日産車の現行モデルの中ではフーガが残ってはいるものの、日本で高級サルーンを生産・販売しているというイメージが薄い日産。しかし、かつてはセドリック / グロリア、通称『セドグロ』という両雄が、ライバルであるトヨタ クラウンに食い下がっていました。合併前のプリンス出身だったグロリアに対し、日産生え抜き、戦後初の高級セダンとして登場したのが初代日産 セドリックです。
掲載日:2018/05/10
初代日産 セドリックとは?
戦前からのダットサン車の流れを組むダットサン 110 / 210などを作りつつ、より高度な自動車技術を求めて英オースチンのA40サマーセット / A50ケンブリッジのライセンス生産を行っていた戦後の日産自動車。
最初は輸入部品を組み立てるノックダウン生産から始まりますが、やがて全ての部品を国産できるようになると、戦後日産初の高級セダンを開発することに。
そして、ライバルのトヨタ クラウンから5年遅れの1960年4月に発売されたのが初代セドリックで、縦目4灯式ヘッドライトを持つ重厚感あふれるデザインとサイドまで回り込む曲面を持ったフロントガラスが装着された立派な4ドアセダンでした。
また、まだブルーバードやフェアレディも含めダットサン トラック系のシャシーを使った自動車を作っていた中で、日産初、そして国産同クラス初のモノコックボディという野心作でもあり、5ナンバーサイズの拡大やライバルに対抗する最高級モデル開発などで大型化や派生モデルを追加しつつ1965年まで作られ、初代ブルーバード(1959年)などとともに戦後日産の礎となったのです。
5ナンバーサイズ拡大で登場したセドリック カスタム
発売早々に小型自動車(5ナンバー乗用車)の枠が拡大されることとなったため、それに合わせて大排気量化とストレッチ(ボディ延長)されたのがセドリック カスタムでした。
元々生産していたオースチン1H型エンジンを参考にした1.5L直4OHVエンジンを搭載していたセドリックですが、大排気量化にあたっては旧オオタ自動車系(当時は東急くろがね工業、現在の日産工機)のH型1.9L直4OHVを搭載。
88馬力と当時としては立派な出力を発揮するとともに、ホイールベースおよび全長を100mm延長し、キャビンにも高級車らしい余裕を作り出す事に成功。
1962年4月にはステーションワゴンとバンが追加され、同年10月には30型から31型へとマイナーチェンジ。
縦目4灯から横並び4灯式ヘッドライトに変更されて、フロントマスクの印象は大きく変わります。
また、ホイールベースはさらに60mm延長されて当時の国産同クラス車の中では最長(2,690mm)を誇り、国産初のトルコン式3速AT(1964年7月)やパワーシートの採用など、快適性や滑らかな走りで高い評価を得ていきました。
また、1964年6月には2Lディーゼルエンジン車も追加されています。
後のプレジデントの原型、聖火も運んだセドリック スペシャル
1963年2月にはホイールベースをさらに145mm延長(2,835mm)。
堂々たるボディのボンネット下には115馬力を誇る2.8L直6OHVのK型エンジンを搭載したセドリック スペシャルが登場します。
これは、トヨタ クラウンエイト(1964年4月)、プリンス グランドグロリア(1964年5月)に先立つ国産初の本格大型乗用車(3ナンバー車)で、全幅こそ5ナンバー枠を超えていなかったものの、その堂々たる巨躯は輸入高級車にも負けないほどでした。
また、1964年に開催された東京オリンピックでは聖火搬送という重責も果たし、まさに当時の国産フラッグシップ車。
このセドリック スペシャルが後に、日産のVIP車プレジデントに発展していくことになるのです。
主要スペックと中古車相場
日産 30 セドリック デラックス 1960年式
全長×全幅×全高(mm):4,410×1,680×1,520
ホイールベース(mm):2,530
車両重量(kg):1,195
エンジン仕様・型式:G 水冷直列4気筒OHV8バルブ
総排気量(cc):1,488
最高出力:71ps/5,000rpm(グロス値)
最大トルク:11.5kgm/3,200rpm(同上)
トランスミッション:コラム4MT
駆動方式:FR
中古車相場:100万~196.5円(各型ほぼ流通無し)
まとめ
初代セドリックは、5ナンバー枠が現在と同じになり、トヨペット クラウン(2代目・1962年)、プリンス グロリア(2代目・1962年)、いすゞ ベレル(1962年)、三菱 デボネア(1964年)といったライバルが出揃った1962年以降、激烈な競争を戦い抜きました。
結果としてクラウンともども長らく生き残ることになりますが、初代モデルの時期は付加価値を高めるため矢継ぎ早の装備やモデルの追加、派生型の開発が行われていたことがわかります。
また、大衆車のブルーバードとは違った意味で戦後近代日産の祖と言える初代セドリック。
特にオリンピックで聖火を運んだセドリック スペシャルは日本の戦後復興を示すシンボル的存在であり、セドリックと日産がその栄光を担った時期があったという証人でした。
次の2020年の東京オリンピックでは、どんな車が聖火を運び、後世に語り継がれることになるのか、今から楽しみです。
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