中古車にプレミア価格がつくパターンにはいろいろとありますが、今回紹介するのは「台数限定や日本への割当台数の少なさで、発売して間もないのに即プレミア化、あるいはしばらくたっても価格が下がらない国産スポーツ」です。中には「え?この車が?」と驚くケースがあるかもしれません。

今回は値札のついた流通車両がなかったので選外でしたが、トヨタ 86GRMNも間違いなくこのジャンル。 / 出典:https://toyotagazooracing.com/pages/grmn/86/

8位:5年落ちでも新車から70万円以上アップ!ホンダFK2シビックタイプR 499.8万円!

まだまだ高いです、ホンダFK2シビックタイプR / 出典:https://www.honda.co.jp/auto-archive/civic/type-r/2016/webcatalog/styling/

トップバッターはルノー メガーヌやVW ゴルフとニュルブルクリンクサーキット北コースで組んずほぐれつ三つ巴のタイムアタック!FF世界最速タイムを争って現在に至る流れを作った、ホンダFK2シビックタイプRです。

2リッターVTECターボエンジンK20Cを搭載し、当時最強を誇ったシビックタイプR。

リアサスペンション形式は車好きにはあまり評判よろしくないトーションビーム(車軸式)と微妙な構成ながら、勝てば官軍とばかりにFF最速の実績を引き下げ世界限定8,500台を発売します。

日本でも2015年12月に、ニュルのベストラップ7分50秒63を由来とした750台限定で、しかもWEBからの商談申込限定で発売されると、同時に申し込みが殺到。あっという間に完売となりました。

そしてその直後から、中古車店で「シリアルナンバー○番販売中!」とFK2の新車や登録済み未使用車がプレミア価格で販売されるようになり、正規の車両本体価格428万円に対し、500万円オーバーは当たり前という状態が続きます。

それから4年少々が経過し、走行5.9万kmとソコソコまともに使われた車は349.9万円とやや落ち着いたとはいえ、それで最安価格なので天井も知れたもの。最高値は走行227万kmのガレージ保管禁煙車、あるいは走行581kmと、「それって本当に乗るために買ったんですか?」と言いたくなる極上モノだと499.8万円もします。

5年落ちでまだまだ新車価格以上のプレミア、他のシビックRや最新のFK8シビックRの人気に引っ張られて落ちる気配はなく、それどころかFK8が電気式パーキングブレーキになった関係上、「最後のサイドブレーキ式シビックR」、つまりジムカーナなどでサイドターンをキメらっる最後のシビックRなだけに、ヘタをすると後々思わぬプレミアがつく可能性がまだまだあるかもしれません。

7位:最後のランエボ!ファイナルエディション715万円!

最後のランサーエボリューション、ファイナルエディション / Photo by DJANDYW.COM AKA NOBODY

かすかな希望を抱き、未だに復活待望論が根強い三菱の4WDスポーツセダン「ランサーエボリューション」ですが、今の三菱自動車を見る限り、また大衆向け小型セダンを作ってそれをベースにエボリューションすることなど、もはやありえない話だと思います(ミラージュならともかく)。

2015年に「これが本当の本当に最後のランサーエボリューション」として登場した「ファイナルエディション」は、それゆえかなりの話題となり、同年8月に販売された日本国内限定1,000台はたちまち完売御礼。その後も海外でオークションにかけられ高値落札されるなど、しばらくニュースが続きました。

このファイナルエディションは、通常のエボXが300馬力なのに対し313馬力を発揮するなど、ランエボ史上最強の動力性能が与えられたほか、内外装も細部が特別仕様となっていましたが、発売当時は通常のエボXも中古車が高値推移していたため、さほど目立ちませんでした。

しかし、5年ほどたった現在ではファイナルエディションの突出したプレミアぶりが目立っています。

中でも最高値をつけているのは2015年式、走行0.9万kmの5速MT、ワンオーナー禁煙車で715万円!

新車価格が429.84万円と今ならFK8シビックRも買えないほど安かったのに、300万円近いプレミアがついています。

今となっては、もはやランエボの復活はありえないと言っても過言ではなく、よきライバルだったスバルのWRX STIは、あまりにも対照的な存在すぎて「ランエボが高いから、じゃあWRXにする!」というものでもないため、このプレミアはしばらく続きそうです。

それどころか時間が経つほど伝説的色彩を強めていくだけに、価格はさらに跳ね上がり、そのうちどこかの石油王にでも引き取られるのではないでしょうか。

6位:初代86の100台限定TRDコンプリートカー「14R-60」は775.5万円!

TRDが完成させた至高の86、「14R-60」 / 出典:https://toyota.jp/customize/86/14r-60/

言わずと知れたトヨタ&スバル合作FRスポーツのトヨタ版「86」には、いくつかのコンプリートカーが存在し、その中でも間違いなくプレミア度No.1なのは、2016年2月に100台限定で販売された「GRMN」です。

ただし86GRMNは中古車市場でほとんど出回っておらず、あったとしてもASK(価格応談)扱いで実勢価格は不明。

従って次点となりますが、2014年10月にTRDが創立60周年記念コンプリートカーとして100台限定、新車価格630万円で発売した「14R-60」の2015年式、走行0.4万kmの775.5万円が現状では最高値です。

219馬力へチューンされたGRMNとは異なり、エンジン自体はノーマル。

しかし2シーター化を始めとして、エンジン以外の吸排気系、駆動系、コンピューターや足回り、エアロからボディに至るまでが、「形を残してまるで別物」となっており、TRDが究極の86を目指してコンセプトを突き詰めた、「86 TRD Griffon Concept」の技術が目一杯フィードバックされています。

渾身のコンプリートカーというより「86ベースのTRDオリジナルマシン」と言っても良いほどのため、新車価格は630万円でも納得。むしろ86でここまで理想を追い求めると、本来はこういう価格の車なんだなと思わせるという意味では、86GRMNと双璧をなします。

もともとまだ市場に出回っていた時期のGRMN同様、新車価格をなかなか下回ることのないプレミア価格で推移していましたが、発売から6年以上が経った今も775.5万円と新車価格+145万円ほどが最高値となっており、安いものでは500万円を切る車もあるとはいえ、オリジナルで走行距離が少なめだと、希少価値はさらに上がる傾向にあるようです。

5位:コンセプトカーを市販にこぎつけたコペンクーペは289.8万円!

車両本体価格だけで300万円オーバーの日も近い?ダイハツ コペンクーペ / 出典:https://coupe.copen.jp/

今回紹介する中では、価格面でのインパクトは薄いものの、最近ホンダS660の販売終了で、今後の去就が注目されるという事で特別出演!(当のS660はまだプレミアとしてのインパクトはイマイチ)

2016年の東京オートサロンでシューティングブレーク仕様ともどもコンセプトカーとして出展された後、2019年1月に200台限定とはいえ市販にこぎつけた2代目コペンのクーペ仕様、「コペンクーペ」の5MT車が、新車価格の248.4万円に対し、現在の中古車最高値は、走行855kmのバリモノが289.8万円となっています。

200万円オーバーの軽自動車が当たり前のように販売されるようになってから、しばらくたちますが、諸経費込みで305.8万円と、プレミア価格ならついに軽自動車も300万円の領域に達しました。

なお、オープンスポーツのクーペ仕様限定車といえば、他にマツダのNBロードスタークーペも若干プレミアがついて、新車価格より今でも高値で販売されているため、コペンクーペもこうした程度良好車は、徐々にプレミアが分厚くなっていく事が予想されます。

4位:意外ッ!110台限定特別仕様車とはいえマツダのNDロードスターが499.8万円+α?!

マツダ NDロードスター「ロードスター30周年記念車」(写真は米国仕様) / 出典:https://newsroom.mazda.com/ja/publicity/release/2019/201903/190325a.html

ここで意外な1台が搭乗します。

現行マツダNDロードスターの110台限定特別仕様車として2019年4月に発売された、ロードスター30周年を記念する「30年周年特別仕様車」で、新車価格368.28万円に対し、走行0.3万kmの6速MT車が最高値で499.8万円と130万円アップ!

しかも米国マツダから逆輸入の2リッター左ハンドル仕様は698万円というサプライズつきなので、いかに日本仕様にないモデルとはいえ驚きです。

米国仕様はともかく、国内仕様にまで、なぜこれだけ高値がつくのでしょうか。

専用ボディカラー「レーシングオレンジ」を採用するなど内外装はオレンジ基調でコーディネートされ、ビルシュタインダンバーやBOSEサウンドシステム、RAYS鍛造アルミホイールやブレーキもフロントブレンボキャリパー、そしてリヤNISSINキャリパーと、確かに特別仕様ではあります。

発表に対してオーダーが殺到したとはいえ1,900件ほどで、それに対してわずか110台限定というプレミア感が内容以上に中古車価格を押し上げている感があり、少々違和感を感じるほどです。

それだけ、ファンからのロードスターに対する想いが熱いという事かもしれませんが、2021年5月現在で流通台数は3台。

これがもう少し増えて年式や走行距離が相応になると、価格は下がってくるのではないでしょうか。

現状はプレミアが持続する要素があまり見当たらず、キャンセル待ちをしてでも欲しいと考えていたユーザーを当て込んだ、ちょっとした「30周年記念車バブル」なのでは?と思えます。

3位:トヨタ最後のFR+MTスポーツセダン、マークX GRMNが682万円!

トヨタ マークX GRMN(2019年3月発売モデル) / 出典:https://global.toyota/jp/newsroom/toyota/26125233.html

一時のプレミアがどうやら落ち着いてきたと思われるのがマークX GRMNです。

2代目マークXの3.5リッター車をベースに6速MTが組み込まれ、足回りやボディに手を加えて軽量化を施すなど、トヨタ最後にして最強クラスのFRスポーツセダンを目指す心意気が見られる同モデルは、2015年3月に100台、2019年に350台限定で販売されました。

このうちプレミア価格をつけているのは当然、2019年式の走行少なめ程度良好車だったのですが、2021年4月に調査した時には最高値740万円だったところ、5月には走行0.5万km車が682万円まで下がっています。

2019年式マークXの程度良好車として、他に走行270万km(660万円)、500km(649万円)と、装備面での差はあるかもしれませんが、程度極上車と言ってよい車の方が安く販売されており、新車価格513万円(2019年式)に対するプレミアの過熱は、少々落ち着いてきたのかもしれません。

ただし最高値車のボディカラーは珍しいワインレッドで、他は全てブラックかホワイトなのを考えると、最後のトヨタFRスポーツセダンで個性的な1台をチョイスしたいなら、少々高くつくのは仕方がなさそうです。

2位:プレミアではなくコンプリート相場?GRスープラRZ 900万円

トヨタ GRスープラ GRパーツカスタマイズ仕様 / 出典:https://toyota.jp/supra/option/original1/

プレミア価格、それも現行車種や高年式車を追っていると、何となくプレミアがついている理由がイマイチわからない、実態が伴っているのだろうかと疑問に思う車種があるもので、このGRスープラなどが、まさにその最右翼です。

2020年式で車検が2023年1月となっていることから、おそらく2020年1月に初登録された車両で、1年少々で0.6万km走行は多すぎず、少なめというほどでもありません。

ボディカラーも希少価値の高いマットストームグレーメタリック(2020年モデルで24台、2021年モデルで27台限定)ではなくイエローです。

3リッターターボのRZは高価で日本での台数も少なく希少なのかなとも考えられますが、流通は86台あり、レアというほどではありません。

むしろ同程度のRZで希少価値が高いマットストームグレーメタリック車の方が、664.9万円とよほど安く買え、新車価格が700~730万円程度の高年式中古車としては、特にプレミア感もありません。

しかし飛び抜けた高値には何かあるはずと思っても、説明らしきものは何もなく、ヒントは写真と出展しているショップ名からの検索結果のみ。

他にも相場以上の車が何台かあり、察するにただの中古車ではなさそうですが、明らかにエアロなどでノーマルではないとわかるものもあり、GRスープラに関しては現状、プレミア相場というより「コンプリート相場」なのでしょう。

高くともその価値があるならば!という方は、直接問い合わせて熱意を伝えてみると、納得のいく理由を聞かせてもらえるかもしれません。

1位:今もっともプレミア相場が熱い!最終モデルが速攻完売のFK8シビックR 850万円

ホンダFK8シビックタイプRリミテッドエディション(量産前最終開発車両) / 出典:https://www.honda.co.jp/news/2020/4200709.html

こればかりはプレミアが付いても仕方がないとばかりに、現在もっとも市場で熱いプレミア価格となっているのが、イギリスで生産されるものとしては最後とされており、2020年10月に最後のマイナーチェンジ、同11月にファイナルモデルとなるリミテッドエディションが発売されるや発売前に完売していた、という「は?!(怒)」と言いたくなる展開の1台です。

シビックタイプRは、初代EK9を新車で売っていた頃はかなり安くて身近な「町内最速スポーツ」だったのに、今や世界のシビックタイプRとして投機的な車になってしまったのかと嘆いてみるも、諸々の事情でイギリスでのホンダ車生産も2021年夏には終わってしまうため、世界中から引っ張りダコの人気車種とあれば、致し方ありません。

さて肝心のプレミア相場ですが、新車価格が458.37万~475.2万円(リミテッドエディションのみ550万円)なのに対し、走行0.2万kmの2020年式マイナーチェンジ後モデルの850万円が最高値。

2021年3月登録の登録済み未使用車(走行14km)が678万円なので、実際はこのあたりが最高値かもしれません。

同年式同程度の登録済み未使用車の最安値が589.9万円なので、おおむね630~640万円あたりが程度良好な後期FK8シビックRの相場と言えそうです。

今から新車をオーダーできる車ではなく、新車同然の車を買おうと思うと他に手段がないとはいえ、シビックRが600万円オーバーというには驚きですが、先代FK2の状況を見ると、上がる事はあっても下がる事は考えにくいと思います。

一応、次期型シビックにもタイプRは設定されると言われていますが、情報が錯綜していて先行きが見通せず、「現時点で間違いなく最強のFK8をまだこの価格で済むうちに買うか、もしかしたらもっとすごいかもしれない次期型を待つか」、本気で今からFK8なり新型シビックRを、それも新車かなるべく使用感のない状態で買いたいと思う人には、悩ましい状況になりました。

プレミアとはいえ、「値札がついてて買えるだけマシ」とも言える

おお幻の君、レクサスLFA…オークションで1億円もするとはなにごとじゃ!/ 出典:https://lexus.jp/models/lfa/gallery/

今回は、「新車発売からまだ間もない国産スポーツモデルで、新車価格より大幅プレミア、少なくとも新車価格以上という車」を8台紹介しました。

プレミア価格をつけるのは自由ですが、仕入れたお店もそれなりの労力を払い、高値をつけても売れなければ価値の低下や保管など、経費の負担がのしかかる、かなりリスクの高い商売をやっているわけなので、決して販売店を責めるような筋合いのものではありません。

とはいえ、「たまには希少車をゴッソリ仕入れて薄利多売してくれるお店がないかな」と、無茶な事も考えてしまうのは人情です(薄利多売できるような車じゃプレミアはつきませんが)。

しかしちょっと前向きに考えると、今回紹介した車は「まだ値札がついてて金を出せば買えるだけマシ」とも考えられます。

何しろ新車販売から中古車市場で見たことがなく、たまに海外のオークションに登場したと思えば1億円近くで落札される、レクサス LFAなどはプレミアどころの話ではなく、札束を準備してなお、いつどこで売りに出されるかわからない、幻のような存在です。

そう思うと1,000万円以下で買える車は「まだ現実的」なのかもしれませんが、もっとキチンと現実を見つめた場合、「安いのにこれだけ楽しめる!穴場な車」を探したほうがいいのかもしれません。