1990年、軽自動車の660cc化に伴うモデルチェンジで、念願の4気筒エンジンやスーパーチャージャー、ECVTなどを手に入れたサンバーは、新規格に移行した1998年以降の6代目でも引き続き好評を得ました。しかしその一方でスバルの軽自動車事業は次第に成り立たなくなり、「サンバーだけでも残してくれ!」という声も虚しく、2012年2月をもって約51年続いた独自生産を終了。スバルオリジナル軽自動車史の最後を飾ったのです。

掲載日:2018/12/11

6代目スバル サンバーバン福祉仕様 / Copyright (c) SUBARU Corporation 2018 All Rights Reserved.

 

4気筒エンジンとスーパーチャージャー搭載の最強サンバー、5代目

 

5代目スバル サンバートラック / Photo by dave_7

 

5代目サンバーと同時期にスバルから販売されていた軽乗用車のレックスが4気筒エンジン(EN05)やスーパーチャージャー、ECVT搭載モデルの設定と新技術を投入されていたのに対し、550cc時代のサンバーには、それらが投入されることはありませんでした。

しかし1990年1月に軽自動車規格が改訂された後、同年3月にモデルチェンジを受けたサンバーにはついにEN07系660cc4気筒エンジンと、そのスーパーチャージャー版(EN07Y)、そして無段変速機ECVTが搭載されたのです。

そして元より耐久性に難があり過酷な商用利用が厳しかったECVTこそ1995年10月をもって廃止、通常のトルコン式3AT化されましたが、自動車雑誌の軽トラ性能比較で抜群の性能を叩き出すスーパーチャージャー版は、サンバー乗りの憧れとなりました。

さらに乗用モデルのサンバーディアスワゴンには、長崎ハウステンボス向け特別仕様車として生まれたものの、市販を熱望する声に応えたサンバーディアスクラシックも誕生。

ヴィヴィオ・ビストロと合わせて軽レトロカーブームの牽引役にもなっています。

なお、スーパーチャージャー化やNA(自然吸気)エンジンのEMPi(電子制御燃料噴射)化で動力性能が向上したことにより、この頃の赤帽サンバーには『赤帽専用特別チューンが施され、高速道路をとんでもない速度で高速巡航可能』など都市伝説を生む事に。

実際、赤帽サンバーは赤帽専用にエンジンの耐久性を向上するなどありましたが、動力性能に大幅な影響を与えるようなものではないものの、サンバーマニアにとって赤いヘッドカバーの赤帽サンバー用エンジンへの載せ換えは、一種のステータスだったのです。

 

5代目サンバー主なスペックと中古車相場

 

5代目スバル サンバーディアス・クラシック / Photo by David Howard

 

スバル KS3 サンバートラック三方開SDX スーパーチャージャー 1992年式

全長×全幅×全高(mm):3,295×1,395×1,805

ホイールベース(mm):1,885

車両重量(kg):710

エンジン仕様・型式:EN07 水冷直列4気筒SOHC8バルブ IC無しスーパーチャージャー

総排気量(cc):658

最高出力:40kw(55ps)/6,200rpm

最大トルク:70N・m(7.1kgm)/3,800rpm

トランスミッション:5MT

駆動方式:RR

中古車相場:1.9万~78万円(各型含む)

 

ありがとうサンバー!さよならサンバー!最後のスバルオリジナル、6代目

 

6代目スバル サンバートラック / 出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%90%E3%83%BC

 

1998年10月の軽自動車新規格改訂後、1999年2月にスバル独自生産型としては最後となる6代目サンバーを発売。

サンバーディアスワゴンクラシックはやや遅れて同年10月の発売となりましたが、ほぼ初期から設定されました。

それは、ライバル他社の軽トラ / 1BOXが荷台スペースを減らしてでもショートノーズを追加するなどして安全性を向上したり、フロントタイヤを前席前方配置にしてロングホイールベース化するなど、大きく変わった時期です。

しかしサンバーは最低限のクラッシャブルゾーンを追加して衝突安全性を確保するのみでホイールベースは変わらず、一部のライバルのように小回り性能の悪化でショートホイールベースへの回帰を迫られることもありませんでした。

伝統のリアエンジン・後輪駆動のRRレイアウトと四輪独立サスペンションにより、もはや『サンバー指名買いの固定ユーザー』が赤帽をはじめ根強く存在している状態であり、「サンバーは大きな変化も無いまま長く作り続けられる。」誰もがそう思っていたかもしれません。

しかし、スバルは軽乗用車の販売台数を伸ばせず、生産設備が古く低コスト化による採算改善も困難という状況に直面。

レガシィやインプレッサなどのプレミアムメーカー化が進む中で軽自動車は不要の不採算部門として、その使命を終えることが決定したのです。

そして「頼むからサンバーだけはやめないでくれ。」というユーザーの悲痛な叫びも虚しく、スバルオリジナル軽自動車の店じまいは淡々と進行し、2011年7月にはスバルらしい特別色『WRブルーマイカ』に塗られた発売50周年特別仕様車を限定リリース。

2012年2月をもって、サンバーバン、サンバートラックの生産が多くのユーザーに惜しまれつつ終了したことで、スバルは軽自動車の生産から完全に撤退しました。

 

6代目サンバー主なスペックと中古車相場

出典:https://members.subaru.jp/

スバル TT1 サンバートラック WRブルーリミテッド 2011年式

全長×全幅×全高(mm):3,395×1,475×1,815

ホイールベース(mm):1,885

車両重量(kg):750

エンジン仕様・型式:EN07 水冷直列4気筒SOHC8バルブ

総排気量(cc):658

最高出力:35kw(48ps)/6,400rpm

最大トルク:58N・m(5.9gm)/3,200rpm

トランスミッション:5MT

駆動方式:RR

中古車相場:0.9万~163万円(各型含む)

 

まとめ

 

5代目スバル サンバートラック  / Photo by Michael

 

1台の商用車が廃版になるからといって、これほど惜しまれたクルマがあったでしょうか?

6代目でついに独自生産を終了し、ダイハツ ハイゼット系のOEM供給に移行したサンバーですが、未だに再生産を望む声が多数あります。

もちろんサンバーも限られた制約の中で作られた車である以上、様々な欠点を持つ車ではありましたが、その使い勝手やエンジンレイアウトなどあまりの特異性から、もはやスバルオリジナルモデルのサンバーは神格化されているという印象すら受けるほど。

中古車市場でも、最後の限定車『WRブルーリミテッド』など新車価格を大きく超えたプレミア価格で販売されており、単なる軽トラの相場としては異常な熱気を帯びています。

新車のサンバーがスバルの工場から出てくることはないので、『サンバーでなければ仕事で困る。』というユーザーからの需要も含め、今後プレミア感は増す一方かもしれません。

走りまくって使い倒した安価な個体がある一方で、ワンオーナーフルノーマルの限定車にプレミアがつくなど、まるでスポーツカーのような世界ですが、それだけスバルが生産していたサンバーは特別な車だったということです。

偉大なるサンバーよ、永遠に。

 

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