量産車として初めてターボチャージャーを搭載した「BMW2002 Turbo」。2016年にはBMW2シリーズをベースにした「2002 オマージュ」が公開され話題になりました。2002 オマージュのベースとなったBMW2002 Turboとはどのような車だったのでしょうか。製作経緯とともに車両をご紹介していきます。

掲載日:2017/09/01

出典:http://www.arestlesstransplant.com/a-restless-transplant/96

 

 

「マルニ」と呼ばれたBMW02シリーズとは?

 

出典:https://bringatrailer.com

 

日本では「マルニ」と呼ばれたBMW02シリーズは、1966年から1977年という長い期間にかけて製造・販売されたBMWの小型2ドアセダン車です。

この02シリーズベースモデルとなる1602(1502)をはじめ、ベーシックグレードとなる1802、最上級グレードとなる2002という、ユーザーが用途に合わせた選択が可能となっていました。

「02」の前にある数字は排気量を示しており、1602の場合は排気量が1600㏄となっています。

BMW02シリーズの特徴として挙げられるのが、2002Turboと呼ばれるグレード以外は使用されたボディが同じものだったことです。

1600㏄から2000㏄までをカバーすることが可能だった優れたボディは、いったいどのようなものだったのでしょうか?

まずはそのボディに注目してみたいと思います。

 

出典:https://www.bmw2002.co.uk

 

BMW02シリーズ ボディスペック
全長×全幅×全高(mm):4230×1590×1410
ホイールベース(mm):2500
車両重量(kg):940(1602)/ 980(1802)/ 990(2002)

BMW02シリーズは、非常にコンパクトで軽量なボディを与えられ、サスペンションはフロントにマクファーソン・ストラット、リアにセミ・トレーリングアームを採用しており、四輪独立懸架式となっていました。

これにより、02シリーズは排気量やパワーの違うエンジンを搭載しても、非常に高い運動性能を実現することが可能となったのです。

このBMW02シリーズは、世の中にBMW=スポーティーなイメージを与えた最初の車だったといえるでしょう。

スポーティーななかにも明確なグレード分けがなされた、この02シリーズですが「2002」と呼ばれた最上級グレードが最も人気があり、このシリーズで一番の生産台数を誇りました。

本国であるドイツ以外でも絶大なる人気を誇ったという「BMW2002」という車は、いったいどのような車だったのでしょうか?

2002シリーズをご紹介していきたいと思います。

 

進化していく「マルニ」

 

出典:https://ja.m.wikipedia.org/wiki/BMW・02シリーズ

 

初代「マルニ」

 

BMW2002シリーズは、1968年のデビューから徐々に改良が施され、技術の進歩やオイルショックなど当時の時代背景と共に進化を遂げたモデルといえます。

デビュー当初は、1990㏄のエンジンを搭載したソレックスシングルキャブレター仕様の「BMW2002」と、ソレックスツインキャブレター仕様の「BMW2002ti」というモデルがラインナップされていました。

それでは、味付けの違った2つのモデルが、どのように違うのかを見てみましょう。

1968年式 BMW2002 スペック
エンジン型式・仕様:直列4気筒SOHC ソレックスシングルキャブレター
排気量(cc):1990
最大出力:100ps/5500rpm
最大トルク:16.0kg-m/3500rpm
トランスミッション:4MT or 3AT

 

1968年式 BMW2002ti スペック
エンジン型式・仕様:直列4気筒SOHC ソレックスツインキャブレター
排気量(cc):1990
最大出力:120ps/5500rpm
最大トルク:17.0kg-m/3600rpm
トランスミッション:4MT/5MT or 4AT

このように、それぞれの車種の使用用途に合わせた味付けがされており、ベーシックモデルとスポーティーモデルが明確に分けられていました。

絶大なる人気を誇ったこの初代BMW2002シリーズは、BMWがスポーティーな車であるというイメージを与えたモデルだったといえるのです。

 

進化した「マルニ」

 

出典:https://www.bmw2002.co.uk

 

1971年式 BMW2002tii スペック
エンジン型式・仕様:直列4気筒SOHC クーゲルフィッシャー製機械式インジェクション
排気量(cc):1990
最大出力:130ps/5800rpm
最大トルク:18.1kg-m/4500rpm
トランスミッション:4MT/5MT or 4AT

初代BMW2002でツーリングカー選手権に参戦をしていたBMWは、そのノウハウを生かして1971年に機械式インジェクションを装着したBMW2002tiiを発表しました。

インジェクションシステムの採用とエンジン内部を見直したことにより、パワーとトルクが一段とアップすることに成功したのです。

この成功は、のちに爆発的な人気となる最上級スポーツモデルの誕生へと繋がっていきました。

 

最強の「マルニ」

 

出典:https://www.bmw2002.co.uk

 

BMW2002シリーズの最上級スポーツモデルとなるBMW2002Turboは、1973年にデビューしました。

このターボモデルの登場は、ツーリングカー選手権で激闘を繰り広げてきたポルシェに勝つためにあったといっても過言ではありません。

 

出典:https://www.bmw2002.co.uk

 

もともと航空機エンジンを製作していたBMWは、ターボチャージャーに関するノウハウを多く抱えていたため、その技術を世界で初めて自動車に転用したのです。

このターボチャージャーを導入したことにより、圧倒的な速さを手に入れたBMW2002Turboは、強敵だったポルシェに見事勝利したのでした。

このBMW20002Turboの市販車両は、他のBMW2002シリーズとは一線を画しており、エンジンとボディ共に大幅なモディファイが施されていました。

それでは、フラッグシップモデルとなったこのBMW2002Turboが、他のBMW2002シリーズとどのように違ったのかをみていきたいと思います。

 

出典:https://bringatrailer.com

 

1973年式 BMW2002Turbo スペック
全長×全幅×全高(mm):4220×1620×1410
ホイールベース(mm):2500

トレッド幅(mm):1375/1362
車両重量(kg):1060
エンジン型式・仕様:直列4気筒SOHC KKK社製BLDターボチャージャー クーゲルフィッシャー製機械式インジェクション
排気量(cc):1990
最大出力:170ps/5800rpm
最大トルク:24.5kg-m/4000rpm
トランスミッション:4MT/5MT

BMW2002 Turboのスペックをご紹介しましたが、数字だけではピンとこない方のために、ひとつの例を挙げてみましょう。

 

©NISSAN

 

同期ともいえる、当時日本で最強と言われたハコスカGT-Rをも越えるハイスペックだったと言えば分かりやすいのではないでしょうか。

ターボとリベット止めされたオーバーフェンダーで武装し、「かかってこい!!」といわんばかりのスペックを引っ提げて登場したBMW2002Turboが、圧倒的な速さを誇った理由がお分かりいただけたと思います。

最強の名を欲しいままにしたこのBMW2002Turboですが、第一次オイルショックの影響のため、わずか1672台を販売するにとどまり、惜しまれる声が多いなか1975年をもって生産終了となりました。

 

モータースポーツでも強かった「マルニ」

 

出典:https://www.bmw2002.co.uk

 

BMW2002Turboは、レース参戦を前提に製作された車両であったことから、モータースポーツ活動にも精力的に参加していました。

 

出典:https://www.bmw2002.co.uk

 

ツーリングカーでは、宿敵ポルシェに勝利するために開発され、BMW2002Turboはその勝負に見事勝利したのです。

後に名チューナーとなるアルピナなども開発に携わり、その後の活動に活かされています。

また、ハンス・ヨアヒム・シュトゥックなど、のちにF1で活躍するドライバーによってレースに参戦したBMW2002は、ニュルブルクリンク24時間レース制覇を皮切りに、ツーリングカーで大活躍をみせました。

 

出典:https://commons.m.wikimedia.org/wiki/File:BMW_2002_Turbo_(1974)_-_Rallye_des_Princesses_2014.jpg

 

また、02シリーズはラリー競技にも力を入れた車両でした。

1960年代には1602型や1802型で参戦しており、ラリー部門が設置された1971年からは本格的に参戦。

2002を使用し、オーストラリアで開催されたアルペンラリーなどで勝利を挙げています。

しかし、オイルショックの影響などもあり、どちらもこれからというところで競技から撤退を余儀なくされるという悔しい結果となりました。

 

今でも乗れる「マルニ」

 

出典:https://www.bmw2002.co.uk

 

市販部門でもモータースポーツ部門でも大人気だったBMW02シリーズですが、販売から50年近くたった現在でもレストアされた綺麗な中古車が日本でも販売されています。

それでは、中古車市場相場はどのような状況になっているのかを見ていきたいと思います。

 

BMW2002Turbo

1975年式 47000km

13,900,000円

 

BMW2002tii 外装Turbo仕様

1977年式 79000km

3,600,000円

 

BMW2002tii オリジナルルック

1979年式 66000km

2,680,000円

 

BMW1502

1976年式 距離不明

1,980,000円

現存する車両が少ないこと、レストアがされ、問題なく走れるということを考えると、妥当な値段と言えるのではないでしょうか。

しかし、日本に現存するBMW2002Turboは軒並み1千万円をオーバーしている車両が多く見られ、簡単には手が出せない高嶺の華となっています。

また、ハコスカなどで見られるGT-Rルックと同様に、BMW2002tiiの外装をTurbo仕様にして販売されている車両もあります。

BMW2002tiiを購入して、外装をTurbo仕様に仕上げて楽しむのもひとつの方法といえるでしょう。

また、市場にはBMW1502なども現存しており購入が可能となっているほか、個人売買で手に入れる方法もあります。

憧れのBMW02シリーズを購入するなら、状態の良い車両が現存する今がチャンスなのかもしれませんね。

 

まとめ

 

出典:http://www.motortrend.com

 

往年の名車ともいえるBMW2002 Turboがどのような車だったかを振り返ってみましたが、いかがでしたか?

チンスポイラーに書かれた「2002」と「Turbo」の文字が反転となっているのは、ミラーに写った時に相手にその存在を知らしめるためだったと言われています。

これは、BMWが自信を持って送り出した車だったことが伺い知れるエピソードといえるのではないでしょうか。

BMW2002 Turboのスピリッツは今もなお受け継がれ、BMW2シリーズとして復活をしています。

モータースポーツに対するBMWのスピリッツに、今後も注目していきたいと思います。

 

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