ホンダ「タイプR」ブランドの名声を一気に高め、サーキットからオフロードイベントまで暴れまわったDC2/DB8型インテグラタイプRの2代目、DC5型は2001年7月に登場し、一時は「唯一の国産タイプR」でもありました。インテグラ自体がプレリュードとの統合で当時既に斜陽だった事もあり、クーペのみに絞られ、4ドアの廃止、S2000との同門競合など、逆風に晒された2代目インテグラタイプRとは、いったいどのようなクルマだったのでしょうか?

ホンダDC5 2代目インテグラタイプR(後期型) / 出典:https://www.honda.co.jp/sportscar/spirit-sdw2/nsx_talk/

初代インテR/シビックRとプレリュードの役割を背負った「重責のタイプR」、DC5

ホンダDC5 2代目インテグラタイプR(前期型) / 出典:https://www.honda.co.jp/news/2001/4010702-integra.html

1990年代後半、DC2(3ドア)/DB8(4ドア)型初代「インテグラタイプR(以下、インテR)」と、EK9型初代「シビックタイプR(以下、シビックR」で国産スポーツカーへ一大センセーションを巻き起こしたホンダでしたが、販売の主力は既にミニバンとSUVへ移っていました。

むしろシビックにせよインテグラにせよ、街で見かける新しめの車はほとんどタイプRのみとなり、4ドアセダンやクーペの不振も相まって、本来の大衆車としては「タイプRではない格落ち車」として魅力が激減。

シビックなど、タイプRが後の国内販売を廃止(近年復活するもセダンは再廃止)する道へつながる原因になったとすら考えられます。

そのため、シビックは7代目でさらに大型化され、インテグラの4ドアハードトップ後継も兼ねた4ドアセダン/5ドアハッチバックの大衆車として再出発。タイプRは英国から輸入した、3ドアのEP3のみ(日本ではタイプR専用ボディ)となりました。

インテグラも販売不振で存続困難なプレリュードと統合されて3ドアクーペのみとなり、7代目シビックのプラットフォームを使ったコストダウンでかろうじて4代目へモデルチェンジできた形です(3代目以前もプラットフォームはシビック流用でしたが)。

2代目インテグラタイプRに搭載されたDOHC i-VTECエンジン「K20A」 / 出典:https://www.honda.co.jp/sportscar/vtec_history/K20A/

2001年7月にモデルチェンジした4代目インテグラは、2代目インテRを主力として設計の基準としており、プラットフォームこそ7代目シビックと共用とはいえ、高いポテンシャルを持つホワイトボディを構築し、スポーツ走行に備えます。

この代のインテグラでは、「タイプRのボディへエンジンやサスペンション、内装を廉価版としたオーバースペック気味のグレードがis(前期)/タイプS(後期)」と言われる事もありますが、実際にはホワイトボディが共通なくらいで、ボディ補強や補強パーツの素材はタイプR専用品が数多く使われており、外観以外はボディを含め、かなり別物です。

特にエンジンは型式こそ同じK20Aなものの、is/タイプS用が160馬力に対し220馬力というメーカーチューンドで、組み合わせられるミッションも5速MT/ATに対しタイプRは6速MT。

価格もコストダウンも功を奏し、タイプRがDC2のタイプR Xから1万4千円程度のアップに抑えられたとはいえ、税別259万円なのに対し、前期型isの5速MT車などは税別174万円と、今ならN-BOXカスタムターボより安価なお買い得モデルでした。

ホンダDC5 2代目インテグラタイプR(後期型) / 出典:https://www.favcars.com/pictures-honda-integra-type-r-dc5-2004-06-253798.htm

しかし、市場でのスポーツクーペ不振はとどまる事を知らず、7代目タイプR同様に4輪ダブルウィッシュボーン独立懸架サスペンションの廃止(フロントがストラット化)、クーペでもキャビンフォワードを徹底してしまった事によりデザインにシャープさが失われ、1999年に発売された2ドアオープンスポーツ、S2000との同門競合まで発生しました。

その後、2004年9月にはフロントマスクなどを手直しするマイナーチェンジで後期型になったものの、前期型デビュー時の月販目標1,500台に対し後期型は300台と、かなり寂しい数字になってしまいます。

結局、2007年に4代目シビックタイプR(4ドアFD2)が発売される直前まで販売されていたのを最後に廃止。

アキュラRSXとして販売していた北米などでもシビッククーペが後継になったため、これが最後のインテRであり、最後のインテグラとなりました。

それでもレースやダートラで活躍した2代目インテR

ホンダDC5 2代目インテグラタイプR / Photo by Ben

先代ほどの人気や活躍の場がなかったDC5型2代目インテRですが、ホンダでは早期にスーパー耐久へ持ち込まれ、SUPER GTなどと比べて改造制限が厳しく、市販車のポテンシャルがモノをいうレースで活躍をアピールしました。

スーパー耐久ST-4クラスではシビックやS2000とのホンダ同門対決を戦った2代目インテR / 出典:http://www.advan.com/japanese/motor_sports/09/stai/03/ph_07.html

しかし、特にフロントサスペンション周りの評価が低く、全日本ジムカーナでも改造範囲の広いA車両時代はA3クラスでEP3(2代目シビックR)ともども活躍しましたが、2003年に改造範囲を制約したN車両になると、S2000のようには残らずパッタリといなくなります。

世界各地でさまざまなレースを戦った2代目インテR(アキュラRSX) / Photo by Martin Pettitt

それでも新型K20A(Rスペック)のパワフルさや、先代より飛躍的に高まったボディ剛性が評価され、カスタマイズの余地が大きいレースやサーキット走行では、アキュラRSXの名でも売られた海外仕様含め、第一線で活躍する姿が多く見られました。

全日本ジムカーナではA車両時代のみだったが、全日本ダートトライアルではその後も活躍した2代目インテR / 出典:https://mos.dunlop.co.jp/archives/dirttrial/race-data/report_dirttrial_101_20131102.html

また、運動性のみならず、パワーやトラクション、ボディ剛性もモノを言うダートトライアル競技では、改造範囲の広いSA車両、SC車両のみならず、改造範囲が狭いN車両のクラスでも、ホンダ社内チームのチームヤマトなどを中心として、意外に長期間活躍しています。

主要スペックと中古車価格

ホンダDC5 2代目インテグラタイプR / 出典:https://www.favcars.com/pictures-honda-integra-type-r-dc5-2001-04-253796.htm

ホンダ DC5 インテグラ タイプR 2001年式
全長×全幅×全高(mm):4,385×1,725×1,385
ホイールベース(mm):2,570
車重(kg):1,170(※エアコンレス車)
エンジン:K20A 水冷直列4気筒DOHC i-VTEC16バルブ
排気量:1,998cc
最高出力:162kw(220ps)/8,000rpm
最大トルク:206N・m(21.0kgm)/7,000rpm
10・15モード燃費:12.4km/L
乗車定員:4人
駆動方式:FF
ミッション:6MT
サスペンション形式:(F)ストラット・(R)ダブルウィッシュボーン

 

(中古車相場とタマ数)
※2021年3月現在
99.8万~359.8万円・76台
(※前期is/後期タイプS:22.9万~127万円・37台)

最後の国産ホンダクーペとなった2代目インテR

ホンダ DC2初代インテグラタイプR(手前左)・DC52代目インテグラタイプR(手前右)・アキュラDC2インテグラタイプR(中央奥) / Photo by crash71100

日本では販売不振だった2代目インテRですが、それでも存在感が当初から希薄だったis/タイプSよりは売れていたようで中古車のタマ数も多く、海外では引き続き人気だったためか盗難被害も多かったので、後期ではイモビライザーを標準装備するなど盗難対策が施されました。

しかしスポーツカー不況には抗えず、当時S2000やシビックRと並んで数少ない「1990年代型の高回転高出力型スポーツを環境性能と両立して実現」していたにも関わらず、4代目FD2型シビックRへ統合される形で廃止されてしまいます。

以後、タイプRどころかクーペとしても、アメリカ製ハイブリッドスーパーカーの2代目NSXを除けば、ホンダのクーペは国内販売しておらず(海外ではシビッククーペがある)、今後も純EV時代に入るまで復活しそうにもありません。

中古車市場でも先代DC2/DB8ほどのプレミアはついておらず、比較的安価で程度良好・高年式の車が購入できる高性能のホンダクーペとして、電動化時代の到来で価格が高騰する前に乗れる時代としては、今が最後のチャンスと言えそうです。