1989年まで日本車のほとんどは5ナンバーサイズで、3ナンバーのクルマは高級車というイメージでした。しかし現代では、ほとんどのクルマが3ナンバーで、むしろ5ナンバー車を見つける方が困難です。いったいなぜなのでしょうか。5ナンバーから3ナンバーに変更されたクルマと、その理由をご紹介します。

掲載日:2019年7月23日

10代目トヨタ カムリ

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なぜボディサイズを拡大するのか?

why なぜ どうして

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日本の国土が大きくなる事はありませんが、自動車のボディサイズはどんどん拡大しています。

その理由は、ワイドトレッド化による操縦安定性の向上と、側方衝突安全性の強化が挙げられるでしょう。

全長まで考慮すると、室内空間の拡大や複雑化したボディデザインも、一役買っていると思われます。

しかし、この他にも自動車のサイズアップには、理由があるのです。

1989年の自動車税改正による恩恵

8代目トヨタ クラウン4ドアハードトップ

8代目トヨタ クラウン4ドアハードトップ / © 1995-2019 TOYOTA MOTOR CORPORATION. All Rights Reserved.

1989年まで、自動車税はエンジンの排気量とボディサイズで決定していました。

5ナンバー車はエンジン排気量2.0リッター以下、全長4.7m以下、全幅1.7m以下、全高2.0m以内という車格で、このうちどれか1つでも突出すると、3ナンバー車となってしまいます。

そのためエンジン排気量は2.0リッターでも、全幅が1.7mを超えると3ナンバーの自動車税(3.0リッター以下)81,500円を収める義務がありました。

いわゆる「ボディ3ナンバー」です。

しかし1989年の自動車税改正で、ボディサイズは自動車税の決定要因から除かれ、エンジン排気量によってのみ決定されることとなり、現代に至っています。

この自動車税改正以降、エンジンは2.0リッターでもワイドボディを纏う車が増加。

8代目トヨタ クラウンも、5ナンバーボディから3ナンバーボディに、モデルライフの途中で変更された1台です。

ただし、基本的には5ナンバー設計なので、ボディの幅を広げるためにドアサイドモールを分厚くしたり、フロントフェンダーパネルを膨らませるなどの簡易的なワイドボディとなっています。

この手法で製造された3ナンバークラウンは、当時3ナンバー専用車として開発されたセドリック/グロリア シーマに販売面で完敗し、シーマ現象の一因となりました。

海外仕様車と国内専用車の統合

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現在の日本車メーカーは、いずれもグローバル企業となっており、全生産台数のおよそ8割は海外仕様です。

なぜなら、国内で販売する2割の自動車のために、海外仕様と異なる自動車を販売するのは、経営上合理的ではないうえに、国内仕様車を製造するとなるとリスも伴います。

そのため近年、基本的な設計は海外仕様、国内仕様とも共通の自動車が販売されています。

その一例として挙げたいのが『トヨタ カムリ』です。

5ナンバーボディの5代目カムリを販売中の1996年、カムリの上級仕様としてカムリ グラシアが投入されました。

このカムリ グラシアこそ、海外で販売されていた仕様のカムリなのですが、2001年のモデルチェンジ以降、5ナンバーボディが製造されることはなく、海外仕様のボディと共通の3ナンバーサイズのカムリが代を重ねていきます。

ただカムリの場合は、5代目以前から海外仕様を別車種として、国内に導入してきた歴史もあります。

1987年に販売された3代目カムリには!2.0リッターV6を搭載した『カムリ プロミネント』というグレードが存在(ベースは初代レクサス ES)。

2~4代目レクサス ESは、ウインダムとして販売されていました。

ミドルサルーンからフラッグシップモデルへ!

マツダ MAZDA6セダン

マツダ MAZDA6セダン/©Copyright Mazda Motor Corporation. All rights reserved.

先ごろネーミングの変更が発表されたマツダ アテンザ、もといMAZDA 6。

アテンザは元々、マツダのミドルサルーンのカペラの後継車として!2002年に登場しました。

カペラ時代は全幅1,695mmの5ナンバー枠でしたが、初代アテンザは1,780mmとワイド化。

この理由の1つは、ミドルサルーンからフラッグシップサルーンへと大幅なコンセプト変更があったからです。

カペラ時代のマツダには、上級車としてルーチェ、センティア/アンフィニ MS-9、ユーノス800/ミレーニアとEセグメント車が豊富でしたが、いずれも2000年前後で製造終了。

カペラの後継車であるアテンザが、フラッグシップサルーンとして作り込まれて現行モデルの品質の高さにつながっていきます。

同じ例としては、スバル レガシィがあり、アルシオーネSVXが生産終了し、レガシィはワイド&高品質化の一路を辿っています。

まとめ

人気車がどんどん3ナンバー化され、5ナンバーにはコンパクトカーや一部Cセグメント車が残るばかりです。

日本国内でしか販売されないミニバンなどは、取り回しのしやすい5ナンバーサイズを頑なに守り続けていますが、衝突安全性や車内の居住性を考慮すると、3ナンバー枠へのサイズアップも致し方ないのかもしれません。

5ナンバー規格は都市にマッチするので、国産車メーカーには小さな高級車路線を復活させてほしいと思います。

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