その偉大なる実績から『歴代ブルーバード最高傑作』との呼び声も高い3代目510ブルーバード。その絶頂は1970年、サファリラリーでの念願の総合優勝でした。2代目410の反省から採用された『スーパーソニックライン』デザイン、4輪独立懸架となったサスペンションなどを手に入れ、近代マシンとして一皮むけた同車は、コロナとの販売合戦でも見事逆転してみせたのです。

 

1969年のサファリーラリーで砂煙を上げながら疾走する510ブルーバード / © 著作権 2018 日産自動車株式会社

 

スピード感あふれる『スーパーソニックライン』510ブルーバード誕生!

 

3代目日産 ブルーバード4ドアセダン1600デラックス / © Nissan 2018

 

ピニンファリーナがデザインした尻下がりスタイルですっかり評価を落としてしまった2代目410型から約4年、1967年8月に発売された3代目510ブルーバードは、失点を取り返しBC戦争(ブルーバード・コロナ販売合戦)で再び勝利を目指す闘志に燃えていました。

今度こそ尻下がり、タレ下がりと言われないピンと張った直線基調の『スーパーソニックライン』による引き締まったデザインのボディは、ボクシーな四角いボディに突き抜けるスピード感を与えています。

そして、先代までのフロント:ダブルウィッシュボーン / リア:リーフリジッドという旧態依然としたサスペションも一新され、フロントはストラット、リアはセミトレーリングアームに前後コイルスプリングを組み合わせた四輪独立懸架に。

信頼性が向上していたE型やJ型といったOHVエンジンと決別し、新開発のL型直列4気筒シリーズのSOHCエンジンが搭載されました。

これは、旧式メカニズムに豪華装備のデラックス路線で良しとしていたライバルのコロナに対し、デザインでも技術面でも圧倒する内容で、先代410型で離れていったユーザーを呼び戻すには十分魅力的であり、BC戦争で再びコロナを打ち破る逆転劇を見せたのです。

さらには海外のユーザーからも特にヤング層には大人気で、初代S30型フェアレディZとともに、1960年代末から1970年代はじめにかけて運転の楽しさを覚えたユーザーにとっては、感慨深い1台となりました。

 

俊足の1600SSSと追加されたスポーティな2ドアクーペ

 

1969年のサファリラリーで510ブルーバードは総合優勝こそ逃したものの、翌年への手応えをつかんだ / © 著作権 2018 日産自動車株式会社

 

3代目510ブルーバードのエンジンラインナップは1.3リッター(L13)と、1.6リッター(L16)の2種類で、ボディタイプは2 / 4ドアセダンとバン / ワゴン、そして後にコロナ2ドアハードトップに対抗して追加された2ドアクーペの5種類。

そして、エンジンは後に廉価版が排気量アップされて1.4リッターのL14に変わり、さらにスポーツモデルには強力な1.8リッターL18が追加されています(1800SSS)。

ちなみに、このL型4気筒シリーズエンジンは、既にセドリックなどに搭載されていた6気筒シリーズに続いて登場したものであり、510ブルーバードではシングルキャブ仕様とSUツインキャブ仕様が搭載されて、後者を積んだ1600SSSが伝説的な活躍を見せました。

既に先代410型で登場していた1600SSSですが、この510型で『ラリーのブルにはSSSが欠かせない』とも言われる大きな存在感を示すようになり、後々までブルーバードはSSSの出来不出来がその評価を分けるほどになります。

そして従来から存在した2ドアセダンに加えて、コロナで人気のあった2ドアハートトップに対抗する2ドアクーペを設定。

これがまた『スーパーソニックライン』にはピッタリの組み合わせで、ブルーバードのスポーツ性を高めて華を添える役割を果たしたのです。

 

ついに初の総合優勝を達成!激闘サファリラリー!

 

1970年のサファリラリーで、初の総合優勝を果たした510ブルーバード / © 著作権 2018 日産自動車株式会社

 

先代410ブルーバード時代の1966年は、クラス優勝&総合5位の好成績を上げていましたが、510ブルーバードも当然のごとく『栄光の5,000km』サファリラリーに挑みます。

そして1968年の初参戦こそリタイアに終わったものの、1969年には石原裕次郎主演の映画『栄光の5,000km』を撮影しつつ、6台も完走してクラス優勝とチーム優勝を獲得。

手応えを得て今度こそと参戦した1970年、『山の上りは最低限の燃料で軽くして頂点付近で給油、今度は重くして下り、上りも下りも最速を狙う』などの作戦が図に当たり、見事に総合優勝・クラス優勝・チーム優勝の3冠を獲得するという、満点チャンプぶりを発揮しました。

しかし、サファリラリーでの510ブルーバードの出番はここで終了しますが、翌年もS30フェアレディZで2年連続の総合優勝を決めるなど、日産の第1次サファリ黄金期における、一方の立役者となったのです。

実は国際的な大舞台におけるブルーバードの活躍はこれが最後となりますが、後々までラリー仕様が作られ、『ラリーのブル』と呼ばれる活躍を見せたのは、この510ブルーバードでの活躍が決定打でした。

 

主なスペックと中古車相場

 

3代目日産 ブルーバード1600SSSクーペ /  © 著作権 2018 日産自動車株式会社

 

日産 KP510 ブルーバード1600SSSクーペ 1969年式

全長×全幅×全高(mm):4,120×1,560×1,395

ホイールベース(mm):2,420

車両重量(kg):935

エンジン仕様・型式:L16 水冷直列4気筒SOHC8バルブ SUツインキャブ

総排気量(cc):1,595

最高出力:74kw(100ps)/6,000rpm(グロス値)

最大トルク:132N・m(13.5kgm)/4,000rpm(同上)

トランスミッション:4MT

駆動方式:FR

中古車相場:99.8万~560万円

 

まとめ

 

1970年に念願のサファリラリー総合優勝を果たした、ゼッケン4番510ブルーバード / © 著作権 2018 日産自動車株式会社

 

何の予備知識も無く510ブルーバードを見ると、ボクシーなボディに丸目4灯ヘッドライトという姿からは、ノスタルジックカーというより『古い日産車』そのものという印象を受けます。

しかし、それが決して『古臭い』というイメージにまで至らないのは、余計な装飾も無く一本筋の通ったスマートとさえ言えるデザイン、そしてボディとキャビンのバランスや、前後オーバーハングにも間延び感の無い絶妙さが大きく物を言っているからかもしれません。

510ブルーバードは奇をてらったり目を引く装飾に頼らず、絶妙なバランスが織りなすデザインの素晴らしさでしたが、それだけに1971年8月の4代目(ブルーバードU)発売後、1972年12月までの併売期間に装飾を追加してバランスを崩し、末節を汚したのが少々残念なところです。

また、中古車市場でも3代目510ブルーバードの人気は高く、しっかりとレストアを受けた程度極上と思しき個体は軽く500万円以上のプレミア価格がついていますが、それだけの価値が有る歴史的意義の深い1台と言えるでしょう。

 

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