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2018年の東京オートサロン(TAS)にホンダアクセスが参考出品していた『Re:Z』は、ホンダCR-Zをベースに、その名の通り同社の360ccの軽自動車、初代Zを現代にリバイバルさせた1台です。どんな想いからこのクルマが生まれたのか、今回デザイナーさんから直接お話を伺うことが出来ました!

©︎Motorz
ホンダアクセスって?
今回、TAS2018で『Re:Z』が出展されていたのは、”ホンダアクセス”ブースでした。
ホンダアクセスはこれまでも20年近くTASに出展してきましたが、実は”ホンダアクセス”としてのブースを構えるのは、今回が初めてだという事をご存知でしたか?
そもそもは、1976年にホンダ用品研究所としてスタートした純粋な研究部門だったのですが、1987年にカーエアコンの製造・販売事業を開始し、社名もホンダアクセスに変更した所から、現在のホンダ純正アクセサリーパーツメーカーとしての道を歩み始めました。
ホンダアクセスの社内には、モータースポーツ部などのいくつかの”部活”と呼ばれる自発的な活動があり、それらの課外活動的なことを社内で行うことが奨励されています。
そのうちのひとつである『N Lab.(エヌラボ)』では、モノづくりへの理解と造詣を深めるべく、通常の業務領域にとどまらずデザインやモデル制作を行なっているのだそう。
そしてエヌラボでは常務から事務まで、肩書きや業務領域に関わらず社内からデザイン案を公募し、選定したアイデアを制作するという活動を行っているのです。

かつては2輪用のヘルメットも開発していた同社では、A.セナ、G.ベルガー両選手と開発契約を結び、ヘルメットを開発していたこともあるそうです。/ ©︎Motorz
自分の”欲しい”をそのまま具現化
そんなエヌラボから生まれた、このRe:Zのアイデアを出したのは、同社のデザイナーでもある中野 達也さん。
社内公募のアイデア選定が2017年の8月頃に終わり、そこからRe:Zの為に集まったインテリアとエクステリアの各デザイナーとモデラーが3人の計5名で、約4ヵ月で仕上げたそうです。
「そもそも、メーカー系の企業であるなら新車ベースのカスタムを提案するのが一般的だと思うのですが・・・。」
という筆者の質問に対し、
「確かに、既に生産が終了している車両のカスタムカーを出展したのは、弊社でも初めてでした。やっぱりどうしてもメーカーとしては新しい物へのカスタムの提案が優先されてしまいがちですが、若い人からすれば、古いものって逆に新鮮だったりしますよね。」
と答えてくれた中野さん自身も、初めて初代Zの存在を知った時は、とても新鮮に感じたそうです。
デザイナーとしても、流麗で有機的なデザインが好きということもあり、その存在を知ってからずっと初代Zのことが気になっていました。
そんな折にエヌラボがアイデアを募集していたので、今回のRe:Zのアイデアを送ってみたところ「通っちゃった。」というのが本人の談によるところ。
また、CR-Zをベースにした理由については「色々ありますが、1番の理由は初代Zと同じ3ドアのスポーティーモデルだからでしょうか・・・・。」とのことでした。
中野さんの裏表もなく、純粋に”自分がこんなクルマに乗ってみたい”という想いが選ばれ、有志で集まったメンバーと共にRe:Zの製作はスタートしたのです。

Re:Zと制作に携わった皆さん。右からRe:Zの発案者でデザイナーの中野 達也さん、この水中メガネのモデリングを担当したモデラーの竹腰 環樹さん、その奥がNラボを率いる高橋 勝実さん。 / ©︎Motorz
あえて、ゼロから作らない
とはいえタイムリミットは4ヶ月。
スケッチや、実寸のクレイモデルで形状を検討するところから始まるので、時間にそうそう余裕もありません。
なので今回、ベースのCR-Zから大きく手を加えた点は、主に3点だけ。
フロントフェンダー以前のパネルを丸々製作し、リアバンパーも丸ごと換えて内装にもアレンジが加えられました。
やはり1番時間を有したのは特徴的な”水中メガネ”と呼ばれるリアウインドウまわりで、ここだけで1ヶ月くらい検証したそうです。
ここはテールゲートを丸ごと交換すれば、CR-Zにも装着可能。
また、リアのコンビネーションランプは、初代モビリオスパイクの物を流用し、こちらもリアバンパーごと交換すれば装着可能となっています。
このように、フロントライトやLEDフォグライト、座席の表皮やアンテナ、そして”Z”のエンブレムまで、このRe:Zには実は他のホンダ車から多くの部品が流用されており、中には今すぐに自分でも応用できそうな、まるでアイデアの宝箱みたいな1台になっていました。
実際に、このRe:Z用に製作したパネル類が市販される予定は無いのですが、ゼロから作らなくてもアイデア次第でここまでやれるよ!ということをメーカーとして提案したかったそう。
CR-Zの雰囲気を残しつつも、ガラリと印象が変わっているのは、このような経緯があったのです。
また、その印象を変える鍵となる部品は皆さんが乗っているクルマと同じものだったりするかもしれません。
TASで実際にRe:Zをご覧になった皆さんは、どこにどのクルマのパーツが装着されていたか、お気付きになりましたか?

ヘッドライトはN-ONEのものを流用しています。 / ©︎Motorz

LEDのフォグランプはアコードのもの。/ ©︎Motorz

ホイールはエンケイの市販品にオリジナルのホイールキャップを装着して印象を変えています。/ ©︎Motorz

アンテナもN-ONE用のローダウンアンテナです。/ ©︎Motorz

このホンダの旧エンブレムは2016年のTASにエヌラボが出品した『S660ネオクラシック』の物を流用。/ ©︎Motorz

”Z”のエンブレムはN-BOXのモノを90°回転させただけ、というユニークなアイデア。 / ©︎Motorz

シートはホンダ・モンキーの50周年スペシャルモデルのシートと同じものを使っています!皆さんは気付きましたか?
/ ©︎Motorz
まとめ
このRe:Zの取材を通して、このクルマはホンダ本体とは別の”ホンダアクセス”だからこそ作れた1台だと改めて実感しました。
なぜならば、生産が終了した車種をベース車両にしたこともそうですが、2輪・4輪の垣根なく随所に散りばめられた他の車種用のパーツなど、自動車メーカーとは別会社で、なおかつ4輪(かつては2輪も)を取り扱っている同社の強みが最大限に活かされていたからです。
そして、このRe:Zの青色の塗装については『グリントウェーブブルーメタリック』というスーパーカブ110などで使われている2輪用のカラーとのことで、やはりここでも横のつながりが強く活きていました。
このように、ユニークな発想で商品が生まれているホンダアクセスにこれからも注目していきたいと思います!

©︎Motorz

“Re:”に込められた4つの意味、CR-Zのリノベーション、初代Zのリバイバル、他のホンダ車からの部品のリユース、そして何よりリラックス出来るクルマを目指したのだそう。/ ©︎Motorz
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