かつて各国産車メーカーは複数の販売チャネルで多様なユーザー層へ車を販売していました。それはホンダも例外ではなく、現在のホンダカーズ店へ集約される前は、ベルノ店、クリオ店、プリモ店を擁しており、プリモ店のミドルクラスサルーン「アスコット」のベルノ店向け姉妹車として販売されていたのが「ラファーガ」でした。

プリモ店向けラファーガのベルノ店向け姉妹車、ホンダ ラファーガ / 出典:http://www.webcarstory.com/voiture.php?id=2640&width=1440

ホンダプリモ店向けのアコード相当なミドルクラス5ナンバーセダン、ラファーガ

ホンダ ラファーガ/ 出典:https://www.en.japanclassic.ru/booklets/284-honda-rafaga-1996-ce.html

現在では、トヨタとスズキがその名残を残している程度ですが、過去には各国産車メーカーが複数の販売チャネルを持っているのが当たり前で、それぞれ若者向けの車を売るチャネル、保守層向けの車を売るチャネルと、ユーザーや取り扱い車種が分けられていました。

というのは半ば建前で、実際には各地域で自動車販売業へ新規参入したい事業者の受け皿として、新チャネルを回しているようなケースもあり、「他のチャネルで売っている車をウチでも売りたい」という話は当然出てきます。

ホンダでも1970年にシビックやそれに次ぐヒット作となったアコードを他チャネルでも販売するために、アコードを「クリオ店」専売とし、「プリモ店」向け姉妹車の初代アスコットを1989年に発売。アスコットのモデルチェンジ段階でアコードから独立させ、今度はアスコットの「ベルノ店」向け姉妹車として、1993年に発売したのがラファーガでした。

それまでベルノ店で販売されていた4ドアサルーンは、1.6~1.8リッター級の4ドアハードトップ版「インテグラ」と、2.0リッター級4ドアハードトップの「ビガー」(クリオ店向け「インスパイア」の姉妹車)でしたが、3ナンバー車の需要増加を受けて、「アコード」をフルモデルチェンジで、「インスパイア/ビガー」をマイナーチェンジで3ナンバー化。

大型リアウイングでスポーティに見せる努力はしていたラファーガ2.0CS / 出典:https://www.favcars.com/wallpapers-honda-rafaga-2-0-cs-ce4-1993-97-50674.htm

ラファーガは、5ナンバーのインテグラと3ナンバーのビガーの間を埋める5ナンバーサイズの4ドアサルーンとして、2代目アスコットともどもホンダ車ラインナップに生じたスキマを埋める役割を担っていたのです。

ただし、そのメカニズムは従来のアコード/アスコットとは異なり、どちらかというとインスパイア/ビガーに近いメカニズムとパッケージを持ちつつ、5ナンバーボディへ収められていたのが特徴でした。

当時のホンダが得意とした「FFミッドシップ・レイアウト」を採用

ラファーガのFFミッドシップ・レイアウト図 / 出典:https://www.honda.co.jp/factbook/auto/ASCOT/19931014/as293-011.html

ラファーガ最大の特徴は、まさにインスパイア/ビガー譲りのFFミッドシップ・レイアウトで、縦置きされるエンジンは同じ2.0リッター(G20)/2.5リッター(G25)の直列5気筒SOHC4バルブエンジンながら、レギュラーガソリン版として圧縮比を上げるなどの工夫が施され、ハイオク仕様と同等の出力と十分な実用トルクを確保。

「ホンダのFFミッドシップ」というと、前車軸への荷重不足によるトラクション不足で、濡れた路面の登坂走行などは危ないとも言われましたが、実際には車軸より後方というほどエンジンが後退していたわけではなく、デフもエンジン横とされ、極力フロントの重量配分(前60:後40)に配慮されていました。

また通常走行では、よく煮詰められた4輪ダブルウィッシュボーンによるハンドリングは軽快で、ロングホイールベースゆえに最小回転半径は5.5mとやや大きめですが、縦置きエンジンの恩恵でタイヤの切れ角はFFの割に大きく、取り回しはそう悪くありません。

ミッション部が前席中央まで食い込む、ラファーガのモノコック / 出典:https://www.en.japanclassic.ru/booklets/284-honda-rafaga-1996-ce.html

それよりやや問題があったのは、ミッションがバルクヘッドを突き抜けて前席中央に食い込む形だったため、場合によっては車室内に少々熱がこもったくらいだったのと、やはり横置きエンジンと比べて車内の広さという面ではやや不利でした。

それでも5ナンバーボディで最大限の使い勝手や快適性を追求すべく、ルーフはやや高めに取られ、着座位置を高めに取って前席を前寄りに設定。

トランクルームも高さを取ることで、前後方向は少なくとも容量自体は確保されています。

さらに後席背もたれも若干起こして座り心地と快適性を確保し、ドアの開口部も広げるなど、インスパイア/ビガーよりかなり短い全長で同等の快適性と衝突安全性を実現するよう工夫が凝らされました。

なお、こうしたパッケージは2代目アスコットと全く共通ですが、フロントグリルが縦基調のアスコットに対し横基調のラファーガ、丸型フォグランプのアスコットに角型のラファーガなど、細部のデザインは若干変更されています。

主要スペックと中古車価格

大人4人に十分なスペースと、縦長で大容量の独立トランクを持ったラファーガ / 出典:https://www.honda.co.jp/factbook/auto/ASCOT/19931014/as293-005.html

ホンダ CE5 ラファーガ 2.5S 1993年式
全長×全幅×全高(mm):4,555×1,695×1,425
ホイールベース(mm):2,770
車重(kg):1,340
エンジン:G25A 水冷直列5気筒SOHC20バルブ
排気量:2,451cc
最高出力:132kw(180ps)/6,500rpm
最大トルク:226N・m(23.0kgm)/3,800rpm
10モード燃費:10.2km/L
乗車定員:5人
駆動方式:FF
ミッション:4AT
サスペンション形式:(F・R)ダブルウィッシュボーン

 

(中古車相場とタマ数)
※2021年2月現在
流通なし

1代限りで消えた通好みセダン

ホンダ ラファーガ2.5S /出典:https://www.favcars.com/honda-rafaga-2-5-s-e-ce5-1993-97-pictures-253154.htm

5ナンバーサイズでもインスパイア/ビガーと同じ上質感を目指したラファーガは、2代目アスコットともども、その役割を果たしながら1997年まで販売されました。

その後はアコードの国内仕様が5ナンバーへ回帰した事もあって、その姉妹車トルネオがラファーガ/2代目アスコット後継として、ベルノ店/プリモ店で併売される事となりますが、当時のホンダはインスパイア/ビガー、アコード、アスコット、ラファーガと似たようなジャンルの車を販売店ごとに何種もラインナップする贅沢な時代でもありました。

今や街でも中古車市場でも全く見かけなくなりましたが、ラファーガは2代目アスコットともども、ハンドリングやパッケージングの評価が高い通好みの車でした。

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