人工知能(AI)の自動運転によるレースが、この秋に始動します。その名も「Roborace(ロボレース)」。マシンにはドライバーが乗らない代わりに自動運転用のソフトウェアがマシンを操るという新しい試みのシリーズなのです。
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モータースポーツはさらに新たな時代へ
2014年に電気自動車のレース「フォーミュラE」が創設されてから3年。
ガソリンを使わない電気自動車のレースは大きな注目を集めましたが、さらに大きな衝撃となるシリーズが開催されます。
これまではマシンの速さをドライバーが引き出す必要がありましたが、このドライバーの役割をAI(人工知能)が担うというレースが今年の秋に創設されるのです。
それは自動運転車たちのレース、その名も”Roborace”(ロボレース)が誕生しようとしているのです。
ではこのロボレースとは一体どのようなレースなのでしょうか?
ROBORACE(ロボレース)とは?
今年新たに開催されるロボレースは世界で初めての試みとなる自動運転車による選手権です。FIA(国際自動車連盟)が統括するフォーミュラEのサポートレースとして開催されることが決定しました。
無人のマシンがレースをするというと、ラジコンレースを思い浮かべる方も多いかもしれませんが、誰かがマシンを操作することはなく、あくまで走行に関する判断は全てAI(人工知能)に委ねられるという全く新しいカテゴリーなのです。
そのためマシンは完全に自動化されており、搭載された多くのセンサーやモニターを通して状況を把握します。そしてチーム独自で開発されたAIがどういった運転をするのか迅速に導き出すのです。
レースは1時間で争われ、10チームが2台ずつの計20台で争われる予定で、予選はこれまでにないシステムが採用されています。
それはコンピューター上のシュミレーションで順位を決め、マシンは実際に走行しないという珍しいもの。これは費用の削減に繋がるだけでなく、参戦するAIの安全性を見極めるという目的も持っているのです。
ロボレースで使用されるマシンは?
車両はフォーミュラEと同様にガソリンを使用しない電気自動車で、操縦を担うソフトウェア以外は全てのパーツが共通のものを使用することがすでに決定しています。
また公式のタイヤサプライヤーにはミシュランが就任しました。
マシンは人が乗らない前提で設計されているため、コックピットやステアリングといったよく目にする当たり前のパーツがありません。
そして、デザインはこれまでのレース車両とは全く違う、斬新なものとなっています。
その代わりに搭載されるのが、前方にカメラ2台とレーダーというマシンの状況を把握するための装置。
さらには車体全体をカバーする赤外線センサーと超音波センサーに加え、チームとの通信機能も装備されています。
これだけでなく当然マシンを制御するためのCPUも搭載され、その処理能力は凄まじく24兆Flops(1秒間に24兆回の演算を行う)を誇ると言われています。
これはMacBook Proの150台分の処理能力に匹敵するのです。このCPUの開発には巨大半導体メーカーのNVIDIAが公式パートナーとなりました。
また、万が一に備えて緊急時には外部からリモートコントロールが出来るようになっているのも特徴です。
詳細なスペックについては発表されていませんがマシンのサイズは全長約5m、全幅約2mとなっており、あくまで人が乗れるサイズということからも市販車への技術流用に狙いを置いていることが読み取れます。
交通事故の削減に繋がる?ロボレースが世界に与える影響とは?
では、何故このロボレースは開催されることになったのでしょうか。目新しいのでエンターテイメント性にも長けていると思いますが、本来の目的はこれだけではありません。
近年、市販車にも浸透し始めている自動運転車の発展を促すとも見られ、これは自動車に関心のない人を含めた多くの人たちの暮らしを変える可能性を秘めているのです。
これまでモータースポーツは自動車の性能に関する発展を手助けしてきましたが、ロボレースの場合ではドライバーを開発するともいうべきでしょうか。自動車を運転する媒体を開発しているのです。
そして開発競争が激しくなると、より高性能なソフトウェアが生まれ、自動運転の技術や安全性が高まります。その結果、あなたの街から交通事故がなくなる可能性も秘めているのです。
何故なら、街中で起きている交通事故の多くは人のミスによって発生しており、その割合は9割にも上ると言われているからです。
そういった現状のなかロボレースの発起人でkinetik社のCEOであるデニス・スヴェルドロフ氏は、人が運転しない交通社会を作り上げることで交通事故を無くしてしまおうという目標を掲げています。
この無人自動車たちの戦いはエンターテイメントでありながら未来における交通社会の実験場、さらにはその成果のアピールの場所になる事を期待されているのです。
開幕に先立ってデモレースを開催!その結果は…
今年の開幕に先立って、先日行われたフォーミュラE第3戦にて無人自動車の歴史で記念すべきイベントが開催されました。
アルゼンチンの首都ブエノスアイレスの公道を舞台に、ロボレースの開発車両を使って初のデモレースが行われたのです。
WEC(世界耐久選手権)などでも見られるプロトカーのカウルを外したものを電気自動車化し、これに自動運転機能を付け加えた2台のマシンが走行しました。
Devbot 1 wins! Clocking a new new fastest lap at top speed of 186kph #BAePrix
レースが始まると2台のマシンは一定の距離を保ち周回を重ね、最高速は185kmを記録する速さを見せました。
しかし、レースは思わぬ形で幕を閉じてしまったのです。1台がコーナーで大きく挙動を乱してウォールにクラッシュ。マシンは大きなダメージを負い、レース終了となってしまいました。
もちろん、市街地コースではありますがレース期間中のためコースは封鎖されており、ドライバーも乗っていないため負傷者は0。
しかし、今後に向けての課題も見られる結果となったのです。
今回のレースはテストを兼ねたお披露目ということで注目を集めましたが、今後さらに開発を重ねたソフトウェアが登場すると予想され、2017年10月9日に予定されている開幕戦では、さらに多くの話題を呼ぶことになりそうです。
まとめ
自動運転のマシンで争われるレースは多くの関心を集めており、すでにエントリーを希望しているチームは100を超えています。それは、まさに選ばれし人工知能の戦いなるのではないでしょうか。
そして、その戦いは多くの人の暮らしを変える可能性を秘めており、ロボレースの発展が交通安全に寄与することが望まれています。
今はまだ、事故を減らせるという部分に着目されていますが、AIが考える最適なオーバーテイクやタイヤマネージメント、さらにはより少ない電気で長距離を走ろうとするシーンも見られるかもしれません。
まさに公開実験とも言えるロボレースは、交通事故の無い未来を作るための大きな一歩となるかもしれません。
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