フェラーリ車の販売・整備・オリジナルパーツなどを取り扱う『レーシングサービスデイノ(RSD)』は、日本にスーパーカーブームがやってくる少し手前の1973年に代表の切替 徹さんが茨城県土浦市にオープンさせたフェラーリ専門ショップです。当時、全国的に見てもまだフェラーリの専門店は無かったという中で、どのようにしてお店を立ち上げるに至ったのでしょうか?また、どのようにフェラーリと出会ったのか。などを、お伺いしてきました!

 

こちらはRSDのショールーム。 / ©︎Motorz

 

 

レーシングサービスデイノとは?

 

こちらは現ショールームの隣にある旧ショールームで、現在はストックヤードとなっています。同社の創業の地でもあります。/ ©︎Motorz

 

今から50年近く前のこと、RSD代表の切替 徹さんは当時サラリーマンとして働きつつ、空手の師範代として3つの道場を掛け持つ日々を送っていました。

そんな、まだ20代の頃の切替さんは、ある日、当時まだ日本でも珍しかったという赤いディーノと出会い、衝撃を受けたのだそうです。

そして「絶対にいつか手に入れたい!」という想いは、1973年に25歳の若さでRSDの前身となる『カーショップディノ』をオープンさせるまでに至りました。

以降45年に渡り、切替さんの地元でもある創業地の茨城県土浦市でフェラーリ専門店として、フェラーリのクラシックモデルから最新モデルの販売・整備のみならず、モータースポーツの現場で開発されたエアロパーツなどの販売も行なっている、フェラーリ界の老舗ショップとしてユーザーに愛されているのがRSDなのです。

 

切替徹とフェラーリとの出会い

 

©︎Motorz

 

切替さんとディーノとの出会いは、大阪市の中之島公園だったそうです。

たまたま訪れた公園に偶然、珍しいクルマが停まっていたのでオーナーに話かけてみると、とても人柄の良い方だったそう。

そしてシートに座らせてもらったり、エンジン音を聴かせてもらったことで、ディーノに一目惚れしてしまったのだとか。

そんな切替さんの考えるフェラーリの魅力とは、クラシック / ニューモデルともに共通していて、

「まずは伝統。F1にこだわり、”ロッソコルサ”という同じ赤色を守り続けている点。

まぁ、これは企業としてですかね。クルマとしては流麗なスタイリングと、やっぱり官能的なエンジン音ですよね!」

と語ってくれました。

「いつか絶対にディーノを手に入れたい!」という想いから『カーショップディノ』をオープンさせた切替さんは、創業翌年の1974年に早速、念願だったブルーのディーノ246GTを中古で購入しています。

その後、1976年ごろからメディアなどでスーパーカーが大々的に取り上げられるようになり、いわゆる『スーパーカーブーム』が到来します。

切替さんは”スーパーカーのご意見番”的ポジションでTVにコメンテーターとして出演したり、更には『真っ赤なフェラーリ』という曲でレコードデビューも!

その後、1982年にはフェラーリ車のオーナーズクラブ『フェラーリクラブ・ジャパン』を立ち上げ、30年近く同クラブの会長を務めました。

ちなみに同クラブの初回ミーティングには全国から50台ほどのフェラーリが集まったのですが、308GTBiや512BBiといった車種が多かったのだそう。

また、1985年には著書も出版されるなど、マルチに活動されていたこともあり、フェラーリオーナーという限られたコミュニティの中で、インターネットも普及していない時代ながら、口コミでRSDにはお客さんが集まってきたそうです。

 

こちらは切替さんの2冊の著書。『フェラーリを診断する』の反響は上々で、2冊目の『スポーツカーを診断する』を上梓するまでに至ります。 / ©︎Motorz

 

フェラーリの本社も田舎

 

こちらは旧ショールーム。新ショールームは本当に隣に建てられ、ずっとこの地で続けられています。 / ©︎Motorz

 

その後、バブル期が到来するなど、日本経済は好景気を記録します。

それに伴い1993年には現在の新社屋を旧ショールームの隣に建設し、現在に至るのですが、その新社屋を建てる場所にはかなり悩んだそうです。

思い切って都内に会社ごと移すことも考えたそうなのですが、ずっと続けてきた土地であり、やはり地元への強い想いがありました。

それに「フェラーリの本社があるマラネッロだって田舎じゃないか。」ということから旧ショールームの隣に建設することを決意。

「ただでさえフェラーリのオーナーさんは熱心な方が多いですが、やっぱりオーナーズクラブの繋がりは強いですかね。

少し辺鄙な土地ですが、そういった皆さんに支えられながら、ここ土浦でもかれこれ45年、フェラーリ専門として商売が成り立っています。」

切替さんからそんなお話を伺った筆者は、「もしかして、土浦は日本のマラネッロなのかもしれない。」と思ったのでした。

 

本当のフェラーリを売りたい

 

RSDでは最新車からクラシックモデルまで様々なフェラーリを整備してくれます。 / ©︎Motorz

 

前述のように、メディアへの露出やオーナーズクラブの設立など、フェラーリに対する様々な啓発活動を行ってきた切替さんでしたが、ふと「何かが足りない……。」と感じたそうです。

その答えはとても簡単で、それは”レース”でした。

やはりフェラーリというレースの純血から生まれてきたクルマを取り扱う人間として、「ある程度は限界まで走らせる事ができるようにならないといけない。」と思うようになったそうです。

そして、ちょうど’90年代後半ごろから国内でもフェラーリ・チャレンジが行われ始めたことも相成って、レース活動を開始。

フェラーリのみならず、MGFのワンメイクレースなどにも参戦し、数々のレースで好成績を獲得していくことで、レース業界にもその名を轟かせます。

こうして”本当の意味で”フェラーリを理解しようと努力した切替さんは、次第に「本当のフェラーリを売りたい。」と考えるようになりました。

なぜなら、国内に正規輸入されてくるフェラーリは、国内向けにメンテナンスされます。

実際にイタリアの現地でフェラーリに乗ったこともある切替さんは、本国仕様であるEU仕様の方がよりパワフルで、もっと官能的なのだと語ってくれました。

RSDではそんなヨーロッパ仕様フェラーリの並行輸入を、ディーラーと同じ保証で購入できるような環境が整えられています。

「たまにディーラーで試乗されてから、うちに来てEU仕様のクルマを試乗するお客さんがいるんですけど、やっぱり皆さん口を揃えて「違う」とおっしゃいますね。」

「それと、これはフェラーリに限らずですが、500馬力以上のクルマに乗るなら、一度はサーキットで走らせてマシンの限界を知って欲しいですね。」

そして、この言葉通り、当然RSDではフェラーリオーナーを対象にスポーツ走行会なども行なっています。

切替さんは、EU仕様のフェラーリでサーキットを思い切り走らせる事で、ようやくフェラーリの本来の姿を体感できるのだと教えてくれました。

 

こちらはRSDが今年からフェラーリ・チャレンジに導入した458チャレンジEVOで、ちょうど取材のあった週末にチャレンジカップ第1戦の富士Rdがあり、まさに最終調整を終え、これから富士へ向かうという所でした。/ ©︎Motorz

 

ショップ情報

 

©︎Motorz

 

住所:〒300-0038 茨城県土浦市大町7-16

営業時間:

月曜日-金曜日 9:20-18:30

日曜日・祭日 10:20-17:30

定休日:毎週土曜日 第4週日曜日

TEL:029-824-1662

FAX:029-822-5266

E-mail:info@rs-dino.com

HP:http://www.rs-dino.com/

 

まとめ

 

現在はレーサーとしての現役は退かれた切替さんですが、5月に筑波サーキットで開催予定の『筑波サーキット・カーフェスティバル』には参戦予定とのこと。 / ©︎Motorz

 

御年71歳という切替さんのフェラーリ愛は、創業から45年が経った現在でも、まだまだ冷め止まないご様子。

最新モデルのフェラーリの話題になった際には、

「458イタリアから現行の488GTBにモデルチェンジした際に、「NAじゃないとフェラーリじゃない!」という声がたくさんありました。

けど、実際に乗ってみたら全然そんなことは無かった。むしろ458イタリアから、格段に進化していて「やっぱりフェラーリなんだな」と改めて実感しました。」

「思い返せば、キャブレーターからインジェクションへとフェラーリが移行した時も、同じような声が挙がっていたんですよね。

周りが騒ぎ立てるだけで、フェラーリはその伝統に則ってドンドン進化している。改めて感心させられましたよね(笑)。」

と、コメントしてくれました。

もうかれこれ40年以上、365GT4BBを所有し続けている切替さんならではの、まさに”温故知新”なエピソード。

そして最後に、

「フェラーリに限らず、1台のクルマに長く乗り続ける・所有しつづけるように、仕事や遊びを頑張ると人生が豊かになるよ。」

と筆者にアドバイスをくれました。

それは、若者にとってクルマを所有することさえハードルが高くなっている現代ですが、自分も愛車を手放さずに過ごせるようにこの先も頑張ろう!と改めて襟を正す気持ちにさせてくれる一言でした。

 

 

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