かつて国産車メーカーの多くはさまざまな理由で複数の販売チャンネル(販売網)を持つことが多く、後にコスト低減と車種整理のためほとんどが1つのチャンネルに一本化されるまで、チャンネルごとの客層に合わせた多様な車種ラインナップを持っていました。1990年代のホンダでシビックとインテグラの中間的なファミリーセダンだった初代ドマーニもそんな1台で、当時はホンダクリオ店のみで販売されていたのです。
掲載日:2018/10/20
ホンダクリオ専売、コンチェルト後継の国内専用ファミリーセダン
1985年、ホンダベルノ店(1978年)に続き、ホンダプリモ店とともにホンダ第2・第3の販売チャンネル(販売網)として旧ホンダ店を分割独立し、『ホンダクリオ店』が誕生しました。
当初、1987年まで小型車はプリモ店ともどもシビックを販売していましたが、ホンダではイギリスのローバーと共同開発していた新型小型セダンをクリオ店専売車種に定め、シビックの後継として1988年に『コンチェルト』を発売します。
そして1992年11月に発売されたコンチェルト後継車はヨーロッパテイストあふれる日英共同開発車コンチェルトから一転、EG型シビックフェリオ(1991年9月発売)をベースとした国内専用ファミリーセダンとなったのを機に改名。
イタリア語で『明日』を意味する『ドマーニ』と名付けられて、再出発したのです。
ドマーニは、ホンダが欧州仕様シビックと共同開発した2代目ローバー400系とも縁戚関係にはありますが、基本メカニズムやホンダ製1.6リッターエンジン(ZC)に共通項があるくらいで、コンチェルト時代ほど濃い関係にはありません。
なお、基本的に輸出はされていませんが、乗用車の独自生産から撤退したいすゞに4代目『ジェミニ』としてOEM供給されています。
ポジションはシビックフェリオとアコ-ドの中間
初代ドマーニは1.5~1.8リッタークラスの小型4ドアセダンで、当時のホンダ4ドア車では『シビック以上アコード未満、インテグラ4ドアとほぼ同格』というポジションでした。
また、1.3~1.6リッタークラスのシビックより大きなエンジンを搭載して車体は若干大きくなり、インテグラには無い1.5リッターエンジンもラインナップ。
両車にDOHC VTECを搭載していないファミリーセダンです。
ちなみに、カタログでは『新開発1.6リッターVTECエンジン搭載』(『Vi』グレード)も売りにしていましたが、1980年代前半からあるZCをSOHC VTEC化したもので、初代ドマーニが初搭載です。
さらにホンダの可変バルブ機構『VTEC』を高性能化ではなく実用性や環境性能目的で搭載した『VTEC-E』版の1.5リッターエンジンD15Bを搭載するなど、実用性や環境性能に重きを置いた設計。
そしてプラットフォームはEG系シビックフェリオやDB系インテグラ4ドアと同一だったものの、バブル時代に開発されたモデルらしく専用の内外装で、シビックより上質な内装が与えられた贅沢な作りに、機能快適・安全快適・社会快適と3つの『快適』をパッケージング。
「環境にやさしいサイズで走って気持ちよく、安心感も高い、きもちいいセダンができました。」とアピールしています。
さらに、クラス初の運転席用SRSエアバッグが全車標準装備され、4輪ABSやトラクションコントロールをグレードによりオプション装着可能な事を売りにしていたので、安全性にかなり気を使ったモデルである事は確かでした。
主なスペックと中古車相場
ホンダ MA5 ドマーニ Si-G 1992年式
全長×全幅×全高(mm):4,415×1,695×1,390
ホイールベース(mm):2,620
車両重量(kg):1,100
エンジン仕様・型式:B18B 水冷直列4気筒DOHC16バルブ
総排気量(cc):1,834
最高出力:103kw(140ps)/6,300rpm
最大トルク:171N・m(17.4gm)/5,000rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:FF
中古車相場:12万円
まとめ
名車EG系シビックの兄弟車で、インテグラと同クラスの1.8リッターエンジンまで搭載してた初代ドマーニですが、当時のホンダらしくDOHC VTEC搭載スポーツグレードが皆無だったためか、今ひとつ地味な印象です。
プリモ店のシビック、ベルノ店のインテグラに対してクリオ店専売のドマーニでDOHC VTEC仕様を追加しなかった理由は定かではありません。
当時のホンダとしては『せっかく3チャンネルに分けたのに、どこでもホンダらしいスポーツモデルを要求される』という状況に困惑して、何とかそこから脱却したかったのでしょうか。
その前にオデッセイやステップワゴン、CR-Vといったクリティブ・ムーバーシリーズが売れてしまったので、結果的に4ドアセダンでチャンネルごとの差別化も、さらには3チャンネル体制すらも必要無いという結論に達します
しかしそれが確定するまではもう少し間があり、2代目ドマーニの時期には『3チャンネル時代末期の狂想曲』が起きるのでした。
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