人気のテンロクスポーツとして、気持ちよく回るエンジンと優れたハンドリングで好評を得たのが、2代目以降のスズキ「ZC」系スイフトスポーツです。そんなスイフトスポーツの歴史を、1.4リッターターボ化された現行ZC34Sまで、まとめて紹介します。

スズキ ZC33S スイフトスポーツ /出典:https://www.suzuki.co.jp/car/swiftsport/styling/

GMの手を離れたスズキの新たな国際戦略車は、「CONCEPT-S」から始まった

スズキ コンセプトS(2002) /出典:https://www.suzuki.co.jp/release/d/d020927.htm

2000年代に入り、段階的に提携関係を解消するまでのスズキは、アメリカのGMグループにおけるコンパクトカー部門という役割を担っていました。

そして、その時代のスズキに求められたのは、「高品質より、とにかく安くてよく走る車」でした。

そのため、初代スイフトまでのスズキ車は、あくまで「安いなりな車」が多く、カルタスGT-iのように特殊なスポーツグレードを除けば、ユーザーを熱狂させるというより「安いから選ばれる車」を多数ラインナップしていましたが、それがスズキの真の実力だったわけではありません。

もはやGMへの遠慮が不要とみるや、スズキはただちに独自の国際戦略車計画を開始。2002年のパリモーターショーに、「CONCEPT-S」という新時代の小型コンセプトカーを出展します。

CONCEPT-Sは全長3,650mm、全幅1,730mmと、後の2代目スイフトにオーバーフェンダーを組んでワイドトレッド化したような見ためで、1.6リッターDOHC自然吸気エンジンに6速シーケンシャルミッションを組み合わせたフルタイム4WDのコンパクトスポーツというコンセプトで制作されました。

スズキ コンセプトS2(2003) /出典:https://www.suzuki.co.jp/release/d/d030821.htm

翌2003年にはフランクフルトと東京のモーターショーでも、FFの4人乗りコンバーチブル版「CONCEPT-S2」を出展。フランクフルトでは2004年に量産モデルをハンガリーで生産開始する旨が、アナウンスされます。

スズキ コンセプトS2(2003) /出典:https://www.favcars.com/photos-suzuki-concept-s2-2003-369420.htm

これが2代目スイフトとして日本でも生産・販売されたわけですが、4WDやコンバーチブルといった要素は採用されなかったものの、1.6リッターDOHCエンジンを搭載した本格スポーツモデルが、この後に控えていたのです。

不完全燃焼だった初代から一転!大絶賛された2代目ZC31Sスイフトスポーツ

スズキ ZC31S スイフトスポーツ(2代目) / Photo by FotoSleuth

2004年11月に発売されるや、「スズキがこんな高品質なコンパクトカーを作れたのか!」と世間を驚かせた2代目スイフトのデビューから10ヶ月後、CONCEPT-SとCONCEPT-S2の現実的な部分を組み合わせた本命スポーツモデル、2代目「スイフトスポーツ」が2005年9月に発売されたのです。

初代スイフトにも、1.5リッターエンジンを搭載したスポーツモデルとして、「スイフトスポーツ」は存在しました。

しかし、ベース車のポテンシャル不足により、さっぱり上まで回らないエンジンと酷評されていたことや、リッター100馬力オーバーが当たり前だった1990年代の高回転高出力テンロクスポーツ時代の印象をまだ引きずっていた時期に、125馬力というエンジンスペックは物足りない印象で、当初2代目にも疑心暗鬼の視線が向けられます。

その当時はホンダ フィット、三菱 コルト、マツダ デミオ、トヨタ ヴィッツといった1.3リッター級コンパクトカーへ、やや格上の1.5リッターエンジンを搭載し、MTと組み合わせた「テンゴ」スポーツ文化が花開こうとしていたところだったので、何か空気を読まない新型車がデビューしたぞ、という雰囲気すらあったかもしれません。

そのため、まあせいぜいプラス100ccの余裕でちょっといい走りをすれば上等、くらいに思われていましたが、いざ乗ってみるとピークパワーこそないものの軽快に吹け上がるエンジンや、意のままに操れる感覚のハンドリングによって、「最高のコンパクトFFスポーツ登場!」と大絶賛されることになります。

それでもまだ疑っていたユーザーも、一度ステアリングを握るや絶賛に転じ、その瞬間に、あれほど盛り上がっていた「テンゴ」スポーツの時代は終了。スイフトスポーツの時代が始まったのです。

スズキ ZC31S スイフトスポーツ(2代目) / 出典:https://mos.dunlop.co.jp/archives/dirttrial/race-data/report_dirttrial_4_20110710.html

そのステージはストリートのみならず、ジムカーナ、ラリー、ダートトライアルといった参加型モータースポーツにも拡散され、FFコンパクトスポーツはほんとスイフトスポーツ一色に塗られていきました。

なお、日本国内で販売されたのは5ドアの「ZC31S型」のみで、ヨーロッパなどの海外で販売されていた3ドアの「ZA31S型」は販売されず、現行の4代目までその状態が続いています。

ZC31Sスイフトスポーツ・主要スペックと中古車価格

スズキ ZC31S スイフトスポーツ(2代目) / 出典:https://www.favcars.com/suzuki-swift-sport-2005-11-wallpapers-370054.htm

スズキ ZC31S スイフトスポーツ 2005年式
全長×全幅×全高(mm):3,765×1,690×1,510
ホイールベース(mm):2,390
車重(kg):1,070
エンジン:M16A 水冷直列4気筒DOHC16バルブ
排気量:1,586cc
最高出力:92kw(125ps)/6,800rpm
最大トルク:148N・m(15.1kgm)/4,800rpm
10・15モード燃費:13.6km/L
乗車定員:5人
駆動方式:FF
ミッション:5MT
サスペンション形式:(F)ストラット・(R)トーションビーム


(中古車相場とタマ数)
※2021年1月現在
9.8~88万円・196台

2匹目のドジョウはさらに強烈だった!3代目ZC32Sスイフトスポーツ

スズキ スイフトSコンセプト(2011・ZA32S原型) / 出典:https://www.favcars.com/pictures-suzuki-swift-s-concept-2011-72838.htm

大絶賛されたスイフトスポーツは、2010年9月の2代目スイフトの販売が終了し、3代目にモデルチェンジされると同時に一旦販売を終え、約1年2ヶ月のブランクを経て、2011年11月にZC32S「3代目スイフトスポーツ」が発売されます。

おそらくは3代目スイフトの開発に専念してからスイフトスポーツに取り掛かったための時間差と思われますが、スカイラインGT-Rのように旧型が継続販売された訳でもなかったため、待たされていたユーザーは、「待った甲斐があった!」と喜びました。

一回り大きくなったものの、逆に軽量化されたボディにはVVT(可変バルブ機構)を加えて最高出力・最大トルクともに向上したM16Aエンジンが搭載され、組み合わせられるミッションも、この種のコンパクトカーでは珍しい6速MT!

オートマも4速ATからCVTへと変更され、スムーズな加速や良好な燃費はAT派ユーザーにも好評でした。

動力性能も運動性能も向上した3代目スイフトスポーツは、2代目からのキープコンセプトで正常進化を果たし、乗り換えるに値する車だったのです。

スズキ ZC32S スイフトスポーツ(3代目) 出典:https://mos.dunlop.co.jp/dzc/dzc2017/dzc-2017-2

モータースポーツでも、ZC31Sユーザーはこぞって3代目ZC32Sへと更新。今までと同じ1.6リッター自然吸気エンジン車のクラスへの参戦が可能だったため、全体的に走りのレベルが向上する結果となりました。

なお、ここまで他社ライバルが追従する動きはほとんどなく、日産が初代ノートに2008年に追加した1.6リッター車へ5速MTを設定したくらいでしたが、やはりこの代でもスイフトスポーツの独壇場は続きます。

2015年になって、マツダが4代目ロードスターに1.5リッターエンジンを搭載し、ライトウェイトFRスポーツの原点へ立ち返ると、さすがに本格FRスポーツにはやや分が悪くなり、特にジムカーナ競技ではすっかりシェアを奪われたものの、FF車の方が活躍できる分野なら、2021年現在もなお、バリバリの第一線マシンです。

ZC32Sスイフトスポーツ・主要スペックと中古車価格

スズキ ZC32S スイフトスポーツ(3代目) /出典:http://jaf-sports.jp/topics/detail_000344.htm

スズキ ZC32S スイフトスポーツ 2011年式
全長×全幅×全高(mm):3,890×1,695×1,510
ホイールベース(mm):2,430
車重(kg):1,050
エンジン:M16A 水冷直列4気筒DOHC16バルブ
排気量:1,586cc
最高出力:100kw(136ps)/6,900rpm
最大トルク:160N・m(16.3kgm)/4,400rpm
JC08モード燃費:14.8km/L
乗車定員:5人
駆動方式:FF
ミッション:6MT
サスペンション形式:(F)ストラット・(R)トーションビーム


(中古車相場とタマ数)
※2021年1月現在
35.5~174万円・333台

1.4ターボ化とワイド化で国際基準となった4代目ZC33スイフトスポーツ

スズキ ZC33S スイフトスポーツ(4代目) /出典:http://jaf-sports.jp/topics/detail_000061.htm

2017年9月にモデルチェンジした4代目では、それまでの1.6リッターDOHC自然吸気から1.4リッターDOHCターボへ換装。海外仕様のスイフトと同様のワイドフェンダーで3ナンバー化され、先代までとはカテゴリーも異なる「国際基準のコンパクトスポーツ」に進化します。

マツダ ロードスターのフィアット/アバルト版「124スパイダー」が1.4リッターターボを搭載していたように、ヨーロッパなど国際的にはこの種のエンジンが1.8~2リッター級自然吸気エンジンに代わるダウンサイジングターボエンジンとして一般的だったため、4代目スイフトスポーツもそれに追従した形です。

しかし、日本市場で販売されている国産車にはあまり馴染みがなく、特にモータースポーツではターボチャージャーを装着すると、ターボ係数1.7を排気量に掛け算せねばならない規則となっているため、1,371cc×1.7=2,330.7ccという扱いになってしまいます。

スズキ ZC34S スイフトスポーツ(4代目) 出典:https://www.jrca.gr.jp/6753

ここまで2代続けて、「気持ち良い自然吸気エンジンを積んだハンドリングマシン」として定着しており、がっかりしたユーザーも多数いましたが、低回転からのトルクの余裕はありがたく、先代よりパワフルになった上に車重はMT車で70kgも軽くなっているため、動力性能はかなり向上しています。

モータースポーツの世界でも、先代ZC32Sから乗り換えた、あるいは新たに手にしたユーザーによって、これまでより上位クラスでの格上マシンとの戦いが始まっており、ターボ化された新世代スイフトスポーツの戦いは、まだまだこれからです。

ZC33Sスイフトスポーツ・主要スペックと中古車価格

スズキ ZC33S スイフトスポーツ /出典:https://www.suzuki.co.jp/car/swiftsport/performance_eco/

スズキ ZC32S スイフトスポーツ 2021年式
全長×全幅×全高(mm):3,890×1,735×1,500
ホイールベース(mm):2,450
車重(kg):970
エンジン:K14C 水冷直列4気筒DOHC16バルブ ICターボ
排気量:1,371cc
最高出力:103kw(140ps)/5,500rpm
最大トルク:230N・m(23.4kgm)/2,500~3,500rpm
WLTCモード燃費:17.6km/L
乗車定員:5人
駆動方式:FF
ミッション:6MT
サスペンション形式:(F)ストラット・(R)トーションビーム


(中古車相場とタマ数)
※2021年1月現在
109~285万円・390台


電動化時代も生き残って欲しいコンパクトスポーツ

スズキ ZC33S スイフトスポーツ 出典:https://www.suzuki.co.jp/car/swiftsport/styling/

1990年代のパワー競争から一転、環境性能重視の時代となり、コンパクトスポーツは成立しにくく、せいぜい量販モデルへちょっと格上のエンジンを積み、MTと組み合わせる程度と思われていた2000年代。

そこに現れた2代目以降のスイフトスポーツは、安くスポーティな車に乗りたいというユーザーにとって、まさに救世主的な存在でした。

そして2020年代に入った現在、2030年代半ばには純ガソリンエンジン車の新車販売ができなくなり、ほとんどの新車には何らかの電動化が求められる流れです。

そんな時代でも、2代目スイフトスポーツが登場した時のように、「いくらでもやりようがあるんだよ!」と道を開けるのかどうか。

まずはその時までスイフトスポーツが生き残り、ユーザーへ走りの楽しさを伝え続けていてほしいと思います。

 

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