1972年にスズキGTシリーズの中排気量モデルとして発売されたスズキGT380。カワサキ350SSやヤマハRD350など、強力なライバル車が存在するクラスの中で、スズキ独自の技術をフルに搭載して作られた当時のハイテクマシンでした。そんなスズキGT380を知っていますか?
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スズキの最新技術を詰め合わせたハイテクマシンGT380
スズキは1971年排気量738cc水冷2ストローク3気筒エンジンを搭載したフラグシップモデル『GT750』を発売し、翌1972年には排気量をダウンさせた派生モデルGT380とGT550を登場させました。
当時、ミドルクラスのバイクは350ccが主流でしたが、スズキはあえて380ccスケール(スペック:371cc)を採用。
GT380の弟分であったGT250のエンジンは、ボア×ストロークが54×54mmの排気量247cc空冷2ストローク2気筒エンジンを搭載しており、GT380のエンジンはGT250にシリンダーを1つ追加した3気筒エンジンになっています。
しかし、1973年にオイルショックが起こったことで当時の2ストロークバイクの存続が難しくなっていくことに。
そのため毎年改良を重ねていきましたが時代の流れには逆らえず、GT550は1977年、GT380は2年後の1979年に生産終了となってしまいました。
冷却効果を狙ったラムエアーシステム
実は、GT750は水冷式ですが、GT380では空冷式エンジンを採用しています。
水冷式のほうが理想的に思えますが、当時のバイクは空冷がメインであり、ミドルクラスのバイクに水冷を採用すると非常にコストがかかり高額設定にせざるをおえませんでした。
そこで、スズキは空冷エンジンの弱点である冷却性を向上させるため、『ラムエアーシステム』をGT380に採用したのです。
それはエンジンヘッド部分に冷却フィンを装備した筒状の空気流入口をつくり、エンジンヘッド周りの冷却を効率化させるという仕組み。
現在のバイクのラムエアシステムは、エアーボックス内に空気を強制的に取り込みパワーを引き出しますが、当時は冷却効果を狙ったシステムだったようです。
GPレースで開発されたCCIを採用
エンジンは、CCI(クランクケースシリンダーインジェクション)を採用していました。
CCIはクランクシャフト駆動のオイルポンプによりクランクシャフトベアリング、コンロッドビッグエンドを直接強制潤滑させるもので、オイルはクランクケース内で飛散し、スモールエンド、シリンダーなどを潤滑・冷却した後、混合ガスとなって燃焼室へ導かれるシステムです。
そんなCCIはGPレースで培った分離潤滑技術で、1965年に発売されたロードスポーツバイク・スズキT20で市販車に初めて採用されました。
仮面ライダー本郷猛が乗ったスズキGT380の魅力
僕の乗ってるバイクは
初代の仮面ライダーのサイクロン号と
ストロンガーの乗ってるこのバイクのベースになってるGT380とゆう
もう40年以上前のバイクです pic.twitter.com/QYeKqCptVR— DJ elucuro (@l96elucuro) 2015年9月17日
特撮テレビシリーズ『仮面ライダー』の中で、登場人物『本郷猛(ほんごうたけし)』が乗っていたバイクに、スズキGT380が登場していました。
本郷猛を演じる藤岡弘さんは当時25歳で、仮面ライダー人気の火付け役と言っても過言ではない人物。
これ以降、仮面ライダーの主人公がバイクで参上することが定着し、GT380はその先駆けとなったのです。
ライバル車にはなかったユーザーフレンドリーな乗り味
GT380が発売された当時の、ライバル車はカワサキ350SSやヤマハRD350でした。
カワサキ350SSは、絶対的な速さとハイパワー感があふれるじゃじゃ馬のようなバイク。
もう一方のヤマハRD350は、シャープな操作性でコーナーリングで勝負する切れ味を持ったバイクであり、それぞれの個性あふれるキャラクターをもっています。
そういった意味でのスズキGT380は、カワサキ350SSやヤマハRD350よりユーザーフレンドリーな乗り味で、低回転から高回転までフラットに回転数が上がり、パワーバンドに入ったときの唐突な加速は少なく、ラムエアーやCCIを採用したことでチャンバーから真っ白な排気ガスが出ることも少ない、安定感のあるモデルでした。
カッコよさ重視!3気筒なのに4本出し
GT380の左右にはそれぞれ2本のマフラーの排気口が出ており、4本出しのマフラーになっています。
しかし、GT380は3気筒バイクであるため1本余るのでは?と思う方もいるのではないでしょうか?
これはエンジン中央のシリンダーから出るマフラーを左右二股に分けて排気する仕組みとなっており、静粛性に寄与しているといわれていますが、一番の目的は外観の美しさを狙ったものでしょう。
モータースポーツでの活躍
1970年代のスズキ製ロードレーサーを振り返ってみると、ロードレース世界選手権500ccクラスに出場していたワークスマシンのRG500や市販マシンのTR500、GT750のレーサー仕様でデイトナ200マイルに出場していたTR750などがありました。
そして、中排気量クラスでは1960年代後半に登場したTR250/TR350など、当時全日本選手権や世界選手権などのバイクレースは、これらロードレーサーをメインとしたグランプリレースがほとんどです。
一方で公道走行可能なマシンでのレースはプロダクションレースと日本各地のサーキットで行われ、GT380は400cc以下のレースクラスでカワサキ350SSやヤマハRD350をライバルに争っていました。
スズキGT380のスペック
1973年モデル スズキGT380 | |
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全長×全幅×全高(mm) | 2,090×800×1,100 |
ホイールベース | 1,380 |
シート高 | 787 |
乗車定員(名) | 2 |
乾燥重量(kg) | 171 |
エンジン種類 | 空冷2ストローク3気筒 |
排気量(cc) | 371 |
圧縮比 | 6.7:1 |
ボア×ストローク(mm) | 54.0×54.0 |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 27.7[38]/7,500 |
最大トルク(N・m[kgf-m]/rpm) | 38[3.9]/6,000 |
トランスミッション | 6速 |
燃料タンク容量(L) | 15 |
タイヤサイズ | 前:3.00-19 後:3.50-18 |
トップスピード(km/h) | 153 |
車体価格(円) | 245,000 |
スズキGT380の中古車価格
#Nostalgic2days
SUZUKI GT380
仮面ライダーストロンガー
カブトローのベースマシン
独特のシリンダーヘッドフィン pic.twitter.com/etctPoUZoV— ぽんせ (@gLQirRZJ55teCng) 2018年2月18日
スズキGT380の中古車はかなり高額で、100万円以上の車両が多くノーマルに近くて状態の良いものは相当なプレミア価格となっています。
さらに盗まれやすいバイクでもあり、プロの窃盗団が狙っている車両の1台でもあるので、ヤフーオークションやメルカリ経由で行う個人売買では出品者の信頼性を把握することや、盗難車ではないかを見分けるために、車検証を一度確認し盗難届など出ていないか警察に確認してみたほうがいいかもしれません。
まとめ
色々色々
結局…何が言いたかったのかは、秘密戦隊ゴレンジャーです(笑) pic.twitter.com/CCsmzijY9C— YASUTERU KOJIMA (@Yasuteru_Kojima) 2017年11月27日
GT380は初代仮面ライダー以外に、秘密戦隊ゴレンジャーのブルーマシーンに用いられた劇用車や漫画『湘南爆走族』の登場人物・桜井信二が乗っていた愛車としても登場しており、多くのテレビや漫画で人気の車種でもありました。
今でも語り継がれる大傑作に採用されていることで、旧車ファン以外に特撮ファンからも大人気であり、カワサキ350SSやヤマハRD350のような強烈な走行特性はなくても1970年代を代表する名車のひとつとなっています。
ご覧になった通り、当時としては高性能かつ最新技術が盛りだくさんのカッコよかったバイクなので、仮面ライダーの相棒として選ばれる理由も分かりますよね。
そんな仮面ライダーやゴレンジャー、湘南爆走族と共に、これからも語り継がれるレガシーといえるのではないでしょうか。
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