過去の名車復刻ブームの中生まれたフォードGT、しかしフォードGTだけは過去のスタイリングを再現するだけではなく、走行性能にまでこだわりを見せたのです。V8スーパーチャージャーからV6ツインターボへ。どんな歴史を辿っているのでしょうか?
事の始まりは復讐から
1960年代、フォードは企業イメージの向上の為、国際的なレース活動に打って出ようとしていました。
しかしノウハウがなく、手っ取り早くレースで勝利する為、とあるチームを買収する計画を立てたのです。
そのチームとは「スクーデリア・フェラーリ」。
F1だけではなくプロトタイプカーやスポーツカーでも最強を誇る、このチームを自陣に組み込むことによって、ヨーロッパでのフォードの知名度の向上を狙ったのでした。
しかし、いざ契約というという段階になって「レース活動について指図されたくない」とエンツォ・フェラーリ氏が翻意。
一転、契約白紙という事態に陥ります。
これに怒ったフォードはフェラーリに対抗するために、エンジンを供給していたイギリスのローラ・カーズと共にプロジェクトを開始。
そうして1964年に誕生したのがフォードGT、通称「GT40」だったのです。
一般的に「GT40」という名称で呼ばれることが多い同車ですが、実はこの名前は正式名称ではなく愛称で、プロトタイプの全高が40インチ(=1016mm)というあまりの低さからメディアによって名付けられ、フォードでは一度もこの呼び名を使ったことはありません。
また、デビュー当初は完走もままならない状態でしたが、1965年よりレースマネジメントをキャロル・シェルビー氏率いるシェルビー・アメリカンに依頼。
以降熟成を重ね、1966年のル・マンでは総合優勝を飾り「スポーツカーレースでフェラーリを叩き潰す」という目標を達成。
更に1969年まで、4回連続総合優勝を果たすという偉業を成し遂げたのでした。
幻のリメイク
1995年、デトロイトモーターショウに1台の車が出展されました。
その名も「フォードGT90」。
「90年代版フォードGT」というコンセプトを掲げ登場したこの車は、当時フォードグループの一員だったジャガーのスーパーカー、XJ220のコンポーネンツを流用し、そこへV型12気筒6リッターエンジンに4基のターボチャージャーを組み合わせ、最大出力720ps、最大トルク91.3kgmを発揮するユニットをミッドへ搭載。
外装はGT40をモチーフにしたディテールが与えられたものの、全体として新しい印象を与え、過去のフォードGTとは似ていないオリジナルなスタイリングとなっていました。
当時は市販が検討されましたが、世界的な景気後退期だった事により首脳陣の判断でお蔵入りすることになってしまったのでした。
40年目のリメイク
2003年、再びコンセプトカーとして登場したのがフォードGTでした。
世界的なリバイバルブームの中、かつてのGT40を完全再現したようなスタイリングが話題になり、フォード創立100周年記念車として2005年、ついに市販化されたのでした。
ちなみに当初「GT40」の名称を使おうとしていたのですが、商標権の問題がクリアできず、最終的には「フォードGT」という名称に落ち着いたのでした。
車体寸法はオリジナルのGT40より若干大きく、そのため車高も約44インチ(1125mm)と高くなってしまったものの全体のまとまりはよく、大きくなったことを感じさせないスタイリングを誇っていました。
パワーユニットはV型8気筒5.4リッターDOHCエンジンにスーパーチャージャーを組み合わせ558psを発揮。
それをミッドシップに縦置きマウントし、同じく縦置きトランスアクスルを組み合わせるという、レーシングカーでは比較的オーソドックスな手法が採られていました。
車両価格も13万9,995ドル(2005年1月平均値103.5円換算で約1450万円)からと、スーパーカーの中では比較的安価だったこともあり、世界中で大人気に。
当初、ロードカーのみの予定でしたが、素性の良さから世界各地のレースにも出場し、ヨーロッパではフォードのバックアップの下、スイスのmatech-conceptsがFIA-GT3ヨーロッパ選手権に出場させ、2007年度に1勝、2008年度には3勝を挙げるという活躍を見せました。
日本でもプライベーターのDHGレーシングがSUPER GTのGT300クラスに出場させていましたが、レギュレーション上の問題もあり大改造を受け、パイプフレーム化の上にノーマルのV8・5.4リッター+スーパーチャージャーユニットからDHGが開発したオリジナルのV8・3.5リッターエンジンに換装されていました。
2006年より参戦し、当初はトラブル続きだったものの第8戦オートポリスでは3位に入賞し、表彰台に上るという成績を残しました。
しかし、2007年度いっぱいでDHGがSUPER GTへの参加を取り止めたため、日本のサーキットから姿を消す事に。
一方、ロードカーはターボ仕様の「GT700」やツインターボ仕様の「GT1000」などのスペシャルバージョンをラインナップに加えながら、限定1500台を好評のうちに生産し、2006年に生産を終了しました。
三度の復活
フォードGTの生産終了から9年後の2015年、1台のコンセプトカーがデトロイトモーターショーに姿を現しました。
その名も再び「フォードGT」。
当初はマスタングをベースにしたル・マン仕様の開発を行っていたのですが、マスタングベースでは不利な点が多すぎる事から開発を凍結し、その開発メンバーが秘密裏にプロジェクトを進めていたのが新型フォードGTだったのです。
新たなフォードGTは過去のGT40やGTのエッセンスを取り入れながら、現代風のスタイリングで、パワーユニットもフォード自慢のエコブースト、V型6気筒3.5リッターエンジンにツインターボを組み合わせ647hp(約656ps)を発揮。
7速デュアルクラッチトランスミッションと組み合わされ、最高速度は347.6km/hに達するそうです。
フォードGT(2005年モデル)スペック
全長×全幅×全高(mm):4643×1953×1125
ホイルベース(mm):2710
エンジン:V型8気筒DOHCスーパーチャージャー
最大出力:558ps/6500rpm
最高トルク:69.13kgm/3750rpm
トランスミッション:6速マニュアルトランスミッション
駆動方式:MR
新車時価格:139,995ドル~(アメリカ本国)
中古車相場:不明
まとめ
ビジュアルの再現だけで中身は別物というモデルが多いリバイバルカーですが、ほぼそのまま再現されたフォードGTはある意味究極のリバイバルカーと言えるかもしれません。
そして新型と言われる2015年発表のフォードGTは更に現代の技術を投入され、更なるハイパフォーマンスカーとして生まれ変わろうとしています。
旧型をリスペクトしつつ新しい時代の車を造るというフォードのチャレンジを楽しみにしたいですね。
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