのプロダクションレースに、一際目立つパッションピンクのヘルメットを被って豪快なライティングフォームを決める一人の女性ライダーが参戦しています。アマチュアカメラマンの間では『フルバンク女子』の愛称で親しまれる人気レーシングライダー『小椋華恋(おぐら かれん)選手』。彼女の素顔に迫ります。

 

フルバンク女子・小椋華恋選手 / Photo by TEIJI KURIHARA

 

ポケバイ時代に、ロードレースへの夢が芽生える

PROPOWER Asia DOGFIGHTR・YAMAHA小椋華恋選手 / ©ChikaSakikawa

 

3歳からポケバイに乗り始め、6歳でレースの世界にデビューした小椋華恋選手。

元世界GPチャンピオン加藤大治郎氏が、生前シリーズをスタートさせたポケバイレース、74DAIJIRO-Eクラスにも『KTRSC&めだまF』より参戦。

”めだまかれん”のニックネームで大活躍をしていた小学生2年生の頃に、小椋選手にとってロードレースを目指すきっかけとなる、微笑ましい出来事が起きたそうです。

 

Q.ロードレースを目指すきっかけは?

 

A.74(Daijiro Cup)をやっていた時に、当時私はその74がバイクレースの最高峰だと思っていたんです!!

もうこれが最高峰で、ここで勝てば誰より速いと思っていて・・・。

でも、全日本ロードレースを観て衝撃を受けて・・・。

特に『JSB1000』にカルチャーショックを受けたんです。

「あっ、74と違う世界があったんだ~。」というくらいの感覚で。

で、「これに乗りたい!!ロードレースに上がろう!!」

という気持ちが、純粋に芽生えました。

そして2011年、中学生になった小椋選手は、筑波サーキットで開催されていたMFJレディースロードレースに参戦し、2戦2勝!!(開幕戦は東日本大震災により中止)

見事シリーズチャンピオンを獲得して、着実に夢への道のりを歩み始めます。

 

KTR&ハラツヨ★ワークス 小椋華恋選手 / 出典:http://www.mfj.or.jp/user/contents/ladyskids2011/ladyskids-repo.html

 

翌2012年シーズンは、地方選手権のJ-GP3クラスとCBR DREAMカップへのダブルエントリーという忙しいシーズンとなりましたが、小椋選手は当時を振り返りこう語ってくれました。

私は一番最初、ロードレースを始めた時は、レーサーとプロダクション(街乗り)の両方に乗っていたんですよ。

RS125(GP3混走時代の2ストロークマシン)とCBR250Rなんですけど、RSは最初からメチャメチャ遅かったんです!!

だからCBRカップは最初から優勝争いが出来てたので、こっち(プロダクション)の方が才能あるんだなと思って。

今シーズン参戦していたMFJカップJP250というプロダクションレースに繋がる道のりは、この時決まったのかもしれません。

 

小椋華恋選手プロフィール

PROPOWER Asia DOGFIGHTR・YAMAHA小椋華恋選手 / © ChikaSakikawa

 

ニックネーム カレン
生年月日 1998年8月5日
出身地 埼玉県
所属チーム PROPOWER Asia DOGFIGHT R
特技 ギター/ドラム(以前は部活としてバンドを組んで毎週やっていました。)
好きな食べ物 お寿司(特に酢飯。)
好きな飲み物 モンスターエナジーオリジン/イチゴオレ
好きなライダー カル・クラッチロー選手(ライティングフォームがかっこいいから好きになりました!!)

 

JP250の魅力について

 

2016岡山国際ラウンド JP250 小椋華恋選手 / Photo by TEIJI KURIHARA

 

2013年シーズン、もてぎロードレース選手権 CBR250R DREAM CUP 第2戦でクラス初優勝。

2015年筑波ロードレース選手権 第3戦 CBR250R DREAM CUPで初ポールポジション達成など、主に『プロダクションレース』を舞台に活躍していた小椋選手に好機が訪れたのは2015年末のことでした。

それは、2016シーズンから日本でも市販モデル4ストローク250ccをベースにしたプロダクションレースの開催が決定した事。

それが、現在参戦しているJP250(Japan Production)です。

そして国際ライセンスと、国内ライセンスの各ライセンス所持者が混走する形で始まった2016シーズンは、前年のFIMアジアロードレース選手権AP250のチャンピオンである山本 剛大選手が参戦するなど盛り上がりをみせ、国内ライセンスクラスに出場した小椋選手は国内ランキング7位を獲得。

翌2017年シーズンのJP250、国内ライセンスクラスで開幕戦4位入賞など、着実にポイントを重ねてシリーズランキングは4位。

今シーズンで参戦3年目を迎える彼女に、JP250の魅力を聞いてみました。

Q.JP250(Japan Production)の魅力とは?

 

A.そこまで速いバイクじゃないので、筋力とかもそこまで使うカテゴリーではないんですよ。

なので、女性ライダーやキッズライダーでもステップアップし易いカテゴリーかな?と思います。

あと街乗りバイクなので、観てる人なども親近感が湧くと思うので、レースを始めるきっかけとかにもなるかなって~。

とても、親しみやすいクラスだと思います!!

 

引く事を知らない小椋選手のアグレッシブなレーススタイル

 

2017MFJGP JP250決勝レース・130R / Photo by TEIJI KURIHARA

 

小椋選手のレースへの姿勢は、驚くほどアグレッシブ。

その代表的なバトルが上の1枚の写真に表れています。

鈴鹿サーキット屈指の高速コーナー『通称130R』を2台のJP250マシンが併走してコーナーリングをしているこの写真。

130Rのクリップ付近でのバトルはハイリスクな為、避けるライダーも多いのですが、この2台は綺麗な曲線を描きながら並んでフラットアウトし、走り去っていきました。

撮影したのは2017年のMFJGRANDPRIX決勝レースで、右サイドのライダーに目を向けているのが小椋選手です。

一方アウト側を併走しているのが、GOSHI Racingの片山千彩都(かたやま ちさと)選手。

そんな激しいバトルを展開するも今ではプライベートでも会うほど仲良しだという両選手に、二人の出会いや第一印象を聞いてみました。

 

小椋華恋選手(左)と片山千彩都選手(右) / Photo by TEIJI KURIHARA

 

Q. 二人はずっと友達ですか?

 

小椋選手:CBRカップの頃(3~4年前)から?

片山選手:えっ、去年くらいからじゃない?

小椋選手:親同士が、最初話していて若干、警戒心強めでやりとりしてて最近仲良くなったって感じ・・・

片山選手:あっそうだ!!そうそう~そう~

 

Q. お互いの第一印象は?

 

小椋選手:わたしは覚えてないです。

片山選手:ひどくない??

小椋選手:走りのことなのですが、(鈴鹿CBRグラチャン時)速い女の子がいるって聞いていて、その子が最終シケインのブレーキングでイン側(片山選手が)に来ていたのでちょっと強めのブレーキングをしたんですよ。

そしたら私のイン側を突き抜けてコースアウトしていったんです!!

片山選手:えっうそ!?そんなことあったっけ?覚えてないです。

私は、小椋選手が関東で活躍しているのをずっと知っていたんですよ。

名前とか走りとか!!それで7年前、12歳の頃ここで(鈴鹿)初めて見たんですよね。

本人は覚えてないみたいなんですけど・・・にらまれたんです!!

だから、第一印象は怖いひとですね。

小椋選手:カット!!カット!!やめてよもう~悪い印象言うの(笑)

片山選手:一緒に走れる様になったのは嬉しかったです。

カレンちゃんはずっと憧れていた人なので。

 

片山千彩都選手 / © ChikaSakikawa

 

そんな2人が初めて同じレースの同グループでバトルを繰り広げたのが、昨年(2017年)のMFJ GRANDPRIX。

先ほどの写真の接戦でした。

Q. 写真の130Rのバトルについて

 

小椋選手:私が普通に走っていたら、アウトから被せてきて・・・

片山選手:ちがう!!ちがう!!

小椋選手:なんかここいつも食い違うよね~。貴方の言い分を聞こうじゃないか!!

片山選手:この時は、130R(進入)でカレンちゃんにインから前に出られたんですよ。それで130Rに並んで入ったんです!!

私が、アウトにいるところを寄せてきたのはカレンちゃん。

(小椋選手おもわず微笑)ほら!!

小椋選手:ワタシは・・・急にアウトから来てびっくりして。

(画像を指して)たぶん、ビックリマークついてる(笑)

片山選手:寄せてる途中でしょ!!

小椋選手:この話だけはゆずれない(笑)

2017年のMFJGP JP250決勝レースでは、片山選手が1コーナーでインを突いて前に出て2コーナーで小椋選手が抜き返すという、ドッグファイトを繰り返している途中の『130R併走コーナリング』ということで、事実はリプレイ検証が望ましいところですが、最終リザルトは好バトルの末、小椋選手6位、片山選手8位という結果になっています。

 

小椋選手を追いかけるライバル片山選手

 

片山千彩都選手(GOSHI Racing)/ 画像提供:Kana Mike

 

2014年CBR250R DREAM CUP優勝、そして記憶に新しいのが2018年9月16日 鈴鹿サンデーロードレースJP250でポールtoウィンを飾ったのが、小椋選手の後を追うように昨年から、MFJカップJP250に参戦している片山選手です。

そんな彼女にとって一番大切なものがバイクで、ずっとサーキットでバイクに携わっていきたいという夢を持っているそう。

私は、学校で電気電子を専攻していて、いずれはエンジニアになって開発(オートバイ関係)をしたいと思っています。

今までレーシングライダーとしてバイクに乗ってきた経験を活かし、あと勉強も頑張っているので、その両方を兼ね備えたエンジニアになりたいです!!

それも、ホンダのオートバイの開発をしたいという希望があって、ずっとホンダに乗っています!!

 

片山千彩都選手(GOSHI Racing)/ 画像提供:Kana Mike

 

片山千彩都選手プロフィール

©ChikaSakikawa

ニックネーム チサト
生年月日 1999年11月20日
出身地 福岡県
所属チーム GOSHI Racing
特技 運動、身体を動かすことが得意です‼
好きな食べ物 黒ゴマ・アイス
好きなライダー マルク・マルケス選手
大切なもの バイク
ひとこと 学校では、電気電子を専攻しているので、電気女子になれるように勉強をがんばっています‼

現在は、オートバイのECUに『aRacer』を入れているので、マシンの加速がかなり良くなりました‼

小椋華恋選手と片山千彩都選手 / © ChikaSakikawa

電気女子らしくマシンの状況を説明してくれた片山選手とライバルである小椋選手。

コース上では本気でぶつかり合い、マシンを降りると心から笑いあう。

この2人は、ここからどのような道を選び、どんな活躍をみせてくれるのでしょうか。

楽しみです。

 

まとめ

JP250選手権第4戦筑波ラウンド・レース1小椋華恋選手/  Photo by TEIJI KURIHARA

 

オートバイのECUを、『GET Racing』製に変更してから立ち上がりが格段に速くなったという、今シーズンのDOGFIGHTレーシング・ヤマハYZF-R25。

そんなYZF-R25と小椋選手が見事にシンクロしたのが、2018MFJカップJP250選手権第4戦筑波ラウンドのレース1での出来事です。

赤旗、再スタートとなったレース序盤から総合3番手争いに加わりコンスタントにラップタイムを刻み続けます。

そして最終ラップの第1ヘアピンで家根谷大晟選手(キジマKISSレーシングチーム)をインから交わして4位に浮上。

最終コーナー侵入で追い上げてきた西村硝選手(Team TEC・2)にブレーキングで一瞬前に出られるも、見事にクロスラインで抜き返して、総合4位入賞。

さらに『ナショナルクラス初優勝』というベストリザルトを残したのでした。

また、小椋選手は昨年に引き続き、2018鈴鹿4時間耐久レースにも参戦。

ウェットとドライが入れ替わる難しいコンディションで行なわれた決勝レースを、慣れない600ccのバイクでコンスタントに走りきり総合18位 NATクラス5位で見事完走を果たしています。

そんな彼女にST600クラスの感想を聞いてみると、その回答はとても頼もしいものでした。

いや~楽しかったですね本当に!!なんかスピードを出すのが大好きなので、まだ怖いとかないので。

まだまだスピード的には行けるかなって思います!!

将来的な目標(夢)としては、やはりレース業界自体をなんか昔みたいな感じで盛り上げていきたいなと思っていて・・・。

やっぱり、20年以上前とかは凄い盛り上がっていたので、その頃くらいまで盛り上がってくれればな~と。

なんかヨーロッパみたいに観客席が満席とか、そういうのが夢ですね!

 

2018年11月1日

小椋華恋

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