フェラーリのスーパーカーから、好きなものを1台選ぶとしたら、皆さんはどの車種を選びますか?最新モデル?往年の名車?V12?V8?色々なモデルが思い浮かぶと思います。その中でもテスタロッサのような、フェラーリには珍しく車名に数字も英文字も使われない車名は、たとえ車好きで無くとも頭に強く残っているのではないでしょうか。

 

フェラーリ テスタロッサ  / Photo by Mr.TinDC

 

 

スーパーカーブームの間隙に登場した名車

 

フェラーリ テスタロッサ  / Photo by Bobo Boom

 

1970年代末期の日本では、少年から大人たちまで巻き込むスーパーカーブームが到来していました。

展示イベントには多数の観客が列をなし、最終的にはスーパーカーレースまで行われるようになります。

しかし、今から思えば実際のブームはごく短期間であり、1980年代を迎える前に沈静化。

次のブームは、バブル時代を待たなければいけません。

いわゆる「スーパーカー少年」がカメラを構える対象としてはあまりにも遠い存在で、大人たちが所有するにも手が届かないスーパーカーは、単に非日常的な存在で、時々眺めるとしても毎回同じような顔ぶれでは次の対象へ興味が移るのも早かったのです。

その時期のフェラーリV12ミッドシップマシンとしては512BBシリーズが人気を博している時期で、もちろんイタリアのフェラーリはブームが去ったからといってスーパーカー開発の手を休めるわけもありません。

512BBの後継となる新たなスーパーカーは1984年、かつての名車250TRや500TRのエンジンのカムカバーが赤く塗られた事により、テスタロッサ(赤い頭)を名乗ったのに由来する「新テスタロッサ」が誕生しました。

 

車内スペースに配慮したGT的モデル

 

フェラーリ テスタロッサ  / Photo by domantasm.

 

テスタロッサは前作512BB同様、ボア・ストローク82mm×78mmの180度V型12気筒5リッターエンジン(※シリンダー配置は水平だが、水平対向エンジンではない)をリアミッドシップに搭載した2シーター・2ドアクーペです。

リトラクタブルライトの採用など前作のイメージを受け継いだ部分もありますが、ボディ後部サイドには多数のスリットを持つラジエターインテークを採用するなど、後のF355あたりまでのミッドシップフェラーリの特徴となるデザインが採用されています。

下層にミッションを配置し上部にエンジンを持つ2階建てゆえに、見た目とは裏腹に重心が高い構造となっています。

また、キャビンスペースを確保のため、エンジンの搭載位置はリアアクスル前方というよりリアアクスル直上と行った方が正しく、ほぼRR(リアエンジン・後輪駆動)に近い配置です。

その頃強化された各国の安全基準に従った形での重量増加はあったものの、全体的にミッドシップ車としてはリア寄りの重量配分になったということは、庶民的な感覚で言えば後の軽ミッドシップスポーツ、マツダAZ-1を思い起こさせます。

ただし、2m近い全幅による重厚感はもちろん軽スポーツなどとは比較対象にならない安定性を誇り、走りはむしろスポーツカーというよりGTカー的なものだったそうです。

国や地域によって異なる排ガス規制の影響で、380~390馬力を発揮するエンジンはパワフルでしたが、かつてカウンタックと争ったように、実際に出るわけでは無い「公称速度300km/h」には、必ずしもこだわらなくなりました。

全体的なイメージとしては、ミッドシップスポーツクーペとはいえ、振り回して走る類のものではなく、ラグジュアリーで豪華なミッドシップクーペと考えた方が良いでしょう。

フェラーリのロードカーとは、元々レーシングカーのロードバージョンを売ってみたら「狭いの、暑いの」とアレコレ言われた結果としてラグジュアリー方向にキャラクターを振られていったという歴史があるので、その正統な進化系とも言えます。

 

レースに出るテスタロッサはゲームの中くらい?

 

セガ・アウトランのゲーム画面中に登場するテスタロッサ。BGM演奏会らしい。  / Photo by włodi

 

レース直系のイメージが強いフェラーリではありますが、この頃のV12マシンはレースで使われていません。

動画サイトをチェックしていると、自動車関連メディアなどの企画モノでカウンタックやNSX(初代)と対決するシーンが見られますが、最高速やゼロヨンなど「高速周回路や加速限定」ではパワー(というより排気量の余裕)とトラクションでソコソコの実力を発揮していました。

しかしコーナリング性能となると思ったように曲がらないのは致し方ないところで、やはり高速道路を優雅にクルージングするか、停車している姿を見て楽しむのが正解。

それでもレースを楽しみたいなら、ゲームの世界ではないでしょうか。

テスタロッサがデビューした2年後に登場したアーケード版レースゲーム、「アウトラン」(セガ)では、現在のレースゲームのように愛車を選べませんでしたが、その同時期に作られたワンオフのテスタロッサ・スパイダーモデルと良く似たマシンで走る事ができました。

「アウトラン」はその後セガ・マークIIIをはじめコンシューマー(家庭用ゲーム機)用ソフトとしても移植されたので、遊んだことのある読者も多いかもしれません。

 

主要スペックと中古車相場

 

フェラーリ・テスタロッサ  / Photo by Alexandre Prévot

 

フェラーリ テスタロッサ 1984年式

全長×全幅×全高(mm):4,485×1,976×1,130

ホイールベース(mm):2,550

車両重量(kg):1,506

エンジン仕様・型式:F113A 水冷180度V型12気筒DOHC48バルブ

総排気量(cc):4,943cc

最高出力:390ps/6,300rpm

最大トルク:50.0kgm/4,500rpm

トランスミッション:5MT

駆動方式:MR

中古車相場:1,280~1,758万円

 

まとめ

 

フェラーリ テスタロッサ  / Photo by domantasm.

 

テスタロッサは1991年に次代の512TRにモデルチェンジ、テスタロッサの略である「TR」を車名に残したものの、また味気ない数字と英文字の組み合わせに戻りました。

その次のF512M(1994年登場)に至ってはTRとすら名乗らなくなりましたが、512TRまで続いたリトラクタブルライトが固定式になったり外観の細かいところは変わったものの、基本レイアウトやキャラクターは踏襲しています。

そのためF512Mくらいまでは、あるいは車に全く詳しくない人ならその前の512BBでも全部ひっくるめて「テスタロッサ」と呼ぶかもしれません。

ただ、かつてのスーパーカー少年世代や、その後もフェラーリなどを追いかけたファンからすれば「テスタロッサ」のネームバリューは、数字と英文字だけの素っ気無さから無縁なこともあり、今でもフェラーリの象徴のひとつとして、憧れている人も多いと思います。

 

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