全日本ジムカーナ / 全日本ダートトライアルのPN1クラスや全日本ラリーのJN1クラスで広く使われているFFエントリースポーツと言うとどんな車種を思い浮かべますか?3代目ZC32Sスイフトスポーツではないでしょうか。まだ2代目のZC31Sも数多く走っていますが、4代目ZC33Sが1.4リッターターボ搭載で格上になったこともあり、ZC32SがまだまだFFエントリースポーツ最強として活躍しています。

掲載日:2018/12/04

スズキ ZC32S スイフトスポーツ / 出典:http://www.jrca.gr.jp/5252

 

外観はキープコンセプトながら、中身が大きく変わった3代目スイフト

 

スズキ ZC32S スイフトスポーツ / Photo by Autoviva

 

2000年に初代モデルがデビューしたスズキ スイフトは当初、先代にあたるカルタス同様「軽自動車より安価な小型車」として、それほどインパクトのある車ではありませんでした。

それが一変したのはスズキの戦略方針見直しで、高品質コンパクトを追求した国際戦略車になった2代目(2004年登場)から。

既に初代から設定されていたスポーツモデル、スイフトスポーツも2代目からはスペックはともかく「よく回るエンジンとハンドリングが楽しい車」として大好評となります。

2010年には3代目へモデルチェンジしますが、前後の灯火類がやや大きくなるなど細かい変更を除けばデザインはキープコンセプトとなっており、慣れない人が2代目と3代目を一目で識別するのは難しいほど。

しかし、中身は軽量&高剛性の新型プラットフォームに換装した上でホイールベース(前後タイヤ間隔)やトレッド(左右タイヤ間隔)を拡大。

直進安定性やコーナリング性能といった走行性能に加え、車内スペースにも余裕を産む贅沢な改良が施されていたのです。

ベース車の贅沢なモデルチェンジにはスイフトスポーツが好評を受けた事によるスポーティなイメージ戦略も後押ししており、随って3代目スイフトスポーツも、ベース車同様「中身は一変」と呼べるほどの改良を受けたのでした。

 

3代目ZC32Sスイフトスポーツ、2代目ZC31Sからどう進化したか?

 

スズキ ZC32S スイフトスポーツ /  出典:http://www.jrca.gr.jp/5011

 

ベース車からやや遅れて2011年にフルモデルチェンジを受けた3代目ZC32Sスイフトスポーツですが、これも外見上は「ビックマイナー?」と言いたくなるほど違いはわずかです。

しかし中身はやはり大きな進化を受けており、2代目ZC31Sと比べて以下のような改良を受けました。

・M16Aエンジンは改良を受け、最高出力125馬力 / 最大トルク15.1kgmから、同136馬力 / 16.3kgmにパワーアップ。

・5速MTから2~5速のギア比を近づけクロスレシオ化した6速MTに換装。

・4速ATはベース車同様副変速機付きCVTとして高効率化し、パドルシフトによる7速マニュアルモードを設定、6速MTともどもスイフトスポーツ専用。

・フロントサスペンションはストラットを大径化してリバウンドスプリングを内蔵。

・リアサスペンションも戦果維持の安定性を高めた専用設計。

・6MT車で車重を10kg軽減するとともに、ホイールやタイヤ、ブレーキなどの軽量化でバネ下重量を軽減(2013年7月の改良でカタログ上はさらに10kg軽量化)。

 

スズキ ZA32S スイフトスポーツ(3ドア欧州仕様) /  出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Suzuki_Swift

 

これで、初代以来途絶えていた欧州仕様の3ドアハッチバックモデルが復活すれば、さらに軽くてスポーツ性イメージも向上!するところでしたが、さすがに日本市場では実用性との兼ね合いで後席ドアは無いと厳しいと考えられたのか、5ドアのみなのは少々残念でした。

それでも高効率化や軽量化により、走行性能の向上と環境性能(燃費)向上を両立させたZC32Sは、先代ZC31Sから十分に性能アップしたと言えるのです。

 

ライバルより安いのも魅力!

 

スズキ ZC32S スイフトスポーツ /  出典:http://mos.dunlop.co.jp/dirttrial_podium/dirttrial-2016-jafcup

 

しかも、1.6リッター国産スポーツハッチバック車で、ZC32Sに匹敵するスペックを持つライバルはごくわずか。

近いものとしては、NISMOチューンで最高出力140馬力 / 最大トルク16.6kgmと、ZC32SのM16Aを若干上回るスペックの1.6リッターエンジンに5速MTを組み合わせた、日産 E12改 ノート NISMO Sがあります。

また、1.5リッタークラスながら132馬力 / 15.8kgmのDOHC VTECエンジンL15Bを搭載した、ホンダ GK5 フィットRSもライバルと言えるかもしれません。

輸入車ではR56ミニなどに1.6リッターNA(自然吸気)エンジンがありますが、少々重い上にスポーツグレードはターボ化や大排気量化でよりパワーアップしているので、ZC32Sスイフトスポーツとはちょっと格が違います。

何よりZC32Sスイフトスポーツの優れたところは、これらライバルに対して「圧倒的に安い」ということです。

それでは、ちょっと比較してみましょう。

・スズキ ZC32S スイフトスポーツ(1.6L・6MT):172万8,000円(※モデルチェンジ前最終価格)

・ホンダ GK5 フィットRS(1.5L・6MT):192万6,000円(※2017年6月に安全装備ホンダセンシングを標準装備する前の価格)

・日産 E12改造 ノート NISMO S(1.6L・5MT):232万8,480円(2017年10月現在)

・マツダ DJLFS デミオ 15MB(1.5L・6MT):153万3,600円(同上)

・トヨタ NCP131 ヴィッツRS(1.5L・5MT):188万3,127円(廃止前の2015年6月時点)

※メーカー公式HPまたは大手中古車情報サイトでの検索結果

国産同クラスライバルと比較すれば、競技ベースモデルのデミオ15MBを除けば、圧倒的安さです。

「安くて運転が楽しく、実用性もある車が欲しい!」

そう思った時に、これほどありがたい車は無い!というのがZC32Sスイフトスポーツの持ち味と言えるのではないでしょうか。

 

モータースポーツでの活躍

 

スズキ ZC32S スイフトスポーツ /  出典:http://jaf-sports.jp/topics/detail_000003.htm

 

2代目ZC31SまではJWRC(ジュニア世界ラリー選手権)に参戦するマシンへスズキからのサポートが続いており、スイフト・スーパー1600が(初代はイグニス・スーパー1600として)参戦していました。

しかし、2008年の1年限りでSX4で参戦していたWRC(世界ラリー選手権)から撤退。

JWRCもフォード・フィエスタR2でのワンメイクラリー、WRCアカデミーに移行したため、ラリーなどでの活躍としては、イタリアなど国内のローカルラリーなどに使われているに留まります。

また、ZC31Sはオーストラリアやニュージーランドでのワンメイクレースが盛んでしたが、こちらはZC31Sが使われ続けたようです。

そのような事情もあり、ここでは主に国内モータースポーツで数多く活躍するZC32Sを紹介します。

 

ジムカーナ

 

スズキ ZC32S スイフトスポーツ /  出典:http://mos.dunlop.co.jp/gymkhana_podium/gymkhana-2016-3

 

排気量1,600cc以下でFFまたはFRのPN車両(改造可能範囲の少ない競技車両)で戦われる全日本ジムカーナPN1クラスは、その当初から2代目ZC31Sスイフトスポーツのワンメイクに近い状態でしたが、3代目ZC32Sの登場と同時に乗り換える選手が多数発生。

そのため2016年まではZC32Sが主力、ZC31Sもまだ残っていてあとはフィットRSが少々…という車種構成でした。

ただし、同年から参戦を開始した1.5リッターFRスポーツのマツダ NDロードスターが軽量低重心を活かして活躍しており、次第に台数を増やして今後の主力車種になりそうな勢いです。

それでも安価で蓄積されたノウハウがあり、FF車を好むユーザーにとってはZC32Sはまだまだ魅力的な存在なので、しばらくはその姿を見られると思います。

 

ダートトライアル

 

スズキ ZC32S スイフトスポーツ  / 出典:http://mos.dunlop.co.jp/dirttrial_podium/dirttrial-2016-8

 

ジムカーナと同じく全日本ダートラ(ダートトライアル)でもPN1クラス(1,600cc以下で2輪駆動のPN車両)の主力はZC32Sスイフトスポーツです。

しかし、ZC31Sはもちろんデミオやフィット、CR-Zなども参戦していて、上位入賞組のほとんどはZC32Sですが、勢力的には圧倒的多数とはいきません。

ただし、ジムカーナと異なりNDロードスターの参戦は見られないことや、有力な1,600cc以下の新型車が登場する予定も無いことから、今後もしばらくは「ダートラPN1クラス最強マシン」として君臨するのではないでしょうか。

 

ラリー

 

スズキ ZC32S スイフトスポーツ /  出典:http://www.jrca.gr.jp/4917

 

1,600cc以下の2輪駆動車で改造制限が厳しいRPN車両、およびハイブリッド車やEVのAE車両で戦われる全日本ラリーJN1クラスでも、ZC32Sは活躍中です。

台数としては比較的多い方ではありますが、ダートラ同様にフィットやデミオ、ノート NISMO S、そしてもちろんZC31Sも参戦しており、激しいクラス上位争いを繰り広げています。

 

スズキ ZC32S スイフトスポーツのスペックと中古車相場

 

スズキ ZC32S スイフトスポーツ  / 出典:http://mos.dunlop.co.jp/gymkhana_podium/gymkhana-2016-8

 

スズキ ZC32S スイフトスポーツ ベースグレード(6MT) 2016年式

全長×全幅×全高(mm):3,890×1,695×1,510

ホイールベース(mm):2,430

車両重量(kg):1,040

エンジン仕様・型式:M16A 水冷直列4気筒DOHC16バルブ VVT

総排気量(cc):1,586cc

最高出力:136ps/6,900rpm

最大トルク:16.3kgm/4,400rpm

トランスミッション:6MT

駆動方式:FF

中古車相場:65.5~228万円

 

まとめ

 

JWRCで活躍した初代(HT51S)や2代目(ZC31S)、1.4リッターターボ化でパワーアップした4代目(ZC33S)と比べると、3代目ZC32Sスイフトスポーツは国際的にはやや地味な存在かもしれません。

しかし、日本国内的には「過剰なパワーも無くハンドリングは軽快、6速MTを駆使して操る喜びもあり、それでいて安い!」というZC32Sはまさに手頃なコンパクトスポーツです。

燃費や排ガスまで考慮した場合、1.5~1.6リッタークラスのNA(自然吸気)エンジンを搭載した5ナンバースポーツモデルではZC32Sあたりまでが性能の上限で、それ以上を求めると4代目ZC33Sのようにターボ化するしか無かったという事かもしれません。

ターボの恩恵でトルクフル、かつ軽量化されたZC33Sも良いのですが、3ナンバー車は少々大きすぎる…と感じる人がまだいれば、5ナンバーサイズのZC32Sをオススメします。

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