現在はさほどでもありませんが、1990年代から2000年代あたりのスズキは、時々アッと驚く車を突然発売して人々を驚かせるクセがありました。そして事前に各地のモーターショーで出展していたとはいえ、2シーターTバールーフクーペSUVを本当に発売したX-90も、まさに人々の度肝を抜く1台でした。
掲載日:2018/10/14
あれはまさか?!と指差したくなる衝撃作、スズキX-90デビュー
1993年の東京モーターショー、スズキブースで1台のスポーティな車が輝きを放っていました。
最低地上高が高く大径タイヤ、悪路走行時の傷から守ってくれそうなバンパーガードなど樹脂製パーツを見る限り、それはどうやらまだ流行が続いていたRV(レクリエーショナル・ビークル)の一種です。
少し変わっていたのはそのRVが独立トランクを持つ3BOXボディで、コンパクトゆえ後席が無い2シーターのキャビンは、Tバールーフでオープンエアを楽しめるようになっていました。
ユーノス ロードスター(当時)の登場以来、にわかに流行り出した新型オープンスポーツの一種か、それとも新型RVのデザインスタディか。
一風変わったコンセプトカーは『X-90』と名付けられていましたが、1993年の東京モーターショー出展車を見ると、X-90が特別だったわけではありません。
【東京モーターショー1993の変わり種RVコンセプトカー】
- スバル スイレン:脱着キャビンでピックアップとワゴンを兼ねられるレジャー用RV。
- 三菱 パジェロフィールドガード:オープンボディのクロスギア風パジェロ。
- 三菱 リンクス:パジェロミニ原型だが、この時は軽オープン2シーター。
この3台と並び、X-90も「まあコンセプトカーだからね。」と、モーターショーに華を添える1台だと思われていたと思います。
しかし、その割にはショー向けの装飾を除けば妙に完成度が高く、エスクードがベースなので現実味が強すぎるような気もしました。
とは言えその頃トヨタブースには、『クロスオーバーSUV』というロングヒットジャンルの始祖となった初代RAV4が展示されており、それが4人乗りだったため、本命はこれだろうと誰もが思ったはずです。
しかし、X-90は海外のモーターショーに展示した際得られた、予想以上の好評に応えるべく、1995年10月、本当に発売されました。
それも驚いたことに東京モーターショー1993に展示された、ほぼそのままの姿だったのです。
2シーターオープンスポーツとRV、混ぜるとどうなる?
大雑把に言えば、X-90は当時のスズキで代表的なコンパクトRV、初代エスクードがラダーフレーム上に別体ボディを載せる本格オフローダー構造なのを活かし、カクカクした2BOXオフローダーボディに代え、3BOXスポーツクーペボディを載せたものです。
Tバールーフでオープンエアを楽しみつつ、取り外されたルーフも左右で分割されているのでコンパクトにトランクへ収まります。
そして、既に登場していたロングボディのエスクード ノマド用シャシーではなくショートボディをベースにしたので、後席は設けられずトランクスペースもそう広くはありませんでしたが、2シーターなら2人分の荷物が載れば問題ありません。
オン/オフ双方での動力性能、走行性能も初代エスクードが同じ1.6リッターガソリンエンジンを搭載し、1988年に発売されて以来のものなので、舗装路であれ悪路であれ心配する必要は無し。
ただ唯一問題だったのは、『そもそもこれはRVなのか、スポーツカーなのか?』と、誰もが戸惑ってしまったことです。
RVとしては多人数乗車や限られた積載能力が問題で、2シータースポーツカーとしては重くて動力性能も必要十分程度。
何より、過去にここまで『RVとしてもスポーツカーとしても、どちらもソコソコ楽しめる』車が無かったので、イメージするのは困難でした。
その原因がコンセプトの煮詰めが不十分なまま発売を急いでしまったのだとすれば惜しいことで、例えばRVとオープンエアを両立したいのであれば、三菱から1993年8月に『RVRオープンギア』(下画像)が既に発売されていました。
簡単に説明するとボディ形状はそのまま、つまり1人が乗れる後席やラゲッジはそのままで、前席の電動ルーフが開きオープントップを満喫できる仕様となっていたので、X-90もエスクード ノマドをベースとすれば、実用性とオープンエアの両立をユーザーに納得させられたかもしれません。
主なスペックと中古車相場
スズキ LB11S X-90 1995年式
全長×全幅×全高(mm):3,710×1,695×1,550
ホイールベース(mm):2,200
車両重量(kg):1,080
エンジン仕様・型式:G16A 水冷直列4気筒SOHC16バルブ
総排気量(cc):1,590
最高出力:74kw(100ps)/6,000rpm
最大トルク:137N・m(14.0gm)/4,500rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:パートタイム4WD
中古車相場:53~55万円
まとめ
X-90は日本市場というより海外市場を意識したモデルだったので、ある意味日本で売れなくとも構わないいう思惑もあったかもしれず、実際にアメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアへ輸出されました。
中でも、もっとも多く輸出されたのはアメリカだったようですが、生産終了までの販売実績は世界中合わせても1万台に達しなかったと言われており、ことに日本では1,348台にとどまったそうで、発売からわずか2年2が月後、ひっそりと生産を終了したのは、それが理由でした。
その後もいすゞがビークロスVX-O2で『2シーターオープンSUV』を試みるも市販されずに終わり、市販SUVオープンモデルはどれもほとんどが2列シート4シーター車です。
何しろ新車販売当時ですら見かけることは稀なレア車でしたが、最近はダイハツ コペンXPLAYのリフトアップ&4WDカスタム仕様も存在し、他にも軽トラのレジャー用リフトアップ車など、レジャー用2シーターSUV市場は根強く残っています。
そこに、エスクード譲りの悪路走破性能を持つX-90で乗りつければ、ちょっとばかり自慢できるチャンスです。
とはいうものの、残念ながら中古車市場でも絶滅危惧種なので、思い立ったらすぐ購入した方がいいかもしれません。
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