日本では『初代いすゞ ジェミニのベース車』として4代目(カデットC)の知名度が高いオペル カデットですが、そもそもはGMグループ時代のオペルが作った『国民車』的な大衆車でした。その歴史は第2次世界大戦以前から始まっており、1936年に登場したのが初代カデットです。

掲載日:2018/09/09

初代オペル カデット /  Photo by Mic

 

ビートルへ対向すべく開発された、戦前ドイツの大衆車『カデット』

初代オペル カデット/ Photo by Tobias Nordhausen

 

1899年に自動車産業へ進出したドイツのオペル社は、かつてダイムラー ベンツなどにも匹敵する有力な自動車メーカーでしたが、第1次世界大戦(1914-1918)後の大不況で外資を受け入れざるをえなくなり、1931年には米GMの完全子会社化。

子会社化以降もドイツで有力な乗用車・トラックメーカーとして存続し、日本でも米GMが販売を行うなど輸出にも力を入れていました。

しかし、1933年にドイツでヒトラー率いるナチス(国家社会主義ドイツ労働者党)が政権を取って独裁体制のナチス ドイツが始まると、ヒトラー総統による画期的なインフラ構築(アウトバーンの建設)や国民車構想によって、オペルは危機感を強めます。

なぜなら、フェルディナント・ポルシェ博士が開発していた『KdF-Wagen(後のVW タイプ1″ビートル”)』という安価で高性能という革新的な国民車の登場が間近となった一方、当時のオペル最廉価モデル『P4』はあまりにも旧態依然としていたからです。

そのため、来たるべく『国民車時代』に備えたオペルの回答として開発されたのが初代カデットで、1936年に発売されました。

 

ドイツからGM撤退で生産終了、戦後は旧ソ連のモスクビッチ車へ

戦後カデットの生産設備を使ってソ連で生産された、モスクヴィッチ400または401 / Photo by patrick janicek

 

初代カデットは外観上、未だボディから独立してフロントタイヤを覆うフェンダーを残すなど、部分的に古めかしいデザインは残っていましたが、モノコックボディや独立懸架フロントサスペンション、ボディと一体化したヘッドライトなど革新的な部分もありました。

また、エンジンも旧式なサイドバルブ式で23馬力しか無かったものの、ボディは軽かったので100km/h近い最高速度も発揮可能で、KdF-Wagenが1938年に完成する前のドイツ車、ことに大衆車としては十分に先進的な存在だったと言えたのです。

しかしドイツのポーランド侵攻で第2次世界大戦が勃発すると(1939年9月)、ナチス ドイツは次第に戦時体制を強めていき、トラックや装甲車など軍需に専念させるため、1940年にはGMからオペルを取り上げてしまいました。

そのため初代カデットはアッサリ生産中止となってしまい、イタリアのフィアット500(トッポリーノ)などが戦後も長らく作られたのとは異なり、東西から連合軍の侵攻を受けて1945年5月にドイツが無条件降伏すると、設計図や金型、生産設備はソ連に持ち去られてしまいます。

その後1947年にモスクワ近郊のMZMA(モスクワ小型自動車工場)で生産を再開したカデットは、『モスクヴィッチ400シリーズ』として主に4ドアセダンを中心にワゴンやコンヴァーチブルも含め、1955年まで生産されました。

 

主なスペックと中古車相場

初代オペル カデット / © TOYOTA MOTOR CORPORATION.All Rights Reserved.

 

オペル カデット(初代) 2ドアセダン 1936年式

全長×全幅×全高(mm):3,810×1,375×1,505

ホイールベース(mm):2,337

車両重量(kg):757

エンジン仕様・型式:水冷直列4気筒SV8バルブ

総排気量(cc):1,073

最高出力:17kw(23ps)/3,400rpm

最大トルク:59N・m(6.0kgm)/2,000rpm

トランスミッション:3MT

駆動方式:FR

中古車相場:皆無

 

まとめ

草ヒロ化した初代オペル カデット / Photo by spline splinson

 

画期的なKdF-Wagen登場以前としては先進的、かつエンジンなどは古かったため低コストで生産・販売できた初代カデットは、2ドアセダン、4ドアセダン(リムジン)、コンヴァーチブルなどが生産され、初期の『国民車』としての地位を得ました。

ただ、戦後は生産が容易な事が災いしたのと、あまりに革新的かつナチスドイツ的とみなされたゆえかソ連の占領軍がKdF-Wagenに関心を示さず、フォルクスワーゲン・タイプ1として再生できたのとは異なり、戦時賠償で全てをソ連に持ち去られてしまいます。

そのため戦前の名車としてはかなり短命に終わってしまった悲劇の車が初代カデットでしたが、オペル自体は1948年に米GMが経営権を回復した事で存続。

1962年に、2代目カデットが22年ぶりの登場を果たしました。

 

[amazonjs asin=”B00IP9OWZ2″ locale=”JP” title=”シュコー 1/43 オペル カデット B トレーラーハウス付 完成品”]

Motorzではメールマガジンを配信しています。

編集部の裏話が聞けたり、最新の自動車パーツ情報が入手できるかも!?

配信を希望する方は、Motorz記事「メールマガジン「MotorzNews」はじめました。」をお読みください!