5月28・29日に岡山国際サーキットで開催された全日本スーパーフォーミュラ選手権の第2戦。決勝は残念ながら悪天候により途中でレース打ち切りとなったが、予選では昨年とは違った勢力図が見えてくるなど、今後の展望を踏まえると見どころも少なからずあったレースウィークとなった。

Photo by Hideaki Yoshii

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予選Q1からバンドーン、可夢偉が脱落。いきなり波乱の幕開けに

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決勝の順位にも影響するスーパーフォーミュラの予選。前回の鈴鹿では他車のスピンの影響で赤旗や黄旗区間でベストタイム更新によるタイム抹消など、思いもよらない事態が発生。

この対策も兼ねてか、各陣営に配られる新品タイヤ(4セット)を温存してQ1の最初のタイムアタックから導入する作戦をとるドライバーが何人か見られた。

そんなQ1で、いきなり波乱が。前回では初のSFでのレースとは思えない安定した走りを見せていたストフェル・バンドーン(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。

今回もフリー走行では好タイムを記録していたが、勝負をかけるはずだった2回目のアタック前に電気系トラブルが発生。ギアシフト操作が機能しなくなり、セッション途中でマシンを降り、Q1敗退を余儀なくされた。

さらに昨年の岡山では2位と活躍した小林可夢偉(SUNOCO TeamLeMans)も、思うようにタイムを伸ばせずQ1で敗退。「史上最強に遅かった」と悔しい表情をにじませていた。

続くQ2でも波乱は続く。今度は名門トムス勢が苦戦。中嶋一貴は9番手、アンドレ・ロッテラーも12番手になり、昨年のチャンピオンチームが2戦連続でQ3に進出できない事態に陥るなど、とにかく波乱続きの予選となった。

チャンピオン石浦が貫禄の走り!3ラウンド全部トップタイムを記録!

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波乱に次ぐ波乱の中、ポールポジションを獲得したのは石浦宏明(P.MU/CERUMO・INGING)。前回鈴鹿では予選Q1で不運に見舞われベストタイム抹消。決勝もポイントを獲得できず悔しいレースとなってしまった。

しかし今回は、同じ不運に見舞われないようにQ1まで新品タイヤを温存。1回目のアタックから新品タイヤで臨んだ。これが功を奏し、見事Q1をトップ通過。

そのまま勢いに乗るとQ2、Q3もトップタイムをマーク。今季初のポールポジションを獲得。昨年に続き、岡山で他を圧倒。チャンピオンの名に恥じない力強い走りが見せた。

2番手にはジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、3番手には塚越広大(REAL RACING)が続いた。

決勝レースは悪天候により8周で打ち切り、SC先導のみの後味が悪いものに

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迎えた29日の決勝日。午前中のフリー走行はドライコンディションだったが、お昼になって雨が降り始め、直前の全日本F3の第6戦からウエットレースになった。

それでも直前の8分間ウォームアップは特に大きな問題はなかったが、フォーメーションラップ開始に近づくにつれて、雨脚が強くなっていった。

安全を考慮しセーフティカー先導でスタート。これで雨脚が弱まるのを待ったが、逆に強くなっていく一方。なかなかSC先導が解除され周回が重ねられた。

その間に後続ではトラブルが続出。小林可夢偉(SUNOCO TeamLeMans)がステアリングの電源が突然切れるトラブルでピットイン。新しいものに取り替えたが問題が解決せず計3回ピットストップを強いられることに。

さらに6周目にはジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)がストップ。こちらもステアリングの電源が突然切れるトラブルで、シフト操作等ができなくなってしまった。

天候の回復が見込めないことから、9周目に赤旗中断。約40分程度、状況を見て何とかレース再開を試みたが、雨は強まる一方で16時05分にやむなく終了が決まった。

※ここがポイント(1)「レースが途中で終了した場合のルール」

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悪天候だったとはいえ、8周のみで終了。さらに全てSC先導というレース内容に、納得がいっていないファンも多いかもしれない。

改めて確認すると、こういった悪天候などによる「不可抗力でのレース終了」に関しては、このような規定が設けられている。

2016全日本スーパーフォーミュラ選手権統一規則より

不可抗力によるレース中止の場合の取り扱い:

(1)先頭車両が2周回を完了する前にレースが中止された場合、レースは成立せず、選手権得点は与えられない。

(2)先頭車両が2周回を完了し、かつ走行距離がレース距離の75%未満でレースが中止された場合、レースは成立し選手権得点の半分が与えられる。

(3)先頭車両がレース距離の75%以上を完了した後にレースが中止された場合、レースは成立し選手権得点はすべて与えられる。

スーパーフォーミュラのみならず、F1やSUPER GTをはじめ世界各国のほぼ全てのレースで適用されているもの。もちろん、過去には悪天候でレースが半分にも満たない周回数しか紹介していないにもかかわらず途中打ち切りという例は、何度もあった。

しかしSC先導のまま終了するケースは極めて珍しいが過去に例がないわけではない。スーパーフォーミュラでは前身のフォーミュラ・ニッポン時代に2度あった。またWECの日本ラウンドでも2013年にSC先導と赤旗中断を繰り返し全くレースができず途中でレース終了が決まった。

後味は決してよくない終わり方ではあったが、雨の状況を考えると止むを得ない決断だったといえる。

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結果的に石浦がそのまま優勝、2位に塚越広大、3位に伊沢拓也が入りREAL RACINGがダブル表彰台を獲得した。

※ここがポイント(2)「岡山戦で見えた2016年の勢力図」

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残念ながら、決勝は途中でレース終了となったが、週末全体を通して今年の勢力図も少し見えてきた。

まずはヨコハマタイヤの特性。特に岡山で見られたのがタイヤの温まり方。100%のパフォーマンスを引き出すためには、タイヤの温度を最適なところまで上げる必要がある。

それが、昨年までのブリヂストンと比べるとキャラクターが異なるようなのだ。その特性をいち早く掴んでいるドライバー・チームもいれば、まだ探っている段階というところもある。

これから夏になり気温、路面温度も上がっていくため、次回の富士では同じ理屈が通じないかもしれないが、各陣営とも少なからず頭を悩ませている部分になっているようだ。

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もう一つは、ホンダとトヨタのエンジン競争。開幕戦の鈴鹿では山本尚貴(ホンダエンジン)が圧勝、第2戦岡山では石浦宏明(トヨタエンジン)がポール・トゥ・ウィンを果たし、今季の成績では1勝1敗だ。しかし、2位以下の結果をみても明らかにホンダエンジン勢が上位に食い込んできている。

昨年からホンダ陣営は「ドライバビリティ(運転のしやすさ)の向上」をテーマに掲げており、今年のスペックに関してはかなり効果が出ている様子で、この領域ではトヨタを上回っている可能性もありそうだ。

また、ここ2戦の予選やフリー走行でスピンを喫するマシンを何度も見かけているが、その大半がトヨタエンジン勢に集中しているのも、興味深いところなのだ。

次回の富士ではエンジンパワー勝負になるため、この勢力図が変わる可能性もあるが、明らかにトヨタとホンダの差がないに等しいくらいのところまで来ているのは間違いなさそうだ。

まとめ

今年は明らかに昨年までとは違うスーパーフォーミュラ。次回の第3戦富士はコース幅も広く追い抜きポイントも多い。さらに全体的に差が縮まっていることを考えると、ここ数年の中で一番面白いレースが観られるかもしれない。