ルノー日産連合入りした現在の三菱自動車からは想像もつきませんが、かつて三菱の3ナンバーFFサルーンが大ヒットを記録した時代がありました。税制改革で3ナンバー車の自動車税が安くなり、誰もが普通に乗れてしかも時代はバブル景気!という最高のタイミングで登場した初代ディアマンテは、まさに『時代に愛された車』だったのです。

 

初代三菱 ディアマンテ(画像はオーストラリア版『マグナ(2代目)』)  / Photo by Matthew Paul Argall

これ以上無いほどのタイミングで現れ、時代にマッチしていた初代ディアマンテ

 

初代三菱 ディアマンテ 出典:https://www.mitsubishi-motors.com/jp/innovation/history/year/1990/90_2.html

 

1980年代後半、バブル経済の絶頂期に向かう好景気の中で、当時の三菱はミドルクラス以上の乗用車ラインナップの刷新と拡充を図りました。

そして、フラッグシップのデボネアは韓国のヒュンダイというパートナーを得て2代目『デボネアV』へとモデルチェンジ(1986年)。

3代目移行後『ギャランΣ(シグマ)』とサブネームを得て、5代目ではミドルクラスからアッパーミドルクラスを担当していたギャランは、1987年のフルモデルチェンジでセダンがミドルクラスの6代目ギャランとして独立(タクシー用などに5代目セダンは一部継続生産)。

5代目ギャランΣの4ドアハードトップはアッパーミドルクラスサルーンとして継続生産され、1989年5月にはデボネアVと同じ3リッターV6SOHCエンジンが搭載されました。

【ディアマンテ登場前夜の三菱サルーン・ラインナップ】

・フラッグシップ:デボネアV

(3リッターV6DOHC / SOHC、2リッターV6SOHC)

・アッパーミドルクラス:ギャランΣ

(3リッターV6SOHC、2リッターV6SOHC、同直4SOHCターボ、1.8リッター直4SOHC)

・ミドルクラス:ギャラン

(2リッター直4DOHCターボ / 同NA、1.8リッター直4DOHC / 同SOHC、1.6リッター直4SOHC、1.8リッター直4SOHCディーゼルターボ)

ここで肝心なのは1989年4月の税制改正によって、それまで3リッターまで81,500円、3リッター超6リッター以下88,500円、6リッター超148,500円と非常に高額だった3ナンバー車の自動車税が、単純に排気量に応じたものに変更されたことです。

それ以前に開発・発売された車には、三菱のデボネアVはもちろん、トヨタのクラウンであれ日産のセドリック / グロリアであれ、排気量2リッター以下のグレードには5ナンバーサイズに収まるボディが必要でした。

そのため、中にはクラウン(8代目S130系)のように先行してワイドボディをラインナップしている車もありましたが、大抵は5ナンバーボディのフェンダーやバンパーを拡大してお茶を濁すのが通常となっていたのです。

それが大手を振って「3ナンバー車でも排気量で税金が安い車はそのまま安い!」という時代に突入した上にバブル景気ど真ん中で、ちょっとくらいなら排気量と税金が上がっても問題無し!という3ナンバー車には猛烈な追い風が吹く事に。

そこにタイミングよくギャランΣのモデルチェンジが到来し、1990年5月に発売されたのが、3ナンバー専用でスポーティなボディに当時のハイテク装備満載という初代三菱 ディアマンテでした。

 

デカイ、カッコイイ、ハイテク、広い、安い!が当時は超個性的だった

 

初代三菱 ディアマンテ / 出典:https://www.mitsubishi-motors.com/jp/innovation/history/year/1990/90_2.html

 

発売されたディアマンテは全長4700mm超、全幅1,775mmと、コンパクトカーすら全幅1,800mmを超える現在から見れば控えめですが、当時としてはかなり大柄な車でした。

その上、どうしても5ナンバーサイズを意識しないといけない時代と異なり、新時代の3ナンバー専用ボディは流行の4ドアハードトップも相まり、ロー&ワイドのルックスを可能とした上に、フロントマスク上部を突き出す逆スラントノーズが迫力とスポーティさに拍車をかける事に。

また、ワイドボディによる車内の広さはFFにとって恩恵が大きく、フルラウンドコクピットに人体重心支持の豪華シートは、ドライバーに合わせシートやステアリングなど様々なポジションを自動調整してくれるMICS(三菱インテリジェントコクピットシステム)を採用。

そして当時の大型高級車としては珍しく4WDが設定され、4WDには『アクティブ・フォー・システム』、2WD(FF)車には『アクティブ・ツー・システム』を名乗る豪華装備装着車が設定されました。

【アクティブ・フォー・システム】

・ビスカスカップリング付きセンターデフ式フルタイム4WD

・4WS(4輪操舵)

・4ABS(4輪ABS ※当時は4輪に作動しないABSが割と普通だった)

・4IS(4輪独立懸架)

【アクティブ・ツー・システム】

・TCL(トラクションコントロールシステム)

・アクティブECS(電子制御ダンパー+エアサス)

・4WS

・4ABS

・4IS

エンジンは全車V6で、廉価版の2リッターSOHCを除けば3リッター、2.5リッターともにDOHC4バルブであり、一部廉価グレードを除き4速ATが搭載されています。

ちなみに、量販グレードは発売当時約220~280万で購入できる2.5リッター車で、3リッター車はさすがに300万円以上しましたが、それでも当時の大型高級3ナンバーサルーンとしてはかなりの安価でした。

さらに、「エンジンはともかく3ナンバー車がイイ!」というユーザー向けには何と199.8万円から2リッター車が購入可能で、物価が違うとはいえ現在の軽自動車より安価に3ナンバー大型サルーンが買えたので、いかに安かったか分かると思います。

 

初代ディアマンテのセダン版、三菱 シグマ / 出典:https://www.mitsubishi-motors.com/jp/innovation/history/year/1990/90_2.html

 

なお、初代ディアマンテには準兄弟車として、メカニズム的にはディアマンテとほぼ共通なものの少し車高が高く、フロントグリルなどフロントマスクが若干異なり、ドアにサッシュ(窓枠)がある4ドアセダン版『シグマ』も存在しました。

こちらは先代にあたる5代目ギャランΣに残っていた4ドアセダン後継車という位置づけでしたが、当時は4ドアハードトップが流行な上によほど詳しく注意深い人でも無ければディアマンテとの見分けがつかないため知名度が非常に低く、存在自体知らない人も多いかもしれません。

そのため、そうした車にありがちなパトカー用途に使われたシグマは多く、みなさんが「初代ディアマンテのパトカーがいる」と思っていたのが本当はシグマだった、という例は結構あるかもしれません(筆者の近所の交番に配備されてから5年くらい、シグマと気づきませんでした)。

 

主なスペックと中古車相場

 

初代三菱 ディアマンテ / 出典:https://www.mitsubishi-motors.com/jp/innovation/history/year/1990/90_2.html

三菱 F15A ディアマンテ 25V-SE 1990年式

全長×全幅×全高(mm):4,740×1,775×1,410

ホイールベース(mm):2,720

車両重量(kg):1,530

エンジン仕様・型式:6G73 水冷V型6気筒DOHC24バルブ

総排気量(cc):2,497

最高出力:129kw(175ps)/6,000rpm

最大トルク:222N・m(22.6kgm)/4,500rpm

トランスミッション:4AT

駆動方式:FF

中古車相場:58万~59.8万円(ハードトップのみ。ワゴン皆無)

 

まとめ

 

初代三菱 ディアマンテワゴン(画像はオーストラリア版『マグナワゴン(2代目)』)  / Photo by FotoSleuth

 

初代ディアマンテは1990年5月から1995年1月まで販売されましたが、途中1993年3月にマグナワゴンの後継としてディアマンテワゴンがオーストラリアから輸入され販売を開始します。

そして4ドアハードトップのディアマンテがモデルチェンジ後も継続販売され、遅れて1997年10月にモデルチェンジされるまで、2代目ハードトップと初代ワゴンが並行して販売されました。

また、準兄弟車のシグマも1995年8月まで販売され、パトカー仕様は翌1996年まで生産されたと言われています。

『大ヒットした3ナンバー高級サルーン』という一大ブームの立役者となった初代ディアマンテでしたが、同種の車が各社から出揃うと当たり前の車となってしまい、かつてのように個性的な車とまでは言えなくなってしまいました。

さらにSUVやミニバンブームの中で4ドアハードトップのみならず4ドアサルーン全体の地位が没落していくと、保守層が好むFRセダンでは無かったこともあり、いつしか忘れられた存在になっていきます。

しかし、時代の急激な変化があったからこそ、絶妙なタイミングで登場した初代ディアマンテのヒットは際立っていました。

まさに初代ディアマンテこそは、時々現れる『時代に愛された車』の代表格にふさわしい1台だったと言えるのです。

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