トヨタがダイハツからOEM供給を受け、1999年から2006年まで販売したコンパクトSUV、キャミは、車としてはダイハツ テリオスそのものでしたが、キャミ自体がどんな車かよりも、最強のキモカワ系CGキャラ『ダンシングベイビー』のインパクトで一大ムーブメントを巻き起こした、『CMで歴史に残った車』でした。そんなCMの実現には企画会議での思わぬ一言があったのです。

掲載日:2018/10/19

トヨタ キャミ / 出典:http://cdn.toyota-catalog.jp/catalog/pdf/cami-u/cami-u_200201.pdf

 

トヨタが久々に販売したコンパクトSUV、キャミ

トヨタ キャミ / 出典:https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/vehicle_lineage/car/id60004485/

 

かつてトヨタは、1980年からブリザードという小型4WDオフローダーを販売するためにダイハツからタフト(初代)、ラガー(2代目)と2代続けて供給を受けていました。

そして同時期のRVブーム(RV=レクリエーショナル・ビークル)に応じたラインナップの拡充により、当時のヘビーデューティー系4WD車、40系や70系ランドクルーザーの弟分としてトヨタビスタ店で販売していたのです。

しかし、パジェロなどRVで優勢なライバルに対抗するライト感覚の4WDは70系ランドクルーザープラド(1990年発売)で本腰を入れる事となり、2代目ブリザードはプラドのショートボディを後継として1990年で販売を終了。

その後しばらくのブランクが生じますが、1998年9月に連結子会社化&トヨタグループ入りさせたダイハツの小型SUV、テリオス(1997年4月発売)をトヨタでも販売する事となり、約2年遅れの1999年5月にキャミとして発売。

基本的には1.3リッター自然吸気エンジン、または後に追加された同ターボエンジンを縦置きで搭載。

フルタイム4WDながらセンターデフロック機構を持ち、ビルトインラダーフレーム式モノコックボディで意外と本格的な悪路走破性能を持つ5ドアSUVでした。

 

今聞いた事は、全て忘れるように!

トヨタとしてはキャミをオフローダーというより『車高が高い一風変わったコンパクトカー』として売り出したかったようで、当時のカタログなどでもオフローダーらしい写真は全く使われていません。

また、TVCMもかなり変わったもので、当時海外ドラマ『メリーに首ったけ』で登場してコアな人気のあったキモカワ系CGキャラ、『ダンシングベイビー』を前面に押し出してCM自体にインパクトを持たせて売り出すような広告戦略が取られたのです。

その後、確かに多数のダンシングベイビーが踊り狂うCMはかなり話題になり、CM制作の舞台裏を明かすドキュメンタリー番組すら放送されました。

それによれば、CMを制作したのは広告代理店の電通。

企画会議でまず『キャミとはどのような車か』を一通り説明した上で、メンバーの注目を集めたチームリーダーがこう告げます。

「今聞いた事は、全て忘れるように!」

もしかすると広告代理店の企画会議としては普通なのかもしれませんが、かなり極端な形でキャミという車の宣伝を豪快に放り出していたのが、ダンシングベイビーのCMでした。

そして、そのCMはキャミとダンシングベイビーどちらのCMなのか、少なくともキャミがどういう車なのかはCMを見ても外観以上の事は何もわかりません。

しかし、当時はそれで良いという判断だったのです。

それは同時期にダイハツからOEM供給されていたデュエット(ダイハツ ストーリア)、スパーキー(同アトレー7)のCMと比べてもかなり異色で、自動車のCMとしてはかなり攻めた実験作でした。

 

主なスペックと中古車相場

トヨタ キャミ / 出典:https://www.favcars.com/pictures-toyota-cami-q-aero-version-j102-122e-1999-2000-417059.htm

トヨタ J100E キャミ Q “エアロバージョン”1999年式

全長×全幅×全高(mm):3,815×1,555×1,760

ホイールベース(mm):2,420

車両重量(kg):1,080

エンジン仕様・型式:HC-EJ 水冷直列4気筒SOHC16バルブ

総排気量(cc):1,295

最高出力:68kw(92ps)/6,500rpm

最大トルク:108N・m(11.0gm)/5,000rpm

トランスミッション:4AT

駆動方式:フルタイム4WD

中古車相場:15~58万円

 

まとめ

トヨタ キャミ / 出典:https://www.favcars.com/toyota-cami-j102-122e-1999-2006-wallpapers-185332-800×600.htm

 

ダイハツがトヨタグループ入りする前から軽自動車以外の販売にあまり熱心で無かったこともあり、結果としてキャミは少なくともOEM元のテリオスよりは売れました。

しかし、販売が終わった今、キャミの何が印象に残っているかと言えばダンシングベイビーの方かもしれません。

踊ったり哺乳瓶でミルクを飲んだり、笛を吹きながらスケート、スノーボードを履いてスカイダイビングするなどダンシングベイビーが大暴れする真ん中に、そういえばキャミがいたような?場合によってはそういえば最後にキャミが登場したような?そんな記憶がうっすら蘇ります。

そんなキャミも、『街の遊撃手』いすゞ ジェミニ同様、CMで歴史に残る車だったのです。

出典:https://www.youtube.com/watch?v=rVSdZEz4Hak

 

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