去年からコロナ禍で不景気続きかと思いきや、世の中あるところにはお金があるのか、それとも株や先物がアテにならないと思ったのか、中古車の価格が上がっている気がします。それも1990年代までの日本車黄金時代や、レアな限定車の類達。おかげで貯金して狙っていた車が買えなくなったというアナタのために「1980年代以降の国産スポーツ、中古車1,000万円オーバーの乱」!!今回は、7台をお届けします。

スカイラインGt-Rのように世界中で人気になるような名車は、価格高騰が過熱気味 / Photo by sideways jdm

6位:えっシビックだよね?!ホンダ 無限シビックRR(ダブルアール) 1,500万円

ホンダ シビック無限RR(ダブルアール) / 出典:http://www.mugen-power.com/automobile/complete/MUGEN-RR/press/RR.html

シビックタイプRといえば、昔の初代EK9はジムカーナからダートラ、ラリーと何でも有りで、レースもスーパー耐久からワンメイクレース、さらには安くてお金のない若者でも買えるから、ストリートでも頑張っちゃうぞ!という愉快な車でした。

しかし世の中楽しい時間はいつまでも続かないもので、今ではサーキットでFF世界一と言われても「おおすごい!どうせ買えないけど」と、ただひたすら夢を与えるだけの高価な車となりました。

まだ何とか一般庶民でも普通に買えた最後のシビックタイプRは3代目FD2型で、税込車両価格が283.5万円の4ドアスポーツセダン。

ガチガチの足回りと活発なK20A DOHC VTECエンジンにより、モータースポーツでは未だに強豪車種の1台に連なる活躍を見せるほどの実力を持ちますが、4ドアだからファミリーカーに使えるね!と購入して泣いた人もいるのではないでしょうか。

そんなFD2型シビックRを、実質的なホンダワークスたる無限がさらにスパルタンに鍛え抜いたのが「無限シビックRR(ダブルアール)」で、477万7,500円は最新のFK8シビックタイプRに匹敵する価格ながらも、300台限定受注生産という希少性もり、2007年9月13日の発売からわずか10分で瞬く間に完売したのです。

それから13年半ほどたち、中古車市場を覗いてみると無限シビックRRの中古車価格が、なんと1199.9万円から1,500万円!

最新にして世界最速FFのの座を争うFK8型の市場での最高額がプレミアが付いた上で850万円なのに、それよりはるかに高くて新車価格の2倍から3倍以上です。

そう考えると、FK8も今買っておけば電動化されていない新車が買えなくなる2030年代には、すごいプレミアがついているかもしれません。

5位:ついに白鳥となる日が来た!BCNR33スカイラインGT-R(&BNR32) 1,699万円

ついに価格高騰が始まった日産BCNR33 スカイラインGT-R / Photo by D – 15 photography

アメリカで新車を販売していない車は原則として、中古車を輸入しても登録できないものの、新車登録から25年以上たてば実用車扱いから外れ、希少な趣味車扱いとなるため堂々と乗れるようになる「25年ルール」。

日産BNR32スカイラインGT-Rに25年ルールが適用された瞬間、一斉に北米で大人気となって右から左に売れるようになりました。

一時は日本の中古車市場からBNR32がめっきり減ってしまい、残る優良なタマもかなり高値の花になってしまった状態です。

その一方で、新車販売時は大型化と重たげなデザインで不評となり、中古車市場でもスマートなBNR32とアグレッシブでいかにも高性能なBNR34に挟まれて、不人気路線まっしぐらだったBCNR33スカイラインGT-Rでしたが、25年ルールが適用されればきっと人気になる、「みにくいアヒルの子が白鳥になる日」はきっと来ると言われて幾星霜。

めでたく2020年に、デビューから25年を迎えたBCNR33の中古車価格はウナギのぼりです!

RB26DETTを搭載する第2世代スカイラインGT-Rで唯一、中古車価格が1,000万円に届かないばかりか600万円台あたりをウロウロしていた長いトンネルを抜け、今頃はアメリカ西海岸あたりで日光に焼かれながら、元気に走っているのでしょう。

2021年4月現在の中古車価格はBNR32と並ぶ1,699万円へ上昇。つまり数年前より最高額が1,000万円も上がっており、今後の情勢次第ではさらに上がって行くのかもしれません。

これから盛り上がりそうな33Rと対象に、市場が落ち着いてきた感のある日産BNR32 スカイラインGT-R / Photo by crash71100

一方、まだまだ高値をつけているBNR32ですが、一時は程度良好ながら超高額な車と、安いけど少し不安になるコンディションの車がチョコチョコといった流通状況から、タマ数は確実に増えています。

あまりの高額にBNR32の購入をあきらめていた人には、もしかすると今が最後のチャンスかもしれません。

4位:JDMブームの右ハンドル人気かGRスープラへの反逆か?JZA80スープラ 2479.9万円

昨年あたりから急激に価格高騰が始まった、トヨタJZA80スープラ / Photo by Justin Chan

もともと堅実な人気で推移してきた純トヨタ製としては最後の直6FRスポーツクーペ、JZA80スープラですが、どうも2020年あたりから中古車価格が急騰してきている感があります。

2021年4月現在、その相場を牽引しているのは2002年式、つまり最終モデルの3リッター直6ターボ2JZ-GTEに6速MTを組み合わせた「RZ-S」で、最高額は実に2479.9万円!

「たかが80スープラ、そんな値段じゃ誰も買わないよ!」という声が聞こえてきそうですが、ならばワンオーナーのノーマル車で程度良好、走行距離もわずか1.2万kmの80スープラでもっと安い車を探してくださいと言われても、そうそう出てくるとは思えません。

ここまでの価格になると、走らせるためというより「資産への投資」、10年後に迫る電動化時代にオークションなどへ出したらもっと高値がつくのは確実と見込んだ投資家がいれば、アッサリ買われる可能性もあります。

他にも走行5万km以内で1,000万円オーバーの価格が提示されており、TRDのフルエアロで武装したコンプリートカー、「TRD3000GT」の2号機(走行2.7万km)などはASK(価格応談)扱いですが、ヘタをするとさらに大台を超えるのではないでしょうか?!

ついに80スープラも投機の対象になる日が来たかと思うと、感慨深いものがあります。

3位:2代目どころか初代後期でもない、最初のNSXタイプRが最高値! 2555.9万円

ヘタすると2代目NSXより高価な初代NSXのタイプR / Photo by Alexander Nie

デビュー当時の熱狂的なブームが過ぎた1990年代末あたりから、「頑張れば500万円くらいから中古で買えるスーパーカー」だった初代NSXですが、現在でも年式程度なりでよければ500万円以下の中古車が販売されており、考えてみるとここ20年であまり相場が変わっていないような気もします。

ただしそれは「NSXならなんでもよければ」という話で、初代NSXで最初のタイプRともなれば、走行7.9万km、サーキット未走行で1,958万円、走行13万kmとはいえ2013年にリフレッシュプランを受けたなら2,380万円、ECUチューンやVTECコントローラーなど、速さのために手を加えまくったものなら、なんと2,555.9万円の高値!

ちなみに2代目NSXの2020年モデルで2,420万円となっているので、それより高い事になります。

快適かつ安楽、安全ではあるものの、刺激不足を指摘される事が多い2代目NSXより、パワステすらないスパルタンな初代前期タイプRのチューニングカーにこれほどの価値があるとは驚きですが、もう1台、走行1.7万kmの初代前期NSXタイプRが「ASK」で控えており、値段を聞くのが怖い状態です。

栄光と誇り、そして魂のためなら決して高くはない?!インプレッサ22B 3,300万円

WRCでの栄光を形にしたインプレッサ22Bは高価だけでなくスバリストの魂がこもる / Photo by FotoSleuth

クルマ好きならご存知の通り、1990年代のグループA時代とWRカー時代初期に大活躍し、トヨタのセリカGT-FOURや三菱のランサーエボリューションとともに、WRC(世界ラリーイ選手権)で日本車黄金期を築いた初代GC8インプレッサWRX。

スバルとしても、レオーネ時代の下積みを経て初代レガシィRSで本格参戦したWRCにおいて、初めてライバルを圧倒できるマシンとして登場。

その活躍ぶりは多くのスバリストの溜飲を下げ、新たな同志を獲得する原動力ともなったほか、「強い4WDスポーツのスバル」というイメージは現在まで続いています。

その初代インプレッサWRXが1997年にWRCのマフュファクチャラーズを獲得したのを記念し、1998年3月に400台限定で発売されたのが「GC8改 インプレッサ22B-STIバージョン」です。

2ドアクーペのWRXタイプRをベースに、同じく2ドアクーペのWRカーの雰囲気を再現スべく前後ブリスターフェンダーでワイドボディ化。

エンジンもEJ20ではなく2.2リッターターボのEJ22改が搭載され、500万円で発売されるやすぐに完売する人気車でした。

6位で紹介した無限シビックRRもそうでしたが、こういう限定モデル、しかもWRCの伝説的活躍という栄光を語り継ぐ「スバルとスバリストの魂であり誇り」としてのモデルは、そもそもスバリストやコレクターがそうそう簡単に手放すクルマではありません。

むしろよくぞ中古車市場で売られているものだと感心するくらいで、3,300万円という価格のインパクトも、「高いと言うなら同じ車を持ってきてみなさい!」という正論でぶっ飛びます。

投機目的や金にあかせたコレクターより、熱心なスバリストが末代まで伝承するための家宝として購入してほしい、まさに特別な1台です。

RB26DETTよ永遠に!最後のスカイラインGT-R、BNR34 VスペックIIニュル 3,480万円

最後のスカイラインGT-R、日産BNR34 スカイラインGT-R V・specII Nur(ニュル) / Photo by FotoSleuth

この車も、やはり日産の、そして古くはプリンス時代からの「スカイライン神話」の信奉者にとっては、神器に等しい存在かもしれません。

バブル崩壊後、坂を転げ落ちるというより、真っ逆さまに墜落炎上していた日産に残された最後の誇り、スカイラインGT-Rと日本のエンジン史上屈指の名機RB26DETTの組み合わせ。

ルノー傘下で経営再建に取り組む中、車種整理でベースのR34スカイラインが2001年5月に生産終了してもなお存続を許されたものの、平成12年の排ガス規制の猶予期間が切れる2002年8月にはついに生産終了。

次世代のGT-R(後のR35)へ希望を託した最後のスカイラインGT-R、BNR34型は、最後の最後まで誇りを失う事はありませんでした。

生産終了を予告すると同時に発表された計1,000台のファイナルバージョン2種のうち、最後にして最強のスカイライGT-Rが、「VスペックIIニュル」です(もう1種は乗り心地や上質感を高めたGT志向の「Mスペック ニュル」)。

2020年のはじめあたりでも、既に買取市場では安くとも1,000万円程度が相場という、18年前の車としては異次元の価値が認められていた車であり、走行わずか1.2万kmで程度良好な個体に、3,480万円の価格がついても驚きはしません。

何しろこれが最後のスカイラインGT-Rであり、日産最後の直6スーパースポーツ。自動車史に名を留める車であれば、当然とすら言えます。

ただしこの1台を所有するという事は、日産の、そして古のプリンスの魂を所有するに等しい所業であり、なかなか気持ちで手を出せないのではと考えますが、今後どのような歴史を歩み、あるいは再び表舞台に現れる日が来るのか、興味は尽きません。

もっと古い国産車は、既に「歴史遺産」や「国宝級」の域に達しつつあり

1970年代以前の文化遺産級な名車にも、このマツダ コスモスポーツのように1,000万円オーバー車は多い。/ Photo by More Cars

今回は「庶民的感覚からすれば目ン玉が飛び出るような値段の車」のうち、1980年代以降の車を紹介しましたが、さすが1990年代は日本車黄金期と言われるだけあり、1980年代の車は1台もランクインしませんでした。

それでも500万円~1,000万円の範囲内なら何台か入るはずで、軽自動車やコンパクトカーでも興味深い値動きをしている車が何台かあるため、また機会があれば紹介したいと思います。

なお、さらに深い沼へハマる1970年代以前の希少な名車で程度良好、現在の交通でも耐えられそうな性能を持つ車は、今回紹介した以上の価格がつくケースもありました。

たとえば第1世代スカイラインGT-Rでも1970年式のPGC10(4ドアGT-R)なら3,980万円、1971年式KPGC10(2ドアHT GT-R)なら3,900万円など、第2世代のBNR34より高値が付いています。

引きずられるように、1972年式スカイラインGTのL28改3.1リッター搭載GT-R仕様でも2,000万円の値がついていますが、1976年式の「ケンメリ」スカイラインGX-TEノーマル車の1976.3万円は、おそらく「初度登録が1976年3月」である事からのシャレではないでしょうか。

2,480万円の1970年式フェアレディZ432や、1,080万円の1970年式コスモスポーツといった伝説的な車たちも、値札が発表されているだけマシというもので、多くは「ASK(価格応談)」の札を下げ、本当に関心のあるユーザーが訪れる日を待ち続けています。