1973年に発表されたBMW 2002ターボは、世界初のターボエンジン搭載車です。当時、ターボエンジンはBMWとポルシェの2社が実用化を見据えて技術開発を続けていたのですが、この車によって、その栄冠はBMWに輝くことになりました。その決め手となったのは、BMWが培ってきた航空機の技術だったのです。
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世界初のターボエンジン搭載車、BMW・2002ターボ
1973年、世界は第四次中東戦争によって、オイルショックに見舞われていました。
その煽りを受けた自動車メーカーは、排ガス対策や燃費向上などに追われ、性能重視の車を開発する余裕はありませんでした。
そんな中で開催されたフランクフルト モーターショーに、BMWは1台の車を出展します。
それは、かつて1968年に販売されたBMW 2002の別モデルで、2ドアの外見や1.9リッターの直列4気筒SOHCエンジンを搭載している点はほぼ同じながらも、その圧縮比は6.9:1へ低減。
今までとは全く異なる点として、内部にはBLDターボチャージャーが装備され、最大出力は170ps/5,800rpmを発揮するなど、同じインジェクション搭載モデルのBMW2002tiiよりも、30%の出力向上を実現していました。
この車は世界初のターボエンジン搭載車であり、BMW2002 ターボと名付けられています。
BMW 2002 ターボの最高速度は211km/h。飛躍的な性能の向上に対応するためか、ブレーキも先代から変更され、フロントにベンチレーテッドディスクを装備し、リアのドラムブレーキも容量アップされました。
ほかにも、フロントバンパーがエアロパーツに変えられ、左右が反転されたTURBOの文字が貼り付けられています。この鏡文字は、前を走る車に威圧感を与えるためだと言われており、後の日産スカイラインにも影響を与えた要素です。
前後フェンダーも、ワイドタイヤ装着のためにオーバーフェンダーへと変更され、今までとは違うBMWであることを主張しているかのようでした。
ポルシェとBMW ターボエンジンの実用化を巡る闘い
当時のツーリングカー選手権では、BMWとポルシェがしのぎを削っていました。
その闘いはサーキットだけではなく、技術開発の場でも繰り広げられ、お互いにターボエンジン搭載車の実現を目指し、どちらが先にターボエンジンを実用化するか、火花を散らしていたのです。
BMWは1960年代のツーリングカー選手権でポルシェに煮え湯を飲まされた経験を持ち、ポルシェにターボエンジンを先に実用化されてしまえば、技術面でも遅れを取ったことになります。
それを避けるためにも、BMWはそれまで航空機で培ってきた技術を結集し、オイルショックの逆風を振り切るようにターボエンジンを実用化。ポルシェに先んじ、ターボ搭載車を売り出すことに成功したのです。
その秘密はBMWが航空機エンジンの製造で、ターボのノウハウを十分に蓄積していたことにありました。
結果的にそれが、自動車のターボエンジン開発でポルシェを引き離し、世界初のターボエンジン搭載車、BMW2002 ターボの誕生へと繋がったのです。
BMW・2002ターボのスペックと中古車価格
BMW・2002ターボのスペック
1973年式 BMW2002Turbo スペック
全長×全幅×全高(mm):4220×1620×1410
ホイールベース(mm):2500トレッド幅(mm):1375/1362
車両重量(kg):1060
エンジン型式・仕様:直列4気筒SOHC KKK社製BLDターボチャージャー クーゲルフィッシャー製機械式インジェクション
排気量(cc):1990
最大出力:170ps/5800rpm
最大トルク:24.5kg-m/4000rpm
トランスミッション:4MT/5MT引用元:世界初のターボ付き市販車、BMW2002Turboをご存知ですか?|Motorz
BMW・2002ターボの中古車価格
BMW 2002ターボの中古車価格は、1650万円や1080万円と非常に高額に設定されています。
購入を考えている方は、それ相応の出費が必要になることを踏まえておきましょう。
まとめ
BMW 2002ターボは世界初のターボエンジン搭載車でしたが、オイルショックの煽りを受けて、わずか1672台で生産中止となりました。
登場から2年も経たないうちに消えてしまった車ですが、その存在は日産 スカイラインなどに大きな影響を与えています。
時代に翻弄された悲運のBMWは、その後の自動車技術に大きな影響を与えた名車として、今も語り継がれています。
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